* 恋愛ゲーム *












作戦は、一日前から計画されていて。

出来事は、四月の初めの日に実行される。


それは楽しい、凄くエキサイティングで、

ちょっぴりドキドキする、ゲーム。



「なあ、今日の宿題やってきたかい?」

「当ったり前でしょ!」

「ちょっと見せてくれないか、一箇所分からないことがあって」

「いいよ〜」


予想外に早く来襲したチャンスに、

準備がまだの私の心は、ドキンと高鳴った。


でも、これは確かにチャンス。

これを逃したら、絶対次はない…!


そう思いながら、隣で一生懸命自分と私のノートを見比べてる愛しい人を見た。

パラリとページを捲った瞬間、今だ!と言わんばかりに声を掛けた。


「ねえねえ」

「ん?」




 「私、大石のことが好き」






沈黙は、優に5秒はあったと思う。

相手の困った顔。

何か言おうとして戸惑ってる唇。


このゲームは、私の勝利。


「…なんちゃって」

「え、……あ!」


私は、とある文字を書いた左手を目の前に掲げた。

そこに書いてあった文字は、



 “April Fool!”



「引っ掛かった引っ掛かった!」

「参ったなこりゃ…」


横で苦笑する貴方。

でも、本当は本当に本当だよ、なんて。


貴方のことが好きだって言うのが嘘だって言うのが、ウソなんだよ。


そんなこと考えてる自分に、私もまた苦笑してしまった。


あーあ、悪戯程度に何こんなどきどきしてるんだ自分ー!

と思ったけど、自分の気持ちは正直で。

でもまあ、私の勝ちだよね?


「…ありがと。助かったよ」

「はいはい」


ノートを持って立ち上がる貴方を見ながら、

ゲームの勝利に心の中でガッツポーズ。その時。


「…さっきのさ」

「え?」




 「本当だったら、嬉しかったんだけどな」





貴方の笑顔に、私は優に5秒は固まった。


ちょっと…待って。

え、もしかして、本当の本当にそういう展開!

ちょっと、え、うわ、どうしよ!!


戸惑っていると、貴方は顔を突き出して。


「…エイプリルフール」

「え?あ……あぁっ!!やられたー!!」


悔しくって、自分の頭を抱え込む。

そうか。そうだよね。そうだったのか…。


悔しいやら虚しいやらの気持ちに包まれる。

離れた場所でクラスメイトと話を始める貴方に、

こっそり愛しい視線を投げかけながら、苦笑した。



 このゲーム、どうやら貴方の勝ちみたい…。



どうなるか分からないから、楽しい。

この、“恋愛”っていうゲームは。


そう思いながら、本当の気持ちはなんなんだろう、って疑問を持って。


次のゲームは、本気の試合。

絶対に、勝ってやるぞって決めた。























誰もが一度はやるであろう悪戯。


2003/04/01