* お気楽極楽食い道楽 *












「あー、今年も疲れたね」
「ほんと」
「といっても、これからもまた来るのかなぁ…」
「さあ」

不二と菊丸は、学校の裏の穴場へ来ている。
そこはとても眺めがいいものの、
何故か人にはあまり知られていない。
昔菊丸が学校中を探検しているときに偶然見つけた場所なのだ。

朝から…二人は大変な目に合っていた。
登校するために家からでると、待ち伏せしていた人が居るわ。
歩いている最中も何人もにチョコを渡されるわ。
朝練の最中もキャーキャー叫び声がして集中できやしない。
靴箱を開けてみれば…雪崩。
(不二に至っては靴箱を空ける前に下に紙袋を構えていた。
 菊丸は袋は持っていたもののそこまで機転は回らなかったらしい)
机の中にも呼び出しの手紙や直接プレゼントが詰められていて、
休み時間ごとに屋上や体育館裏を駆けずり回る羽目になった。
人に好かれて悪い気はしないものの、
さすがにここまで来ると…疲労感まで感じてしまうものだった。

「今教室帰ったら絶対数人待ち伏せしてるよね」
「ギリギリまで残ってようか?」
「そうしよそうしよ!いざとなったら午後サボっちゃえ!」
「こーらっ」

二人は、そうして笑い合った。
そのときだけが、心から安心できる瞬間。


「…で、毎年恒例のアレ、持ってきた?」
「もっちろん!」

菊丸は、ごそごそとポケットを漁った。
中から飛び出したのは、チョコレート菓子。

「ジャジャーン!冬季限定チョコだよん」
「僕は…由美子姉さんが作ったチョコレートケーキ」
「わ、不二のは豪華!」
「僕は何もして無いんだけどね」

そう笑い合って、お互い持っていたものを交換した。
そう、毎年恒例というのは、
どうやら相手にチョコか何らかのお菓子を持ってきて交換する、というものらしい。

「美味しいーv …あ〜あ、このプレゼントが一番気楽でいいにゃ!」
「同感」

早速渡されたものを食べながら、二人は笑った。
サラサラと心地好い風が吹いた。

「あ、でもさ」
「ん?」

菊丸は笑顔で言った。


「他のやつに負けないぐらい気持ちは篭ってるけどね!」
「…僕もだよ」


二人は笑顔を合わせた。

とても気楽で、何も凝ったことはしていないけれど。
それだけでも嬉しくて、それぐらいが丁度良くて。

そして気持ちは篭っているのだから。


「また来年もやろうね」
「もちろん」

チャイムが鳴るまで、後どれくらいあるのだろう…。
もっと、長く居たいな、と思ってしまうのだった。


「あ、そうだ英二」
「なに?」
「まだあの言葉、言って無いじゃん?」
「あ、そういえばそうだね!」


そういうと、二人は向かい合って、微笑んで。

そして同時に、言った。




  "Happy valentine..."






















不二菊かな。とりあえずメイツ。友達≦なレベル。
この設定だと去年から仲良いみたいですね。
私にしてみれば珍しいです。(3年で初めて同じクラスになったの推奨派)
お気軽にスナック菓子でも渡してる菊ちゃんが浮かんで書いてみたくなった。

ほのぼのがいいですね、36は。


2003/2/13