* カレンダー *
「ね、将史」
「なに?」
「カレンダー、見た?」
訊くと、何故か不思議そうな顔をした。
微妙に驚いたような表情で、固まった。
「…なんで?」
「まさか、忘れてたなんてことないでしょうね」
――タンジョウビ。
言ってにこりと微笑むと、
将史はパチリと瞬きをした。
「その顔は、さては忘れてたなー?」
「…違ぇよ。自分の生まれた日ぐらい覚えてるよ」
「あ、そう」
じゃあ、その顔はなんだ、と思っていると…。
「お前が、覚えててくれるとは思わなかったから…」
斜めに背けられた顔。
将史の照れたときのクセ。
背けられた顔は、私に頬を向けている。
妙に心が飛び上がりたがって。
その頬に、軽く唇を当てた。
「なっ!?」
「誕生日プレゼント」
「お前な…」
そういえば私からは初めてだったな、なんて。
随分気張ったプレゼントだこと。
「私だって、ちゃんと恋人の誕生日ぐらいは覚えてますよぅーだ!」
「……そうかよ」
頬に手を当てた将史。
指の合間から覗く肌は、少し赤らんで見えた。
「…で、私の誕生日は勿論覚えてるよね?」
「………」
「…なんで無言なの」
誕生日。
それはお互いの大切な日だから。
しっかりと思い出に刻もう。
カレンダーには
その特別な日を
記念日として 刻もう。
荒井先輩だいしゅき。ハッピーバースデー。
2003/03/29