* サヨナラ。 *












『またね』
「またね」

桜の蕾が開くときを待っている、そんな卒業式。
君にそういわれたとき、
貴方との最後の挨拶は、それだった。
返事に詰まった自分がいた。

次はいつ会えるのか、分からないけど。
きっと君のことだから、軽い気持ちでそう言ったのだろう。
また会えるのかすら、分からないけど。
いつもの癖で、在りもしない明日へ向けて言ったのだろう。

でも、私は笑ってそう言った。
それとも、別れを意識しすぎているのは
最後の思い出は、笑顔にしたいから。
俺のほうだけなのだろうか。
貴方の中の私には、いつも笑顔でいてほしいから。

曇り気のない笑顔。
私の言葉に対し、貴方は苦笑して。
屈託のないその顔に、
それでも、口の端を上げて
正面から答えられない自分。
「またな」と言ったね。
哀しい以上に悔しくて、苦笑いしか出来なかった。

分かってるよ。
それなのに、自分の口から出た言葉が
別れはいつかくるものだって。
「またな」だったのは、
分かってるよ。
何故なのだろうか。
別れはとても辛いことだって。

君との最後の思い出を
それでも私は笑った。
笑顔で閉めることが出来たことには
溢れてくる何かは
感謝しているけれど。
ただの感情の高ぶり故だと誤魔化して。

君と過ごした日々は最高のものだった。
本当は、分かってるけど。
思い起こせば、楽しみばかりが浮かぶ。

だけど…ね?
一度背を向けたのに、
私は最後の最後まで。
また振り返りたくなってしまうのは、
貴方が背中を見せるまで。
この大きな愛しさ故なのだろうか。
表に出しはしなかった。

次があると信じて、今日は別れ。
貴方の姿が見えなくなって。
さようなら。また会おうな。
口と目から、同時に全てが零れた。


 ア リ ガ ト ウ 。
 サ ヨ ナ ラ 。























想い合っていることは、気付かないまま。
(反転で桔平さんサイド)


2003/03/30