* 変化を告げる階段 *
「おチビー…分かってる?」
「何がっスか」
コイツは、いつでも飄々としてる。
それが悔しくて、オレはちょっとだけ怒った風な声をして言う。
「オレ、もうすぐ卒業じゃん」
「ああ…そのことか」
折角の憤激も虚しく。
向こうは全く気に留めない、という感じだった。
悔しいなぁ。
「だってぇ…なんか、意識してるのがオレだけみたいじゃん……」
思わずそう呟いたけど。
消えていく白くなった言葉を見て、ふと思った。
…もしかして、実際そうなワケ?
「どうせおチビなんて、オレのことはどうでもいいとか思ってるんだ!」
「…うるさいなぁ」
むっ。
後輩の癖に、その態度はナマイキだ!
成敗してくれるー…と思ったら。
「俺たちの関係って、学校が違うだけで崩れちゃうようなものなの?」
…そっか。
それも一理あるな、うん。
「っていうか、学校も同じだし…校舎だけだし…」
息を白くさせながら、越前はそう呟いた。
なんか、その言葉がね、自分に言い聞かせているように聞こえたの。
オレの思い違いかもしれないけど。
でも、ちょっとだけ自惚れてもいい?
おチビも、オレのこと想ってくれてるって?
「自惚れないで下さいよ」
「げっ!」
なにコイツ、エスパー!?
つかつか、オレが想われてるっていうのはウヌボレ!?
「オレの方が、先輩のこと思ってるから」
「ぅあっ、何を言う!」
オレの方が好きだもん!
そう言い返すと、越前は「まあどっちでもいいけど」と言った。
…どう考えても、コイツの方が上手みたいだ。
吐く度に現れてすぐに消えていく白い息を見て、思った。
この寒さも、いずれは和らいでいくんだなって。
いつの間にか温かくなっていくんだなって。
その頃オレは、違う段階へのステップを上がるんだなって。
もう一度、痛いくらいに深く実感した。
これは何だかんだいっても変えられないこと。
「学校が別になっても、別れるとか言うなよー」
「だから学校じゃなくて校舎だって…」
「ぶぶー。“青春学園中等部”から“青春学園高等部”っていう別の学校になるんです」
「…どうでもいいし」
「でもさ…思えば今までも部活以外で会うことってほとんどなかったよね」
「じゃあ今と変わらないじゃん」
そう。
中学で夏の大会を終えたオレは、もう高校の方の部活に参加している。
冷静に考えたら、越前と会うのは、今のように下校の時や、休日だけ。
なんだ。
今と何も変わらないんだ。
「あ…そういえば、俺一つ決めてることがあるんだけど」
「ん、何?」
「ほら、“もう別の学校の”生徒になるんだからさ」
嫌味なほどに強調して。
「先輩って呼ぶの、やめる。変わりに」
―――エイジって、名前で呼ぶから。
…オレは、笑顔を見せた。
この寒さも、いずれは和らいでいくんだなって。
いつの間にか温かくなっていくんだなって。
その頃オレは、違う段階へのステップを上がるんだなって。
何も変わりはしない。しないのだけれど。
それでも、ほんのちょっとだけの変化を乗せて。
WEB拍手で菊リョの希望があったので書き始めたんですが、
あまりに長いのとリョ菊になってしまったことでやめました。(痛)
リョーマ受が…か、書けないっ!(涙)
敢えて、卒業直前じゃなくて寒いうちのお話にした。
理由?今がまだ冬だから情景が浮かびやすかった。(爆)
っていうかね、WEB拍手で使おうと思ってたから。
(拍手ではその時期にあった作品を書いている)
2004/01/26