* 怪我・血・保健室 *












「レギュラー集合!」

手塚の一言で、レギュラー7人が一斉に駆け寄る。

「今日は、レギュラー同士のラリー対決をする。
 もちろん全員シングルスだ。対戦を決めるのでくじを引け」

そういって、手塚は8本の細い紙の束を出した。
みんな、一本ずつ引いていく。

「同じ番号のもの同士で戦ってもらう。
 相手がわかったら、早速コートに入れ」

それぞれ、自分の番号と見合わせながら相手を探す。

「う〜ん…3番の人誰〜?」

菊丸は、自分の対戦相手がなかなか見つからず、
髪をピラピラ振りながら訊いてみた。

「3番は俺だ」

そう言ったのは、手塚だった。

「げっ!よりによって手塚!?うわ〜…。でーもっ!負けないよん」

菊丸は一瞬嫌そうな顔をしたが、すぐにやる気の顔になった。
自分のラケットを掴むと、コートへ走っていった。


「う〜ん…」
「どうした?」

手塚がコートに入ると、菊丸は一人で唸っていた。
理由を問うと、菊丸は無邪気な喋り口調で言った。

「これってさ、全員同時に試合するわけでしょ?」
「だからどうした」
「他の人のが見れないじゃ〜ん!!」
「……いいから始めるぞ」

手塚は、こいつの我がままには付き合い切れん、とでも言いたいかのように、
トスの構えをするのだった。

結局菊丸はトスを外し、手塚のサーブでゲームは始まった。
外で見ている部員達も、息を飲んで試合の一部始終を見届けていた。

「他の人の試合を見るためには早く終わらせないとな!
 んよ〜っし!負っけないぞ〜!」

気迫満々の菊丸。
ラケットをブンブン振り回すと、レシーブの体勢に入った。
手塚はボールを高く上げ、サーブを放つ。
対する菊丸は、サーブをリターンすると同時にネットへ走る。

「だったら、得意分野で勝負だよね!」

ネット際で、いつもの通りアクロバティックなプレイを繰り返す。
それには、手塚も少し苦戦していた。
どこから、どんな体勢で打ち込んでくるか分からない菊丸のテニス。
それは、誰だって戸惑うであろう。
しかし、さすが手塚は冷静で、コートの端へロブを狙った。

「なんのっ!」

それもまた菊丸はギリギリのところで返した。
それをみて、手塚は菊丸をコートの端へ走らせた直後に、
得意のドロップショットをネット際に放った。

「上手い!さすが手塚部長だ!」

観戦している部員達も思わず歓声を上げる。

「くっ!」

それをまた、菊丸は必死のダイビングボレーで返した。

「菊丸先輩もすごい!!」


―その時。

「痛っ…!」
「!?」

手塚はコートへショットを打ったが、
菊丸はそれを打ち返すことは無かった。
というよりか、菊丸は立ち上がらなかった。

「つぅ……」
「大丈夫か?」

手塚が菊丸の横に駆け寄ると、菊丸は足を押さえてうずくまっていた。

「…ちょっと手を離してみろ!」

手塚はそっと菊丸の手を足から剥がすと、筋のような傷が一本入り、
そこからは赤い鮮血がほとばしっていた。

「これはひどいな…」
「痛い…痛いよ…」

菊丸は半泣き状態だった。
傷口を押さえる指の隙間から血が流れ出る。

(…これか)

手塚が足元を見回すと、1本の尖った針金があった。
いつもならダイビングボレーも華麗に着地していたが、
今回は手塚のショットをギリギリのところで飛び込んだので、
着地の時も受け身を取る余裕すらなかったので、
結果、地面に滑り込んでしまった、と。
更に最悪な事に、そこには針金が落ちていた…。
もっとコートの整備をしっかりしなくてはならないな、と思いながら
手塚は立ち上がった。

「俺と菊丸の試合はここまでにする。
 保健室に行ってくるからあとは大石の指示に従ってくれ」
「はい!わかりました!」

手塚に言われ、数人の部員が声をあげる。
そして、皆別のコートの試合を見ようと散らばっていった。

「菊丸、立てるか?」
「う……」

菊丸は、手塚の肩を借りてようやく立ち上がる事が出来た。
歩こうとしたが、左足に体重をかける度に鋭い痛みがほとばしり、
言わばびっこを弾いた状態だった。
ひょこひょこと辛そうに歩く菊丸を見て、手塚は溜め息をした。

「…仕方ないな」

そういうと、軽々と菊丸を抱えあげた。

「て、手塚!?大丈夫だよ!降ろして…!」
「どこが大丈夫なんだ?その足で」
「ぐ……」

初めは抵抗する菊丸だったが、正直な話足はかなり痛かったし、
自分で歩いても速度が遅すぎる事から、
諦めて手塚に身を任せた。



保健室へ行っても、誰もいなかった。
しかも、鍵が閉まっていた。

「しまった…休みの日だからな。先生もいないのか」
「えっ!?どうするの?」

手塚の腕の中で菊丸が不安そうな顔をする。

「そうだな。とりあえず職員室へ行ってみよう。誰かいるかもしれん」

そういって、二人は職員室へ向かう。
ちょっとここで待ってろ、と言い残して手塚は菊丸を下に降ろした。
菊丸も大人しく座って待つ事にした。


「失礼します」

手塚が職員室へ入ると、仕事をしている先生が3人ほどいた。
そのうちの1人が手塚に声をかける。

「ああ、手塚君じゃないか。その格好は部活かね?」
「はい、そうです。実は部活中に部員が怪我をしてしまったのですが、
 保健室を開けていただけないでしょうか」
「そんなの容易い御用だよ」

その先生は言った。
生徒会長をやっていて、授業態度も真面目な手塚の人望は厚かった。
その先生は立ち上がると、壁に掛かった鍵を取った。

「おや、大丈夫かね?」

職員室を出ると、横に座り込んでいた菊丸を見て少々驚く先生。
菊丸は、とろんとした目で先生を見上げた。
痛みのために意識が少し朦朧としているのか。

「……はい、開いたよ。もういいかね?」
「はい。有難う御座います」

手塚は礼儀正しく礼を言うと、職員室の横で座っている菊丸の元に戻った。

「菊丸、大丈夫か?」

菊丸は眠たそうな顔でゆっくりと頷いた。
手塚が腕を掴んで引っ張ると、恐る恐る立ち上がった。
そこから保健室までそう距離は無かったため、
そのままゆっくりと歩かせる事にした。
肩は手塚に掛けられているが。


「まずは傷口を洗い流さなくてはな」

手塚は菊丸を丸い椅子に座らせると言った。
洗い流すといっても、その怪我している部分がふくらはぎなので、
無理に水道で洗うわけにもいかない。

「……」

手塚は保健室のタオルを一枚拝借すると、水に浸して、軽く絞った。
それを、菊丸の傷口に軽く当てる。

「ひゃっ……」

突然の冷たい感触に、菊丸の体がびくっと跳ね上がる。
それに気付いた手塚が声を掛けた。

「大丈夫か?」
「ん。ちょっとびっくりしただけ」

菊丸の様子を確認して、手塚は傷口の血を拭い去った。
しかし、傷が深かったのか、場所が悪かったのか、
怪我をしてから結構な時間が経っているというのに、
拭いても拭いても血は流れ出てくる。

「これはまずいな…消毒して止血しないといけないな」
「えぇ!?そんなにひどいケガなの!?」

菊丸は不安そうな顔をする。
それに対して手塚は相変らずの落ち着き払った口調で言った。

「はっきりとはわからんが、とりあえずなんとかしなくてはな」
「え〜いいよ〜。こんなの舐めときゃ治るって」

軽々しく言う菊丸だったが、手塚は強い口調で言い放った。

「だめだ。ばい菌が入りでもしたらただ事じゃすまないんだぞ」
「う〜…分かったよ」

手塚の威厳のある一言に、菊丸は少々怖じ気づく。

「まずは消毒か…」

そういって手塚は立ち上がった。

「……」

手塚は暫らく棚の中を見回したり引出しを開けたりしてみたが、
ただうろついているばかりだった。

「…どうしたの?」
「いや、それが消毒液が見つからないんだ」

手塚は首を捻ったが、本当に見当たらない。
菊丸も部屋中を見回したが、心当たりが無いので言った。

「だから〜、舐めときゃ平気だって!」
「確かに昔からそのようには言うが…」

手塚は幾分焦った表情で菊丸を振り返る。
しかし、もう消毒液は見つからないという気持ちが、
逆に手塚のリミッターを外していった。

「あ〜また血が出てきた〜…」

自分の傷口を見て、舌先を出す菊丸。
手塚は、ついに動いた。

「まあ、何もしないよりは舐めておいた方がいいというのもまた事実だな」
「…手塚?」

手塚はそっと菊丸の足元にひざまずくと、右手を足に添えた。
そして……。

「あっ…」

手塚の舌が、菊丸の足を這う。
菊丸は、自分で舐めとけば〜などと言ったものの、
実際に人に舐められると、
くすぐったいような少々染みるような不思議な感覚がした。
ザリ、と舌が傷口をなぞる。

「ぃやっ……!」

菊丸は、喘ぎ声にも似つかわしい声をあげる。
手塚も、その菊丸の反応を聞き逃さない。

「どうした?」
「だ、だって…」
「舐めろといったのはお前だ」

手塚は、気にせず舐め続ける。

「…もう」

菊丸は、諦めてされるがままになっていた。
だんだんその感触に慣れ始めた頃、
何故か手塚の舐めている場所は菊丸のふくらはぎからももへと移っていた。

「手塚ぁ…。にゃんでそこ舐めてるの;?」
「…問答無用だ」
「なんで…や、やめて…」
「……」

手塚は何も言わず、菊丸の腿の裏側を舌でなぞった。

「ふわっ…」

思わず声を漏らしてしまい、
菊丸はハッとして自分の口を押さえる。

「お前はやめろというのか?」
「え?」

手塚は菊丸の目を見て言った。
それに対して菊丸は涙声で返答した。

「こんなに感じているのにか?」
「感じてなんか…っ!」

必死に抵抗する菊丸だったが、なるほど、
中心部分は大きく反り立っていた。

「ち、違う!」
「何が違うというんだ?この状況で」
「うっ……」

顔を真っ赤にして言い訳する菊丸だったが、
手塚の前にその作戦は無意味に終わった。

「残念だったな」
「…手塚のバカ」

菊丸は不機嫌に小声で言った。

「何か言ったか?」
「べーつに」
「俺との試合中に怪我したことを不運に思うんだな」

そう言って手塚は菊丸のポロシャツのボタンを取り始めた。

「もういいよ。でも…」


――やるからには最後までいかせてね?

菊丸は耳元でそっと囁いた。

「…当たり前だ」

手塚は菊丸を抱えあげると、ベットに押し倒した。




ポロシャツのボタンを全て外し終えると、
手塚はそのままそれを菊丸から脱がせた。
そして、肌にそっと唇を当て、吸い付く。

「! ヤダァ!痕は…つけないで…!」

手塚はいつも通りの表情なのかどうかは知らないが、
不機嫌そうな顔をして言った。

「こんなところに痕を付けられて困るようなことでも普段しているのか?」
「それは…あっ!」

菊丸の話を無視して、手塚はどんどん痕を付けていく。

「や、やめ……」

菊丸の目には涙が溜まっていた。
目を閉じると、それは零れ落ちた。
手塚はそれを横から掬い上げた。
そして、今度は耳を甘噛みした。

「ぃやっ!」
「耳で感じているのか?」
「感じてなんか…んっ…」

口ではそう言っても、体は正直だった。
手塚が舌全体を使って耳を舐め上げるたび、
菊丸は甘い声を漏らしていた。
手塚が口を離すと、耳との間に糸が伝った。
菊丸の全身は汗で濡れていた。
手塚はその汗を自分が抱きつくという荒い手段で拭ってやると、
一度体を離し、言った。

「…脱がすぞ」
『コクン』

菊丸は何も言わず、ただ頷いて身体を手塚に任せた。
手塚は菊丸のズボンと下着を脱がすと、
即急に自分のものも取り出した。

「入れるぞ?」
「えっ?ちょっと待って!まだ痛ぃ…っ!!」

菊丸はいきなり入り込んできた異物感に言葉を失っていた。
手塚はゆっくりと奥くへ進めたが、
いきなり入れたものだから、菊丸の痛みは大きかった。
手塚もそれは承知である。
しかし、その割に静かだと思い疑問を感じ菊丸を見ると、
菊丸は自分の親指を噛み必死に痛みを堪え、声を押し殺していた。

「…っ……く…」

その様子を見て、手塚は一回菊丸から身体を抜いた。

「ぁんっ!」

その抜かれる感触に、菊丸は耐え切れず声を漏らす。

「菊丸…痛いか?」
「大丈夫…だよ、手塚。きて…」

息切れしながらも菊丸は言葉を繋げた。

「最後まで、イかしてくれる…んでしょ?
 オレを…気持ち良くさせてよ」

そう言って、自分から手塚の首に巻きついた。

「ああ、わかっている」

そして、手塚はまた身体を進めた。



「んっ……ぁん…!」

痛みの和らいできた菊丸は、身体全体で手塚を感じようと、
秘所はきつく締め上げ、腕は背中に回し、足は腰に絡めていた。

「て…づか……」
「ん…」

手塚は、菊丸の痛みが治まってきたことに気付いたのか、
先程よりも腰の動きを大きくした。

「あっ!やん、ん…っ…あぁ!」
「くっ……」

動きが大きくなると菊丸は更に手塚自身を締め上げ、
それによって手塚も感じていた。

「…ぁん…や…ふ……」

手塚は喘ぐ菊丸を見、それによって更に気分が高まっていた。
一度腰を引く抜きかけては、押し込む。
それの繰り返し。

「あぁっ!あ…いいよ、手塚ぁ!!」
「お前も…な……」

今度は、あまり大きくは動かさず、
小さく、速く動かしていった。

「っ…あぁ!!そこ!あんっ!はぁ…いい!
 そこ!いいのっ…はんっ…」

手塚のモノが菊丸の感じやすい部分を刺激し、
菊丸の身体は限界に近付いていた。

「あ…手塚、オレ、も…限界っ…!そろそろ、やば…っ」

菊丸は既に下半身に力が入らなく、
手塚の首に巻きつけている腕のみで己の体重を支えていた。
一方の手塚も、菊丸の強い締め付けで終わりが近付いていた。
それに伴ない、また腰の動きを大きく、激しくする。

「ああっ!てづかっ!ダメっ…ぁ…あん!イクっ……!」
「…くっ…!」

菊丸は手塚のことを締め上げ、それによって手塚も感じ、
二人はほぼ同時に果てた…。



 **


「あ〜。どうすんのさ。ベット汚れちゃったじゃん…」

はっきりいって、手塚と菊丸はピンチに陥っていた。
お互いが放ったもので、ベットのシーツは白い液体にまみれていた。

「……」
「うぅ〜。手塚のせいだぞ…」
「どちらのせいと言う訳でもない。でも、この状況はどうしようもないな…」

さすがの手塚も、お手上げの状態だった。
いつもより更に深く眉間に皺がよっている。
といっても、このまま帰れるようなものではない。

「部活は終わっちゃったかな〜。そりゃそうだよね…」

ぼやく菊丸に、手塚は突然閃き声を上げた。

「…! 菊丸、これは家庭科室の洗濯機で洗おう」
「おっ!さっすが手塚!冴えてる〜♪」

こうして見事に、二人は難をしのいだのだった…?




 -end?-







 *オマケ*


「あれ?海堂、お前さっき保健室行ったんじゃなかったのか」
「……フシュゥゥ〜」

同じ2年の桃城の質問に対し、
海堂はただ息を深くつくだけだった。
しかし、心なしか頬が紅潮している。

「おい、どうしたんだよ。もしかして保健室に行ったって、
 熱があったからなのか!?」
「違う!ただ…怪我しただけだ。救急箱で用は足りると思って戻ってきた、
 それだけだ!」

海堂は、怒ったような口調で言ったが、
それは何かを誤魔化しているような言い回しだった。

「ふ〜ん。…ならいいけどよ」

その時、コートの向こう側から大石の声がした。

「はい!じゃあ今日の練習はここまで!」
「あれ?大石先輩っスか?部長は?」

桃城が疑問を投げかけると、大石は軽く首をひねって答えた。

「手塚は英二を保健室に連れて行ったっきりだ。
 そんなに英二の怪我ひどいのかな…。あとで見に…」
「大石副部長!きっと菊丸先輩は平気です!
 きっと見に行かなくても大丈夫です!じっと待つことにしましょう!!」
「ど、どうしたんだ海堂、突然;?」
「………フシュウゥゥ〜〜」

突然叫びだしたと思ったら、また海堂はいつものように
ムスッとした顔で背を向け歩いていった。

「何なんだ???」

不思議そうな顔をして戸惑う大石だったが、
勘付きかけてしまった人が一人…。

「……えっ;?」






















あっはっは〜!やっちまった〜!
くそぅ。また次の日になってしまった。
明日テストなのに…!ぐは。
夜のテンションはいかんな。。。
しかもよりによって塚菊!!!
ひぃ〜。
テスト中にほとんど書き上げたという代物。(アホ)
ヤベェ、問題用紙誰にも貸せない…。

薫さん、見てしまったのね…。(泣)
いや、きっと見てないと思う!
聞いてしまって引き返したんだ…。(可哀想に)
海堂ってこういうの結構偶然居合わせちゃうタイプだよね。。(苦笑)

はぁ〜。
次は乾菊か?(爆死)


2002/06/22