* heart of birthday *












「おチビちゃん、知ってる?」
「…何がっスか?」

部活が始まる前、やけに嬉しそうに近付いてきたその人。
突然何がかも分からず問い掛けられたの、質問を質問で返す。
すると、向こうはまた嬉しそうな声で。

「えっへへ〜、今日はね、オレとおチビちゃんの真ん中バースデーなんだよ!」
「真ん中…バースデー?」

聞いたけれどやはり意味が分からなくて、俺は首を傾けた。
すると、えへんと得意げな顔をして言ってきた。

「あのね、オレの誕生日と、おチビちゃんの誕生日を合わせると、
 丁度今日になるんだよ!」
「あ〜…」

そういえば、二週間ほど前に誕生日誕生日、と菊丸先輩が騒いでいたのを思い出した。
確か…28日。それから逆算していくと…確かに、真ん中は今日、11日。

「というわけで、今日はオレとおチビの特別な日!イエー!!」
「……残念っスね」
「へ?」

菊丸先輩がやけに嬉しそうにはしゃぎ回るもんだから、
ちょっと悪戯したくなって、オレは言った。

「オレと先輩は2歳違いでしょ。だから、真ん中にするんだったら
 一年後にしなくちゃ」
「あ、確かにそうだね!……え;?えぇっ!?
 ちょ、ちょっと待ってよ、オレが生まれたのが…あれ〜???」

指を折々悩んでいる菊丸先輩を背中にして、
俺は帽子のつばに手を掛けて言った。

「……まだまだだね」
「んにゃ、ちょっと待てよ!おチビー!!!」

実は、真ん中の誕生日なんて考えていてくれたこと、
とても嬉しかったのだけれど。
平坦な日でも、君が祝ってくれれば特別になる。そんなものだ。

ちょっとした冗談のつもりが、まだ悩んでいる菊丸先輩。
本当に、面白い。
そして、可愛い…なんて思ってしまったんだ。
仮にも、二つ年上の相手に。

「ちょっと待てよ、ここは冷静になろう!オレが生まれた年から計算して
 1年と13日…ん?おチビってば生まれてないじゃん!
 でも、今日はそれから15年経って、おチビはもうすぐ13歳…ああもうややこしい!!」

頭を掻き毟る先輩に、俺は思わず噴き出した。

「笑うにゃ〜おチビのくせに!!」
「だって、先輩面白すぎ」
「お、おチビが変なこというから一生懸命考えてんじゃん!」

頬をぷくうと膨らまして言う。
それがまた、可愛く見えて。

「…さっきのはからかっただけっスよ。今日が真ん中であってますよ」
「あ、良かった〜……。ってことは騙したにゃ!?コラー!!」

胸を撫で下ろすた直後にはっとした表情になる先輩。
俺は、反射的にその場を駆け出した。
予想通り、追ってくる先輩。


ちょっかいを出せば、君は必ず食いついてくるから。
追いかけてきてくれるから。
好きなことほど、苛めたくなるっていう気持ち。

そんな、子供じみた思考。


後ろをチラッと振り返り、必死な顔して追いかけてくるその人。
その様子をみるだけで、嬉しくなってしまう自分。

実際、お互い子供なんだ。
だから、構わない。
大切なのは、相手を想うキモチ。
子供だって子供なりに、自分の気持ちを表現したりする。


「よっと」
「わっ!!」

突然止まるって、くるりと先輩の方を向いた。
向こうは反応が追い付かなかったのか、そのまま衝突される。
その勢いで俺の被っていた帽子が地面に落ちる。
そのまま、二人地面に転がり込む。
俺の上に、先輩が伸し掛かっている状態。

「突然止まるにゃよ!」
「先輩、捕まえた」
「…追ってたのってオレ、だよね?」

その状態のまま文句をいってくる先輩の腕を、俺は掴んだ。
先輩は、一瞬固まって、自分の今までしていたことを思い返しているようだった。

頭の回りをハテナが回っているのが見えそうな菊丸先輩。
俺は、左腕を掴む手に力を入れた。
右腕を掴む手は離して、肩に。
そして、腹筋を使って少し体を起こした。
もちろん、菊丸先輩を掴んでいた腕はそのままで。


『…チュッ』

「!?」


腕の力を緩めた瞬間、菊丸先輩はぴょんと俺から遠退いた。
そして、口元に手を当て、随分と焦った表情。

「お、おチビ、今何っ…!」
「真ん中バースデープレゼント」
「ちょっと待ってよ!!」

真ん中なんだから、二人同時に受け取れるプレゼントがいいよね、
なんて考えている自分に微笑する。

「それとも…嫌だった?」
「…嫌じゃ、にゃい……」

そういって頬を染める菊丸先輩が、また可愛く思えた。


大事な人の肩越しに見える青い空。

いつも以上に、清々しく感じられた。



12月11日は、真ん中バースデー。

それ以上に、今日は二人にとって特別な日になる、そんな気がした。






















リョ菊真ん中バースデー記念ということで書かせていただきました!
部活仲間から恋人?な関係になるときのお話ですね。
やはりリョ菊はほのぼのが好き。

部活はいつ始まるんだとか、
周りに人は居なかったのかとか。
突っ込みたいところ満載でしょうがあえて触れない方向でv(こら)

heartは、心とかの他に中心という意味があった気がしたので、
微妙に絡めて題名に使ってみました。意味通じるか不明。(ダメじゃん)

というわけで、年下攻×菊丸祭U様にv
ヘボ作品ですけど受け取ってやってくださいませ〜><


2002/12/10