「ね、今日手塚の家行ってもいい?」
「ああ、いいぞ」
「……」

ほらね。
手塚は、いつも無表情だ。
僕がどんな表情をしても、返事はいつも同じ調子。

一応付き合ってるのに。
“好き”とか全然言ってくれないし。
そりゃ、いつでも優しいんだけど…。

もっと、形にしてほしいって言うか。

これって、高望みかなぁ…?











  * precious heart *












約束したとおり、僕は手塚の家に来た。
ご家族の方は誰も居ないみたい。
手塚の家に来たのは何度目だろう?
とか考えながら靴を揃えた。
誰も居なかったことは、初めてだけれど。

手塚の部屋に入ると、相変わらず綺麗に整理されていた。
どこも散らかっていない。
毎度のことだけど、手塚らしいなあ、と少し笑ってしまう。

「適当に座っててくれ。何か飲み物でもいるか?」
「うーん、じゃ、麦茶貰おうかな」
「分かった」


手塚は、そう言い残すと部屋を出て行った。
僕一人になって、少しシーンとする。



ところで、僕達。
付き合い始めてもう何ヶ月も経つけど、
キスすらしたことが無い。
手を繋ぐのも僕が誘ってやっと。
でも周りに人が居る時だと繋いでくれないし。
うーん…。

別に、愛されてるか不安になるって訳じゃないけど。
でも、やっぱりもっと愛を欲しいと願ってしまう。


「お待たせ」
「あ、ありがと」
「……」

二人、静かにコップに入った麦茶を飲んだ。
喉の奥が潤される。
ちらりと、手塚の横顔を見た。

…手塚。


「ね、手塚」
「…なんだ?」
「僕のこと、スキ?」
「――」

手塚はコップをコトンと下ろすと、
眼鏡を吊り上げた。

「何を言い出すんだ、突然」
「好きなのかって訊いてるの!」

思わず、大声になってしまう。
僕は、手塚に少しにじり寄った。


確かめたい。
自分の勝手な自己満足だけじゃなくて。
手塚から、本当に僕のこと好きだって言う気持ち、受け取りたい。

思えば、僕達の始まりだって曖昧だった。
僕が手塚に好きだって伝えて、
手塚は、何も言わず戸惑った表情で暫く固まっていた。
付き合ってくれる、って訊いて、
漸く、固そうにゆっくりと上下に首を振った。

今考えれば、あれも場の雰囲気に圧されただけかもしれない。
いや、手塚の気持ちを疑ってるわけじゃないけど。
でも…やっぱり不安だよ!


「手塚、どう思ってるの…!」
「…不二、俺は、お前のことを余り傷付けたくなくて…」
「なんで傷付くの!?好きって言ってもらえない方が辛いよ!」

僕がそう叫んだ。
だって、手塚の言ったことの意味が分からなかったから。
手塚は相変わらず固い表情のままだった。

暫く睨んでいた。
別に睨みたかったわけじゃないけど、
涙が滲んできて自然とそうなってしまった。

時計の音だけが聞こえた。
そうした時が過ぎて行き…。

手塚が漸く動いた。それは――。


「―――」



唇同士が合わさる。
つまり、キスだった。

一瞬、事態が把握できなかった。
僕の目の前には、手塚の顔があって。
なんだか瞼が伏せられてて。
吐息が感じられるほど近くて。
そして…唇同士が触れ合っていて。

僕は驚きのあまり、大きく目を見開いたまま固まっていた。
数秒後、口を離されてから、意識が戻った。


「……手塚、今…!」

咄嗟に、自分の唇に触れた。
顔が赤いのが分かった。
戸惑っている僕に、手塚は言った。

「…上手く言葉では表せないが」
「……」
「俺は、誰よりもお前が…大切で…好き、なのだと思う」
「て、づか…っ」

いつの間にか、僕の目からは涙が零れていた。
悲しいわけじゃない。
痛いわけじゃない。
嬉しさで、涙が出た…。
こんなの、いつ以来だろう……。

「俺は…あまり想いを口に出すのは得意ではない」
「…うん」
「……ごめんな」
「ううん、大丈夫…」

手塚にぎゅっと抱き締められた。
全身に、温かさを感じる。

「言葉で確かめられないから、お前に対する行動に
 …引け目を感じてしまったのかもしれない」
「大丈夫…手塚、僕平気だから…。
 手塚だったら、どんなことも受け止められる…」
「本当にか?」

手塚は、一瞬目を合わせたかと思うと、
僕の制服の一番上のボタンを外し、
開けた胸元に唇と当ててきた。

「…ぁっ……」
「こんな、ことを…してしまっても、か…?」
「手塚だったら…何されても、いい…」
「……不二っ!」
「あっつ!てづ、かぁ…!」

手塚は、僕の服を全て取り去ってきた。
全身に唇を当ててきた。
甘い愛撫に、酔ってしまいそうになる。


「お前は…キレイだ」
「手塚…」
「汚してしまうのに、気が引ける」
「そんなこと言わないで…僕が、手塚の物だって言う印を付けて…っ」

僕が言い終わるのとどっちが早いか、
手塚は僕の肌に強く吸い付いてきた。
紅い花が咲く。
なんともいえない感触に、身を捩る。


手塚の指が、唇が。
全てが全身を這う。
それはいつしか下半身に行き届いて、
また変わらぬ愛撫を続けてくる。

「……感じているのか」
「僕だって、男だよ?」

少し恥ずかしくなって、僕は身を捩りながら言った。
ここまで来て、恥ずかしいというのも無いけれど。
でも、やっぱり感じる羞恥心。


「…鳴き方は、女みたいだけどな」
「手塚、なにそれ……ひゃぁぅ!」
「…だろう?」
「あぁ、あ、やああっ!」

否定の言葉を出そうにも、体がそれに付いていかない。
といっても、否定できないような声を、僕は出していたのだけど。


突然後ろに差し込まれた指の感触。
体験したことのない感情。
痛い。
でも、それだけじゃない。
いや、痛くないのかもしれない。
それも分からない。

「ああ、はぁ…てづ、かぁ…あっ、ん!」
「……」

手塚は、相変わらず無言で事を続けていた。
僕は、どうしようもなく。
されるがままに、身を捩るだけだった。

「もう、大丈夫だからっ、手塚が…欲しい…!」

そういうと、手塚はやはり無言で、指を抜いた。
背中に電気が走るような感触。
次は…何か熱い物が当てられた感触。
少し、体重が掛けられる。

「…ぅぐっ…」
「不二、挿れるぞ」
「うん、早く…きて…ぇっ!」
「あまり、無理はするなよ…」

そういって、一気に、何かが差し込まれてきた。
引き裂かれるような痛み。

「あ、あああああっ!」
「…不二、大丈夫か…っ」
「手塚…あ、だいじょ、ぶ…へいき、平気だから…っ!!」

そうはいっても、僕の頭の中は痛みで一杯。
歯を食い縛って耐えた。
痛いって何度も言いそうになったけど、
手塚を心配させたくなくて言わなかった。
何より、繋がることが出来た幸せ、手放したくなかったから。

「手塚…ぁん、やっ…ああっ!」
「不二…」

動きを繰り返すうちに、
慣れてきたのか、はたまた麻痺してきたのか。
痛みは、次第に薄れてきた。


「ああっ!手塚!手塚ぁ!」


声を出していないと狂いそうになる。

いや、狂いそうだから声が出るの?


それも分からないほど、狂ってる。



「はぁ…ダメっ、狂いそうっ…!」
「じゃあ、狂えばいいだろう」
「そんなこと、言ったって…やあああっ!!」


激しく抜き差しされるソコ。
その度に、意識が飛びそうになる。
痛いんじゃない。
いつの間にか、気持ち良くなっていた。
思考が働かなくなるほどの、快感。

必死に手塚の顔を見続けようとした。
それだけが、僕の意識を繋ぎ止めてくれるものだったから。
でも…与えられる刺激に、自然と目は強く瞑ってしまう。
開いたとしても、涙で霞んで何も見えない。


「手塚…そこに、居るの…?」
「ああ、ずっと居るぞ…不二」
「行かないで…どこにも…っ!」
「…お前をおいては、行かない……」
「んんっ…!」

奥まで差し込まれる。
妙な感触。
でも…気持ちイイ。

「てづか…手塚…」
「…どうした」
「ダイスキ…」

僕は、そう言って手塚の顔に手を伸ばした。
手塚は一瞬動きを止める。

そっと目を開いた。
手塚は、いつもとは違う眼鏡を外した姿。
頬に、手を当てた。


「手塚…僕の顔、見えてる?」
「見えてるぞ…」
「僕も、見えた…」
「不二…!」
「あっ、やぁっ!はっ、あぁん!!」

動きが再開する。

熱い感触。
乱れる身体。
壊れる思考。

頭の中には、たった一つのことだけ。


「あっ、あっ!手塚…大好きだよっ!」
「…俺もだ…不二」
「ふぁ、あっ、ゃ……あああっ!」


お互いの気持ちを伝えた瞬間、
僕達は、同時に果てた。




   **




「…手塚ぁ」
「ん?」

二人で仰向けで寝転がったまま。
息の調子が整ってきたところで、僕は声を掛けた。
手塚の返事を確認すると、一回深呼吸してから、言った。

「なんか…疲れた」
「……第一声がそれか?」
「あ、ごめんごめん」

手塚のいつもの無表情な声。
でも、少し呆れた風にも聞こえて。
僕は急いで謝った。

ごめんね。
今の言葉は、意識が朦朧としててつい口走っちゃっただけ。

…そうだよね。
本当は、もっと伝えたいことあるじゃない。


「手塚ぁ」
「ん?」

「ダイスキ!」

「……そうか」
「あれ、さっきと随分態度違う」
「………」

さっきは、色々と興奮状態にあったし、
場の雰囲気も後押しして?
やっぱり普段じゃあ言ってくれないか。

でも…。


「僕、今世界一幸せかも」
「…も……だ」
「え?」
「だから…」

手塚の小声の返事は、聞こえ難かった。
もう一度言ってもらおうと顔を手塚のほうに向けると…。


「――」


そのまま、キスされた。

そして、耳元でとても小さな声で囁かれた。


 『俺も、同じ気持ちだ』


少し、恥じらいを込めた表情を表に。




「……手塚、大好きぃ〜!!」
「……」


滅多に口にはしてくれないけど、
だからこそ言ってもらえた時はとても嬉しいんだ。
それに、恥ずかしがるっていうことは、
それほど本気に思ってて、大切に思われているということだから。

「僕、本当に幸せだ。このまま死んじゃってももいいかも…」
「何!?」
「え?あ、ははっ!冗談だって冗談!!」


手塚って、少し抜けてるところもあるんだよね。
でも、そこも凄く大好き。
部活中偉そうにしてるのも大好き。
みんな大好き。

それから、嬉しい。
僕のこと、愛してくれてる気持ち、伝わるから…。


僕の、大切な、どんな物より大事な、タカラモノ。






















意味不明万歳。(待ちなさい)
終わり方がな〜。下手なんだよな〜。
書きたいことがありすぎて纏まってない。いつものパターン。(涙)

とりあえず、塚不二の愛の形を表現してみた。
手塚が天然攻。そして白。万歳。
不二も白く。う〜ん白々だ、塚不二っ!

不二受はいい。不二は鳴いても可愛らしい。美しい。(こら)
ぐわはは。気に入っちゃったよ。こりゃいいや。(←!?)


2003/01/27