* 月の終わり *
-exit of labyrinth-
「青学ー、ファイオー!」
「……」
いつも通り活気に溢れている青学テニス部。
でも、それは表向きだけで、
皆、心の中には悲哀を隠しているのが分かる。
「それじゃあこれからダブルスの強化練習を行う」
竜崎先生の声がコート中に響く。
皆一斉にそっちを向く。
「Aコートに不二と河村、それから…桃城と海堂、入りな」
ダブルスの、練習……。
いつもは、大抵黄金ペアが相手だった。
でも、もう居ない。
息もピッタリで、いつでも仲の良かったあの二人…。
…だめだ。こんなこと考えたって。
今は、俺たちに出来ることをやるだけだ。
「オラオラフジコ、湿気たツラすんなって」
「タカさん…」
コートに先に入っていた不二は、とても小さく見えた。
そして、淋しそうな顔をしていた。
俺だって、哀しい。
でも、それを表に出してはいけない。
「今は、プレーに集中だ」
「うん…そうだね」
そう言って不二はラケットを握り直した。
俺もまた、ラケットを強く握る。
熱い気持ちが漲る。
心の内から何かが込み上げてくる。
それがどんな感情なのか、自分でもはっきりと分からないまま。
やり場のない、胸中の靄。
揉み消す為に、ラケットを振る。
それでも何処かに感じてしまう淋しさ。
隠すために、ひた走る。
まるで、迷路に填まったような気持ち。
出口が見つからない。
「…タカさん」
「ん、どうしたフジコ」
「いや、あの…頑張ろうね、大会!」
「……ああ」
皆、感じているんだ。
悲しさ。
淋しさ。
切なさ。
皆、闘っているんだ。
それぞれの中で。
闇の中で、光を求めるように。
「英二も、きっと応援してるさ」
「大石と、一緒にね」
「…そうだな」
他に、どうすることも出来ない。
今出来るのは、幸せを信じること、笑顔で居ること。
そして、深く心に刻むこと――。
wander around everlasting dark to find a light...
タカさんは、忘れようとしないで心に深く刻もうと頑張るタイプだと思います。
それも辛いんだけどね。うんうん。
というか、みんな辛いんですよ。
だから、自分だけ落ち込んでちゃいけない、と皆思うわけですね。
微妙にタカ不二チック。いや、健全な方向で。
二人はこのぐらいの適度な距離が好きですわ。
不二が有り得ない白さなのはこのシリーズ特有なので許して。
(普段黒不二派だから戸惑っちゃうよ。自分で)
2003/01/18