* ストーカー規制法 *












「海堂!次体育だろ、一緒に行こうぜ!」
「…好きにしろ」


…どうってことない日常の一ページである。

ケンカしつつも両想い、な桃城と海堂。
そんな二人を、影から見ている男がいた。


「……」

「(マズイ…これは非常にまずい展開だ!)」

そう、その男というのは…
3年11組乾貞治15歳♂。

何を隠そう、彼は後輩の海堂薫にぞっこんである。

「(俺のマイハニーキューティー薫が桃城の手に渡ろうとしている!
 それとももう渡っているのか…?いやいや、それはあってはいけない!
 何があっても絶・対・阻・止!
 よっしゃ〜今日から桃城に飲ませる最高の汁を用意しなくては…。
 それともそれとも、海堂に飲ませる惚れ薬を作った方がいいか…ふふふ)」

…乾は、青学テニス部一のデータマンである。
しかし、データ収集がいき過ぎて
ちょっとストーカー紛いな日々…。
それはさておき。

乾は、二人の後をこっそり着けた。
そして、盗み聞き…。


「今日はマット運動だったよな。やってらんねぇ〜な。
 やっぱよぅ、男ならビシっと球技だよな!」
「…てめぇができねえだけじゃねぇのか」
「あっ!言ったな!!言っとくけどオレの前転はプロ級だぜ!?」
「……フシュ〜…」
「なんだ、その軽蔑の目は!!」


そんな会話を聞いて、震えてる男が一人…。

「……!……!」

無論、3年11組乾貞治以下略、である。


「(マっズ〜イ!!!)」

乾は心の中でひたすら叫んでいた。
更に一人謎なポーズを取り悶え苦しみ始めた。

「(マット運動といえば…それはそれはハレンチなスポーツ!
 逆立ちの補助をする際にハーフパンツの中が見えてしまったり、
 前転をすると背中が捲れ上がったり、側転をする度に横っ腹が見えたり!
 そんなものを…桃城に見せるわけにはいかない!否、
 薫にやらせるわけにはいかない!! 大体なんだ、マット運動とは!
 薄暗い体育倉庫の中にしまわれているあのマット…何に使われているか分からんぞ(←!?)
 そんなものに…薫を触れさせるかっ!!)」

乾はシャカシャカとノートにペンを走らせた後に、
くるりとエンピツを回し胸ポケットにしまった。
そして、乾は決心した。

「(何があっても海堂に体育をやらせない!
 そのためには…まず先輩の特権を利用し呼び出し、
 そしてトイレの個室に連れ込み…ふふふ)」

「何してるの?」
「!?!?」

乾が拳に力を込め今度の展開を計算していると、
背後から不意に声が掛かった。
その声の主は…。

「不二!」
「やあ、乾」

不二は、乾にとっても苦手な相手であった。
何故なら、色々と勘が鋭いのである。
乾が海堂にゾッコンということも、不二にはバレバレであった。
(他の者にはばれそうで意外と気付かれていない)

「こんなところで何をしてたんだい?」
「いや、ちょっと、データを…」
「何のデータ、海堂くんの?(にっこり)」
「そういうわけではない…」

乾はすっと眼鏡を左手の人差し指で上げた。
すると不二の一言。

「嘘だね」
「な、何故!?」
「乾が左手で眼鏡を上げる時は、心に迷いがあるときだ!」
「な、何ぃ〜!?」

データマン乾、一生の不覚である。
データマンというものは、人のデータばかり集めすぎて
意外と自分のことには気付かないものなのだ。

「さ、乾!3年11組、次は数学だったよね!」
「不二…お前もなかなかのデータマンだな…」
「いいからいいから、さ!」

不二は乾の腕を掴むと、教室まで強制的に連行したのだった。



――そして乾授業中。

「(ああっ!今頃海堂があのマットレスで華麗なる美脚を伸ばし
 開脚前転をしていると思うと!さてはてブリッジなんてしていたら…
 くおぉぉぉぉっ!!)」

…一人悶え苦しんでいた。



授業終了後、乾がトイレから出てくると、
そこには不二の姿があった。

「やあ、乾。随分と長かったね」
「…気のせいだろ」
「ま、それは別にいいんだけど。ねえ乾、
 最近桃と海堂って仲良いと思わない?」
「そう!そうなんだ不二!気付いたか…さすがお前だな。
 俺は…何とかあれを阻止しなければ…っ?」

そこまで叫んで、乾は気付いた。

「(ま、またこいつに弱みを握られる……!)」

しかし、気付いたときは遅かった。

「乾、また邪魔しようとしてるんだね…」
「(しまったぁー!!!)」

データマン乾、意外と学習能力がない。
しかし、乾は負けなかった。

「まあ、お前には関係ないだろう。俺が何しようと」
「いや、これが関係あるんだよね…」
「なに!?」
「実は海堂くんに相談されてるんだ。『最近乾先輩に
 ストーキングされてるような気がして怖い』ってね」
「な、なんだと!?」

乾貞治人生ベスト3といっても過言ではない大ショック。

「そ、そそそれは本当か!?」
「いや、嘘」

不二の飄々とした笑顔に怒る気も失せた。
というか、嘘だということが純粋に嬉しかったりした。

「でも乾、本当に度が過ぎるとまずいよ。
 ストーカー規制法に引っ掛かるよ」

そういうと、不二はクスクスと笑いながらどこかに消えた。

「(やはり…あいつは苦手だ)」

乾は、“危険”という文字をデータノートの不二の欄に書き加えた。
そして、別の『海堂薫専用』というノートを取り出すと、
パラパラとページをめくった。

「(次の授業は…国語か。まあ、問題無さそうだな)」

こうして乾は安心して教室へ帰るのだった。




 **




時は流れて昼休み。
乾は、自分の弁当も忘れて2年の教室へ向かっていた。


「今日の弁当…、いなり寿司、唐揚げ、ポテトサラダ、
 キャロットのグラッセ、玉子焼きカッコ砂糖少な目…ふんふん」

乾は、またこっそりとデータノートにシャカシャカと書き込んでいた。
すると、また背後から声。

「またやってるの?」
「!?」

もう、乾は恐怖でならなかった。

「お前…またか!!」
「うん。悪い?」
「……好きにしろ」
「やったv」

断る言い訳が思いつかなかったのと、
敵に回してはマズイ、と思い乾は了承をせざるを得なかった。
もうほとんどばれているので、
これ以上は墓穴を掘ってはまずいと思ったのだ。

しかし、横にピッタリと張り付かれるとデータとは取り辛いもの。

「……不二」
「なに?」
「少し、離れてくれないか…」
「どこに居ようと僕の勝手でしょ?」
「ぐっ…」

このままでは、いつまでたっても状況は変わらない!
乾は弱みのネタを揺すられるのを覚悟で、
意を決して不二に訊いてみた。

「不二、どうしてお前はそんなに俺に構うんだ?」
「…知りたい?」
「う、まあ…」

不二の笑みが気になったが、乾は肯定の返事を出した。
すると、不二は乾を壁際に追い詰め、
爪先立ちになり身長差を少しでも減らし顔を近づけ、言った。

「僕、乾のこと好きだからさ」
「!?」
「桃と海堂がくっ付いてるのは好都合だし、君の傍に居たいし…ね?」
「………」

もはや、乾の口から出る言葉は無し。
 
「じゃあ、早速体育倉庫にでも行ってこない?
 一時間目に海堂くんが使ったマットの上で…さ」
「おい、不二!ちょっと待てー!!!」

不二に襟首を掴まれ、乾はずるずると引き摺られて言った…。
乾が必死の抵抗を見せていると、視界に入ったのは
2年7組に入っていく桃城の姿。
そして、微かに聞こえた二人の会話。

「海堂〜、一緒に弁当食おうぜっ!
 お、そのエビフライ美味そうじゃん!」
「…食うか?」
「え、マジでいいの?いっただっきまぁ〜す♪」
「………」
「……」
「…」
「」

「お、おのれ桃城めぇぇっ!!」
「乾、他人のこと構ってる場合じゃないよv」
「あああああ…」
「それじゃ、僕たちも楽しんでこようねv」
「うあああああ!!!」



 〜ストーキングとは罪であり、
  そのような行為を行ったものは
  厳しく罰せられるべきである〜






















ごめんなさいっ!(大土下座)
えー…7777HITリクの桃×海←乾←不二、でした。
ギャグ風味希望な雰囲気だったのでギャグにしたら…
乾さん変態過ぎ。(号泣) 不二もなんか間違ってるし。
純粋なファンの方、本っ当に申し訳ございません!!

でも結構楽しかった…。(コラ)
こっそり下品な発言がありましたがさらっと流そう。(待てぃ)

こ、こんなんで良かったでしょうか?(滝汗)
長々と待たせた挙げ句こんなもの…どうも失礼いたしました;たはー;;


2002/12/02