クリスマス、楽しみにしてたのにな。

 実はさ、付き合い始めたころからこっそり
 クリスマス一緒に過ごしたいな、なんて思ってたこと、シュウは知らないでしょ。


 初詣も、一緒に行きたかったのにな。

 毎年、家族と行ってたけどさ。
 来年は、シュウと一緒に行きたいなって。
 普段は絶対着ない着物とか着てサ。



 でも…現実がこれだもんな。




 分かってたけど。

 今までも十分心に刻み込んでたけど。


 離れ離れって、ツライ、や……。











  * together *












引っ越して、初めての年越し。


そうか、今年はドイツでクリスマスか…。
日本とは違うのかな、やっぱり。
盛大にお祝いするのかな?

お正月は日本のほうが盛大って感じだな。
こっちは年賀状は送らないよね。
クリスマスカード送るんだっけ?


と、思ってたら。

なんか、年末は旅行だそうです。あらら。
スペインだそうです…フラメンコ?
帰りは、元旦の夜遅く…とか。

へへ…どっちにしろ一緒に居るのは無理だったのかな?
でも、スペインなんて…ヨーロッパに居るからって感じだもんな。
日本に住んでたら…日本で年越してそうだもん。


「あ〜あ」


考えながら、ボスンとベッドに倒れこんだ。

環境の変化にも漸くなれ、楽しい生活を過ごしていた頃、
やってきた、年末年始の大イベント。
盛り上がるだけに、横に居てほしい人が居ないのが、辛い。



「シュウが居ればな〜。クリスマスパーティーとか?初詣とか?
 楽しみにしてたのに…」


布団の端をきゅっと掴んだ。
でも、それは薄くて。
感じる温度は、自分の体温の撥ね返り。

考えてしまう。
もし、あの人が自分の手を握ってくれたら、と…。


「逢いたいな〜…」


手紙を送れば、思いは伝えられる。

電話をすれば、声は聞ける。

メールなんて早くて便利なものも、最近はある。


でも……


「逢いたい…」


募る思いは、それだけだった。





半年前、自分は何してたっけ?

そんなことを考えてみた。



「6月中盤…まだ、引っ越すこと伝えてないや…」



あ、あたしが引っ越すこと親に伝えられたころ、か…。


それまでは、純粋に毎日が楽しくて。

好きな人と一緒に過ごしてて。

先に何が起こるなんて、想像も着いていなくて。

疑うことも知らずに、幸せな日々が続くと思ってた。


「……っ」


考えるだけで、瞳に涙が滲んだ。
天井が霞んで見える。
仰向けになっていなかったら、涙は頬を伝っていたかもしれない。
瞬きすると、視界は幾らかはっきりした。


引っ越すことを教えられて。

毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかったのに、どこか引け目を感じるようになって。

お腹痛い日とかあって。


伝えることが出来なかった。

伝えてしまったら、向こうも引け目を感じるようになってしまうと思ったから。


シュウの笑顔を見るたび、辛かった。

自分が作り笑いできてるか、不安だった。

その辺は持ち前の明るさで、何とかなったけれど。

カウントダウンは、一歩一歩終わりに近付いていった。


10日前になって、漸く伝えて。

やっぱり、お互い辛かったと思う。

でも、笑顔で別れることが出来て。


それでも…やっぱり一人は辛かった。

どんなことよりも辛かった。

実際そうなって、分かった。

想像よりずっと辛かった。

思いっきり泣いて、自分がボロボロだってこと認識した。

暫くして、それからも立ち直った。

というか、気付けばそこまでシュウのこと考えていない自分に気付いた。

日常が刺激的だった。それもある。

それ以上に、考えないようにしてる、ということが分かった。

考えることを制御することで、淋しさも押し込めてたんだ。


でも、一回夢に出た。

やっぱり、好きで好きで堪らないって事に気付いた。

もう、考えるのもやめられない。

考えると逢えないことを思い出して淋しいけど。

考えないと、離れてしまいそうで怖い。



つまりいいたいことは…。



「逢いたいってことじゃ〜!!!」



思いっきり叫んでやった。
近所迷惑もいいところ。

でも…。


逢いたい逢いたい逢いたい!

そう思い始めると止められない。


なんつーか逢いたいんだって!!!



「……はぁ」


いくらそんなこと考えたって、今はどうしようもないって分かってるけど。

…なんか、シュウ依存症。
禁断症状が現れたか?
だって、5ヶ月会ってないんだよ…?


「う〜……」


布団に顔を埋めた。

暫く唸って…、

「こうなったらバカンスを堪能してやる!」

腹を括った。

カモン、ウィンターバケーション。




はぁ。

クリスマスにお正月が、外国なんてね。

全く…ふぅ。





ところで、旅行に行くのは明日。

…あたし、荷造りしたっけか?

………。


、荷物準備したのー?」

「い、今やってるー!!」


………。

さぁ、あたしの旅行鞄はどこだー?っとね。ははは。




 **





「おお〜!エスパーニャ!!」


スペインは、ドイツとは違って随分暖かかった。
日本の春と同じ気候だって。納得。
海も近いところだし、なんか良い感じ♪

…本当に求めてるものは、手に入らなかった気もするけど…。


…逢いたい。


「いやいや、旅行中は考えるの止そ!」


そうそう、バカンスを堪能するんだから!

…向こうは、どうしてんだろ……。

いやいや、考えない考えない…。




 **





過ごしてみると、一週間なんてあっという間で。

大晦日の夜、ホテルのバルコニーで翌年を迎えた。

瞬間花火が打ち上がって、とても綺麗だった。

それを見てたら、感動して涙が出そうになった。


訳も分からず、走ってみたくなった。

ハッピーニューイヤーってことで、いいでしょ?

あたしはひたすらバルコニー中を走ってた。


心の中に疼く思いを隠すため。





 **






次の日、というかまあその日なんだけど。

朝、目が覚めて。

一番初めに考えたのは、シュウのことだった。


やっぱり、考えちゃう…。

どんなお正月、過ごしてるんだろって。

もう、8時間前にこの時間は過ぎ去ってるけど…って意味不明だな。

向こうもこっちのこと気にしてくれてるのかな?

なんか、不安……。

信じてるけど、不安だった。


「………」



そしてあたしが取った行動、二度寝。






 **






ドイツに帰ってきて。

いつのまにかこの家に帰ってくると落ち着くようになってる自分に、
なんとなく苦笑したくなって。

ここに居ることでさえ不思議なのに。

ああもう、滅茶苦茶…。



帰ってきたら、夜はそれなりに遅かったけど。

新年だし凄いだろうなーなんてメール開いてみたら、
それはそれは凄い量で。

そして、気付いた。

同じ人から、何通も来てる。

送信者名で、すぐ分かる。



「……シュウ」



ぼーっと、一通ずつメールを開き始めた。


『旅行スペインだってな。向こうで年越すのか?
 俺は日本から出たことないから…ましてや年越しなんて考えられないな。
 は日本で過ごしたいって言ってたけど、いい経験だと思うぞ。
 楽しんで来いよ。あ、もう出かけた後かな?
 それじゃ、読むときに備えて…お帰りなさい』

『そうそう、今日部活帰りに、一緒に歩いてるカップルが沢山居たんだ。
 そういえばクリスマスイブだな、と再認識させられたよ。
 なんか、独りでいる俺は寂しかったよ。仕方のないことだけど。
 今年も一人身か、なんて自分に苦笑したよ。
 テニス部で集まってドンちゃん騒ぎしたんだけどな。
 出来れば、と一緒に過ごしたかったなって。』
 
『メリークリスマス。もう今頃はスペインにいるのかな。
 スペインって時差はあるのか?体調には気をつけろよ。
 こっちはイルミネーションが綺麗だよ。ドイツやスペインはどうなんだろな。
 街の広場に、大きなクリスマスツリーが毎年飾られるの、知ってるか?
 今年も綺麗だったよ。出来れば、二人で見たかった、なんて前から思ってたんだけど。
 とりあえず、メリークリスマス。読む頃には過ぎてると思うけど。』

『返事来ないって分かってるのに…なんで送ってるんだろうな、俺。
 一時帰国、3月だよな?あと3ヶ月か。今までが5ヶ月だから、それよりは短いな。
 付き合い始めてからの3ヶ月は、あんなに早かったのにな。
 これからも3ヶ月は…やっぱり長く感じそうだ。』

『こっちは今夜中の11時半ってところだ。あと30分足らずで…来年だな。
 そっちではもう少しかかるんだろうけどな。
 新年になったら最初にの声聞きたいって思ってたけど…やっぱり無理かな。
 とりあえず、年明けたらまたメールしておくから。なんか、無意味な気もするけどな。
 それじゃあ、これが今年最後のメールということで。』

『明けましておめでとう。いよいよ2003年。
 今年もお互いにとっていい年になりますように。
 早く会える日を楽しみにしているよ。これからも、末永く宜しくな。』

『そろそろ帰ってくるかな? 夜遅いっていってたから…まだかな。
 今日初詣に行ってきたよ。結局、英二と一緒に行った。
 英二も、「が一緒だったら良かったのにね」って言ってたぞ。
 俺も、それを願ってたけど…。少し残念だな。
 着物姿とか、少し期待してたんだけど。夏祭りで浴衣を見る夢も破れたし。
 そっちは正月って、どうなんだろうな。
 アメリカはクリスマスのほうが盛大だって聞いたけど。
 それじゃあ、俺はそろそろ寝るから。目が覚める頃には、きっと帰ってるだろうな。
 旅行って、意外と疲れが溜まるから、ゆっくり休めよ。
 それじゃあ…。大好きだよ、。』



「………」


画面を見たまま、暫く固まっていた。

向こうも、同じ気持ちでいてくれたんだ。

でも一緒に居られないなんて、悔しかった。


でも、でも……。



「あたしも、好きだよ…」



ポソリと呟いた。

画面越しになんて、伝わらないと分かってるけど。


気持ちが溢れてくる。


向こうも同じ気持ちでいてくれた。

同じように、求めてくれた。

嬉しい。嬉しいよ。

でも、なんか悔しいな…。



「ん〜……」



でもでも、ま、いいさ!

その分、再会のときが幸せになるんだから!

ちょっと淋しいのは、ガマンガマン。


「よーっし…頑張るぞ!」


ズバーっと書きたいこと書いて返事出したかったけど、
ゆっくり休めって言われたし。

とりあえず、言いたいことを短く且つ簡潔に。



「…ほれ送信っと」


ボタンを押して、なれた動作で電源を消した。





なんだか、自分は少し強くなれた気がするんだ。

強がってる気も自分でするけど…でも、きっと大丈夫。

頑張るから。

同じ気持ちである限り、頑張れる。

淋しいのは、私だけじゃないから。


「お互い、頑張りましょう!」


そう呟いて、私は寝る支度をした。


さっきメールで送信した言葉を、頭の中で復唱しながら。




  ただいま。メリクリ。あけおめ。ことよろ。

                       大好き。






















なんか、徒然なるままに思ったことをつらつら書いてたら意味不明な文になった。
詰め込みすぎ?やっぱテーマ絞らなきゃな。

クリスマスもお正月も忙しいもんでこのシリーズ書けなかった。
悔しいからこんな小説で足掻いてみた。
筋通すために旅行に行かせた。
はっきりいって、現実75%込み。
(大石からのメールなんて友達のメール見ながら書いたよ)
(でも100%現実じゃないですよ/当たり前じゃ)
大石って顔文字使わないと思うんだ。
だから使わなかった。必死よ。(使うのに慣れてるから)
そういう細かいことに手を回してる暇があったらしっかりとしたのを書け状態。

とりあえず、そんな感じ。
貴方と同じ気持ちなら強くなれる、そんな歌があったようなないような。(こら)
題名のtogetherは、一緒に居たこと、一緒の気持ち、また逢えること、
とかその辺を…混ぜてね。うん。


2003/01/03