* お互いのナンバーワン *












「宍戸さん!」
「ん、どうした長太郎」
「いや別に…どうって訳じゃないんですけど…」

部活が終わったあと、鳳は嬉しそうに宍戸に駆け寄った。
本当は…言いたいことが、
いざ訊かれると尻込んでしまうのだった。

「…ま、いいや。今日一緒に帰ろうぜ!」
「あ、はい!」

とりあえず一緒に居る時間が出来て、とても嬉しいのであった。





   **





帰り道、何気なく話はバレンタインのチョコレートの話になっていた。
鳳は微妙にどきどきしながら、宍戸の話に相槌を売っていた。

「跡部のやつチョコ何個貰ったと思う?
 さっき樺地がダンボール抱えてたぞ。あれは相当マズイな」
「そうですね…確かに凄そうですよね」

そんな他愛も無い話をして、歩いた。
その空間は心地好いものだった。
しかし…鳳は一つ気になっていることがあった。

「その…宍戸さんは、チョコ貰いました?」
「ん?いや、貰ってねぇ」
「え、そうなんですか!?絶対貰ってると思ったのに…」
「なんつーか…全部断った」
「!?」

宍戸の大胆な発言に、鳳は度肝を抜かれた。
ダンボール一箱分ものチョコを貰うような人もいれば、
一つ残らず断ってしまうものもいるのだ。
地面を見つめながら歩いて、驚いた口調で話した。

「大胆ですね…全部断るなんて」
「だって、応えられもしねぇのに受け取るのもな…って思ってよ」
「そうですか…」
「…それから」
「え?」

続きそうな宍戸の話に、鳳は顔を上げて耳を傾けた。
すると、宍戸はこう言った。

 『一人のしか貰わねぇって決めてるんだよ』

「……え?」

鳳は驚いた。
宍戸に、そんな人が居たのか…と。
なんだか、少し切なくなった、そのとき。

「…ほら」
「え?」

宍戸は、突然片手を差し出すのだった。
指を折り曲げして、何かを求めているような手付きをした。
そして、言う。

「お前、俺に渡すものねぇのかよ」
「……あ」

鳳は、鞄の中から一つの包みを取り出した。

「こ、これですか…?」
「…上等じゃねぇの」

宍戸は嬉しそうな顔をした。
そう、実は鳳は宍戸にプレゼントを渡したかったのだが、
渡す勇気を出せずに居たのは。

「やっぱりくれると思ってたぜ」
「え?…ってことは宍戸さん、もしかして、一人のしか貰わない相手って!?」

鳳が驚いた表情をしているところに、宍戸は微笑んで言った。


「お前に決まってるだろが!」
「!」
 

鳳は、とてつもなく驚いた。
そして、嬉しかった。
まさか、自分が一番想っている人に、
自分が一番想っていてもらえていたなんて。
 
「宍戸さん…」
「あ、なんだ?」
「…なんでもないですっ」
「なんだよそれ」


そうして、二人は夕日の中、
オレンジの世界の中を、楽しげに歩んでいくのだった…。






















宍鳳ほのぼの。
この二人…やっぱりいいなぁv好きだ。

バレンタイン企画にもれてしまったけど
最終的にメールに書いてしまったよSSパート2。
しかも、よっぽどこっちのほうが企画のSSより長そう…。(禁句)

とりあえず、ハッピーバレンタイン!


2003/02/14