* exit→childhood *












今日は、雅也の家族がうちに来てる。
月に一度の、夕食会。

私の家族と、雅也の家族は仲が良い。
お父さん同士は会社が同じだし、
お母さん同士も大学からの付き合いらしい。
家も近くだし、良く一緒に出かけたりする。

私と雅也は、幼馴染。
それ以下でも、以上でもなんでもない。
そして、これからも……。





「あーあ、美味しかった。ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま」

今日は、しゃぶしゃぶだった。
私、しゃぶしゃぶって大好きなんだよねv
好きな食べ物ベスト…3には入るかな?
一位はステーキなんだけどv


「雅也、私の部屋で遊んでく?」
「ん、いいぜ」

親たちは何やら笑い話で盛り上がってる。
私たち子供二人だけは、部屋を移動した。
何しろ、大きな笑い声でやってられないんだもの!


「さて、なにしよっか」
「…さあ?」
「ま、この辺が妥当かな」

私は、ボールを一個取り出した。
バレーボールである。
私はそこまで得意じゃないんだけど、
お母さんがママさんバレーに入ってるから、ボールがあるんだ。
たまに、これを使って遊んだりする。

初めは、ボールをぽんぽんやって遊んでた。
それだけだった。

形だけバレーボールで。
…といっても形すらなってなかったかもしれないけど、
とりあえずボールを手でついてるだけだった。

「そりゃ、オーバーハンド!」
「…ほい」
「よっしゃ、アターック!」
「うわ、危ねっ!」
「へへーんだ」

しかし…何故だろう。

「このヤロー!」
「うわ、暴力反対!!」

いつの間にか、ボールの当て合いになっていた。
お互いボールを暫く投げ合った。
しかし息の切れてきた私は、ボールをお腹に抱え込んだ。

「これ以上は暴力反対!訴えるよ」
「なんだよ、お前も当ててきただろ?」
「あんたが先でしょ!」
「お前がスパイクなんて打つからだよ!」

そうして口ゲンカ。
私はお腹にボールを抱えたまま。

「雅也のバーカ!」
「お前もな」
「ムッキー!なによ、この前テストで赤点取ったくせに!」
「あ、なんでお前知ってるんだ!?」
「あら、本当だったの?カマかけただけだったんだけど。そうだったんだ。オホホ〜」
「…っのやろぉ!!」
「キャー!!」

そうして…私は雅也の怒りを覚醒させてしまい(てかワザとなんだけど)、
第2ラウンドが始まるのだった。
といっても…私がボールを抱えているのだけれど。

「てめぇ、ボール寄こせ!」
「い・や!渡したら当ててくるつもりでしょ」
「分かってんじゃねぇか」
「じゃあ、渡すわけにはいかないわね。ベロベロベー!」
「…力尽くで奪う!」
「ぎゃぁー!!」

雅也は、私の抱えているボールに手を掛けてきた。
力の勝負になったら…悔しいけど勝ち目は無い。

「やめて、私の赤ちゃんを取らないで!」
「なにいってんだバカ。寄こせ!」
「いやぁー!!」

ゲラゲラ笑いながら、私は体全体でボールを包み込むようにして守った。
それでも、雅也は諦めなかった。
そのとき…。

「絶対渡さな…ぐぉっ!?」
「あ、ワリ…」
「な、ななななな、変態っ!」
「ワザとじゃねぇって!!」

なんということか、
ボールを奪おうとした際に、
……雅也が私の胸に触れてきたのです。

「変態反対っ!」
「いてっ」

私は、大事に抱えていたボールを思いっきり雅也に当てました。
それは見事に頭にクリーンヒット。

よっしゃーとガッツポーズする私。
それに対して雅也は…。

「お、ボールゲット〜」
「……ああっ!」

愚かしいことに、私は無我夢中になって
折角守り抜いたと思っていたボールを
わざわざ相手に与えてしまったのです…。
これはなんという失態!

「返せー!」
「誰が返すかよ」

さっきのことなど忘れて…またボールの奪い合いが再開するのでした。


「そりゃ!」
「甘いな」
「むぅ〜…」

私が幾ら腕を伸ばしても、雅也はひょいとボールを避けてしまう。

「ん〜…なんで避けるのよ!」
「お前が取ろうとするからだろ!?」

気付けば…ボールの当て合いから奪い合いに変わっていることはさておき、
私達は命懸け?のバトルをしました。


「そりゃ、キック!キック!」
「オイ、直接攻撃は反則だろ!」
「じゃあ他にどうしろってのよ!」

私は考えた。
ボールを奪うより、雅也を倒したほうが早い!
…そうでもないかもしれないけど、とりあえずそうしてみた。

「おりゃー、パンチ!キック!くたばれ!」
「くたばるのはお前だ」
「何おう!?」

やっぱりこれじゃ埒が明かん…。
私はそう判断して、ボールに掴みかかった。
そして、体を入れるようにして奪おうとした。

「むぎぎぎ…」
「無駄無駄」
「……」

そう、悔しいことに力では叶わないんだってば。
さて、どうしようか…。

そう考えてた時、
私はボールを持つ雅也の手の大きさに、ちょっとだけ驚いた。

「……雅也」
「ん?」
「手、大きいね」
「そうか?」
「ちょっと、比べてみようよ」

いつの間にか、抜かされてしまった身長。
前は全然変わらなかったのに。
声も低くなってきて、体もガッチリしてきて。
昔とは違う。
色々変わってきてるんだ…。
そう思って、手を合わせようとした。

その時。

私は気付いた。


…これってチャンス?


急遽作戦変更。
私は、合わさる直前の手を翻すとボールに手を掛け素早く奪い去った。

「…のりゃっ!」
「あっ!?」
「へへーん、ボール奪い返したり〜」

ふふー。
甘いね、雅也君。
やはり、まだ頭脳レベルは私のほうが上かな?

「くっそー油断した!」
「甘い甘い!」

そして、またボールを抱え込んだ。
今度は失敗しないぞ…。

「…また、お前そんなミノみたいになってるワケ?」
「そうしなきゃ取られちゃうでしょ?」
「……ま、
 オレはお前の弱点知ってるからな」



……は?

弱点???



「何を言うかね。美貌・頭脳・性格、どれをとっても完璧なこの私に
 弱点などある分けなかろう?」
「…じゃあ、何しても平気だな?」
「どーぞっ」

ギャグに対して突っ込んでくれよ…。
と思ったが、まあいいわ。
今一瞬雅也が怪しい笑顔になったのも気になるけど。

弱点?
はて。私の弱点って何だ?
自分でも分からないわ。
なんか強いて弱い場所なんて…。

…弱い場所!?


「まさかっ!?」
「そのまさかだよ」
「あ、待って、あ、あははははは!」
「ほらほら」
「や、やめ、やめて!あははは!」

必死に身を捩る我。
そう、私の弱点とは…

異様にくすぐりに弱いことである。


「どこだっけ?脇腹と、どーこだっけなー…」
「やめ、雅也っ!反則!!」

くすぐられると、私はもうどうしようもならない。
有り得ないほどに敏感。
ああほら、ちょっとくすぐられただけで涙出そう…。

しかも、雅也は私のどこが特に弱いのか知ってる気配…。
それを敢えて知らないふりしてるのが憎い。
ちっくしょぅ…。

「確か、首だったような気がするんだよなー…」
「そ、そんなこと無いよ!全然平気だもん!」

私は踏ん反り返ってそう言った。
小さな足掻きである。
本当は…
首が弱くて弱くてどうしようもないんだケド。

お願いだ、引け!引くんだ雅也!!


「じゃあ、平気なんだったら大丈夫だよな?」
「!!」

コイツ…性格最悪だわ。
私はそう思った。
どうしよう、と考える間もなく…!


「あ、わはは!やめ、あ、ごわっ!!」
「なんだよその呻き声」
「だって、雅也が…」
「首が嫌なら、…背中も結構弱かったっけ?」
「え、そんなことないって………ひゃぁっ」



………。


マズイ。


なんでか分からないけど、

自分でそんな気がした。




一筋スーっと走る指。

思わず仰け反る背中。

ゾワっと浮かぶ寒気。

洩れてしまった甘い声。



私は口をガバッと両手で押さえた。
そして思った。

マズイ…間違いなく、マズイ。


「……?」
「なに、雅也…」

声が震えてるのが自分で分かった。
ヤバイです。色んな意味で…。

「…なに、お前泣いてんの?」
「だって、雅也がくすぐるから…」

もう、自分には抵抗する力が無かった。
脳内、パニックだよ…。

「…じゃ、大泣きさせてやろうかな」
「!!!」


性格最悪!!

心の中でそう叫んだ。
口は、手で塞がれていたから。

手が、全身を這い回ってくる。
しかも、私の弱い場所を知ってて執拗に攻めてくる。


体を丸め込んで、
私は目を強く瞑っていた。


「……っ…」


必死に、声を出さないように。
だって、今の私じゃあ、

甘い声しか出そうに無いから。



「……?」
「………」

突然声を出さなくなった私を不審に思ったのか、
雅也は手の動きを止めた。

「お前、どうかし…」
「へへん、どうだ、耐え抜いたぞ!」


声を掛けえてくる雅也に、私は半ば負け惜しみの言葉を言った。

心とは、裏腹の。



その堂々とした態度がいけなかったのか。
雅也は、更なる作戦を考えてきた。


「…あと一箇所」
「へ?」
が弱い場所、在るよな…?」
「…っ!!」


なんと、その瞬間…。


耳に息を吹きかけられました。


私はガバッと手で耳を塞ぎました。
ボールは床を転がって、雅也に取られてしまいました。


「は、反則…」
「お前ホント、こういうの弱いのな」
「……」


私は、顔を上げられなかった。
だって、今絶対顔赤いから。
涙も滲み出てきたし。
あ、ヤバイ。足震えてきた…。

なんか…息も上がってるし。
マズイ。
マズイって……。


「……ハァ…っ」
、お前、大丈夫か…」
「っ触らないで!」
「お、なんだよ…」

思わず、肩に乗せられた手を払ってしまった。

思考回路がどうにかしてる。
顔も身体も頭の中も全部熱い。
脳味噌煮えくり返ってるかも…!?


「はぁ…っ………」
「…お前、どうかしたのか!?」
「いや、大丈夫!大丈夫だから…」
「……そう、か…?」

私は、雅也のことを久しぶりに見上げて、そして笑った。
本当の笑顔になってたかは疑問だけど。

…見上げたけど、
目は見ること出来なかった…。
今の状態だと、どうにかなっちゃいそうで。

雅也は気付いてないのかな。
それでいい。
気付かれたら困る。







…さっきから、マズイと思っていたこと。

私、さっきから雅也になぶられる度に…




めっちゃくちゃ、感じてた……。




何やってるの!?
どうしちゃったの私!?
なんで、なんで雅也なんかに…。
情けない…。
向こうは絶対そんな気ない。
私もそんな気なかったよ。
それなのに…。

どうして、身体がこんなに熱くなるの…っ。



全身に這い回る指の感触。

擦れる布。

直接触られた首元。

耳に掛けられた吐息。



…バカ。

バカバカバカ。

何やってるの、っ!

我を取り戻せっ!!


そうよ、私と雅也は幼馴染。
それ以下でも、以上でもないんだから…。



「雅也、そろそろ帰るわよー!」

おばさんの声がして、雅也は立ち上がった。

「…それじゃ、またな」
「うん…」


雅也がこっち見てきてるのは分かったけど、
私は結局目を見返すことは出来なかった…。


一応見送りぐらいには行ったほうがいいのかな、と思ったけど、
足が震えちゃって、私は立ち上がれなかった。

雅也は、そのまま部屋を出て行った。


『パタン』

「………」



そのまま、ずっとそこにしゃがんでた。
頭の中は、グルグル。


どうしちゃったの?
何を考えているの?
そんな対象じゃなかったんじゃないの?



「バカみたい…」


いつの間にか涙が零れていた自分の顔に、手を当てた。


今、気付いた。
こんな形で気付くなんて…。

私、気付かないうちに雅也のこと、好きになってた。
それどころか、性的対象にしてた…。


「最悪、自分…」


グスっと鼻を啜ると、
なんだか余計淋しくなった。
涙が沢山沢山出てきた。
訳も分からないまま。


お風呂に入る気力すらなくなった。
全身が熱い。
凄く汗掻いちゃってて、シャワーぐらい浴びた方がいいとは思ったけど、
お風呂場まで歩く力も、有りそうに無かった。


腰抜けたみたい…。


情けないと分かりつつ、私はライトを消すと、
四つん這いでベッドまで行って潜り込んだ。
シーツが、有り得ないほど冷たく感じる。
心地好いような、寒いような。


全身震える。

身体が熱い。

涙が零れる。



「雅也…」



スキ。


言いそうになって、やめた。

心の中だけで、ひっそりと呟いた。




「バカみたい、自分…」


向こうはこっちのこと、そんな対象としてみてるはずないと分かったから。
自分もそのつもりだったのに、思い切り感じてしまったから。

好きという気持ちに合わせて、性的対象としてみてしまった。


「………」


熱が出たように熱い身体。

感触を確かめるように、そっと手を這わせた。

目を閉じて。


とても熱い夜だった。








次の日、目が覚めると、
私は全身びしょびしょだった。

本当に熱があったんじゃないか、というぐらい汗を掻いてた。

といっても、汗だけじゃ、ナイ。


どうにかしてしまった自分。

濡れている身体をそっと撫ぜて、
昨日想っていた人のことを考えた。



愛しさよりも、
何故か恐怖の方が大きかった。




「ま…さや……」




放心しかけたまま、
私は一筋の涙を流した―――。







   -exit?-






















主人公、欲求不満気味かぇ?(爆)
マッサージやくすぐりから発展は当たり前さかい。(誰が決めたんだ)
つーかこの主人公真面目にやばいね。(笑)(ってか一番やばいのは自分/痛)
この話、エロイってか下品…。(禁句)

ただの幼馴染だったはずが、そういう対象として見てしまった自分を悔やむ訳です。
気付いてしまったことが辛かったり。
うんうん。明らかに向こうその気なさそうなのがポイント☆
ってか、この中途半端な終わり方って苦情出る!?
どこが裏(々)やねんってか?
主人公が勝手に自分の世界入ってるだけじゃん、みたいな。(笑)
安心してください。(ん?)
もちろん続編書きますってば。

桜井君好きやね、自分。
ってか、黒いよ桜井君!?
結構白い設定なんだけどな…ま、たまには黒もありじゃろ!うむ!


2003/01/26