* 一人の力 *












「石田」
「橘さん…」

青学との試合の後のこと。
俺は橘さんに呼ばれて他の部員のいないほうへ連れて行かれた。
言われることの、予想は大体ついていた。
というか、それしかない。
俺は、言われる前に自分から頭を下げた。

「すみませんでした!」
「……」

全ては、あの瞬間。
俺は波動球を打った。
力を全て込めた、フラットショット。
腕にも負担が掛かる分、その打球を今まで返せた者は今までには
全くといっていいほどいない。
自分の腕が犠牲になっても、とにかく勝ちたかった。
勝利をお土産にして、帰りたかった。
全国に、必ず行くと誓ったから。

しかし、俺の打球を返せるものが、いた。
俺は少しむきになっていたのかもしれない。
もう一度、波動球を放とうとした。
他の部員の声も聞こえた。
それでも、どうしても勝ちたかったんだ。

「…石田」
「はい」

声を掛けられて、俺は少し顔をあげ、橘さんの顔を見た。
やはり怒っているのか、眉間に皺を寄せて険しい表情をしていた。
暫く目を合わせていると、橘さんは呟くような調子で喋り始めた。

「俺が前に“波動球はもう打つな”と言ったのを憶えているか」
「はい」
「お前がどうしてもというから、一回きり使っていいと、俺は言ったんだ」
「はい」
「でも、お前はどうした」
「………」

俺は、返事に詰まった。
言い訳など、ない。
あの時の俺は自分を失っていた。

「本当にすみませんでした!」

俺は一度上げた頭をまた深々と下げた。
そのまま暫くそうしていた。
すると、橘さんは息をふう、と吐くと、
落ち着いた声で言ってきた。

「石田、顔を上げろ」
「…」
「俺は、別にお前を咎めるつもりはないんだ」
「……」
「お前の勝ちたいという気持ち、よく分かった。
 棄権勝ちだったとはいえ、あれはお前の気持ちがあってこそだった、
 と俺は思っている」
「…はい」

俺は、なんともやるせない気持ちで地面を見た。
遠くからは歓声が聞こえる。

頭上から、低い声が聞こえる。

「一人でも欠けたら、意味が無いんだぞ」
「…はい」
「うちの部は…人数がギリギリだ。一人でも欠けたら、それまで」
「―――」
「もし、勝ったとしても、次の大会に出れなくては意味が無い」

橘さんは、一回目を閉じると、笑顔になって言った。

「自分の体を大切にしろよ。全国に、行くためにも」
「はい!」

橘さんと俺はみんなのところに戻った。
すると、橘さんは拳を掲げると、言った。

「まだ終わりじゃない。次の大会こそは、必ず勝ち上がるぞ。
 この、七人で」
「「はい!」」

俺たち二年全員も、同じように拳を掲げた。
必ず、勝ち取る。
そのためには、自分も大切にしなくてはいけない、ということが強く分かった。
ギリギリの人数しかいない俺たち。
どうあがいても、自分はメンバーの一人なのだから。
確かに勝つことも大切だ。
でも、負けたとしてもカバーしてくれる仲間がいる。

「石田」
「――」
「頑張ろうな」
「はい!」

橘さんにもう一度言われて、俺は笑い返した。
頭上には、見渡す限りの青空。

必ず、全国に行く。
この七人で…。
























よくわからん話になってた。
頭の中では纏まってたのに。
書くと崩れる。あいたた。

石田のBDで書いたよ。愛は少ないけどゴメンネ。(こら)


2002/11/30