* 手 *
「それじゃあ廊下に整列してください」
これから集会があるということで、先生の声が掛かった。
みんな、やる気なさげにぞろぞろと廊下へ出て行く。
その前に…ちょっと私はロッカーに物を入れる用事があるのだけれど。
前の教科の道具を持って、私は廊下に飛び出した。
しかし…荷物をしまおうと思ったら、既に男子がロッカー側に並んでいて。
「あ、ちょっと開けてー」
半ば無理矢理に列を掻き分け、ロッカーを開いた。
教科書類を放り入れ、ドアを閉めた。
そして、鍵を閉めようとしたとき…?
「…ちょっと」
「ん?」
「閉めさせてよ!」
なんと、列に並んでいたうちの男子の一人が邪魔してきたのだった。
鍵を差し込む部分を捻り、閉じられないようにしている。
その男子というのは、忍足君。
「ちょっと、何するのさ!」
「そこ、女子は教室側に並ぶ」
「待ってくださいー!! ほら、手離してよ!」
強く言うと、やっと忍足君は手を離してくれた。
急いで鍵を閉じる。
先生が睨んできてるのが分かったから、少々焦り気味に。
そうしたら…。
「ホンマに、お前はおもろいな」
「っ!!バカにしてんの!?」
忍足君は、私の頭をポンポンと叩いた。
なにさ…私がチビだからって舐めてるの!?
でも…。
なんか、頭の上に乗せられた手に、ドキドキしちゃった。
なんてね。
そんなこと、悔しくて絶対本人には言えないけれど。
思いながら、私は急いで列に並んだ。
おチビは舐められてるのだろうか。
2003/04/02