* 月の終わり *

  -edelweiss-












部活が終わったあと、桃先輩に呼ばれた。
「早く帰ろうぜ」って。
でも、俺はそれには従わなかった。
誘いを断ると…俺は校舎に来た。


放課後の学校は、とても静かで。
誰も居ない廊下は、いつも以上に長く見えた。

昇りなれない、3階分の階段。
余り足を踏み入れたことのない、3年生の階に来た。


足音が、必要以上に響く。
一歩一歩、目的地へ向かう。


そして着いた、3年6組の教室。

一つの机にあった、花瓶と白い花。


「……っ!」


花瓶を振り上げて、そのまま振り下ろそうとした。
地面にぶつけてやろうとした。

でも…出来なかった。


「どうしてだよ…バカ」


その言葉は、誰に向けて言ったのか、自分でも分からなかった。


「どうして…どうしてだよ」


ジンと目の前が霞んだ。
そうすると、あの人の笑顔が見えた。
数回瞬きすると、消えた。


「……」


窓から差し込んでくる夕日。
必要以上に、眩しく感じられた。


橙色に染まった教室。

橙色に染まった世界。

橙色に映る、白い花。



「大体さ…アンタいっつも自分勝手なんだよね」

ガンと机を蹴った。
中に何も入っていない机は簡単に傾いて倒れた。
回りの机を巻き込んで、騒々しい音を立てる。

「ムカつく…ムカつくんだよ」

何度も蹴った。
踏ん付けるようにして。

「いつも了承もなしに突っ走ってさ…」

ピタッと足を止める。

「今回も…勝手に……逝くなよ」


自分の拳に力が篭る。
横向きに持つと右手に握った花瓶からは水が零れる。
歯をギュッと食い縛った。

少し震えた。


やり場のない気持ち。

行き場のない感情。

これを、どうしろっていうんだよ…。




倒した机を立て直した。

傾けてしまって水が零れてしまった花瓶を乗せる。

水がないままだと、明日の朝には枯れてるかもしれない、と思いながら。


「バイバイ、我が侭な菊丸先輩」


何事もなかったかのように、
教室を後にした。

橙色の世界の中、
薄く染まる白い花に背を向けて――。







dusk tints everything into orange...






















リョーマさんは絶対自棄になるタイプです。
感情のコントロールが上手く出来ない。
やり場のない気持ちをどうすればいいのか分からないのです。
それで、それを怒りとしてぶつけてしまう。
無駄だと分かってるから虚しいのですが。
しかしそうでもしないと落ち着かない…という。

題名…エーデルワイス。
花言葉は、大切な思い出です。
一応白い花ですが…机の上に載ってたのは違う花かと。(白菊?痛っ!)
調べてて知ったんですがエーデルワイスってドイツ語なんですね。
じゃあ本当はエーデルバイスというんでしょうね。(知ったか知識)

つーかこれリョーマじゃないし…ごめんなさい!!(号泣)


2003/01/19