* Go on one's last journey *












「じゃあ英二、僕はもう行くから」

不二がいつもの笑顔でいった。

「待って…待ってよ不二!」

オレは必死に不二にすがり付いた。
でも、不二はその腕をそっとほどくと、背中を向けた。
そして、首だけ振り返らせると、肩越しに言った。

「大丈夫だよ。すぐに大石が来るから」

自然な笑顔だった。
不二がポーカーフェイスって事もあるかもしれない。
でも、少なくともオレには無理な笑いをしてる風には見えなかった。
だから、余計悲しくなった。

「ヤダよ…不二…。大石が来ても、不二がいなくなったら…っ!」

それ以降は、涙が流れてきて言えなかった。
すると、不二がオレの肩に手を乗せた。
目の前は霞んでしまってはっきりは見えなかったけど、
やっぱり笑顔だった気がする。

「僕がいなくなっても、大石と元気にやるんだよ」

オレは何も言えなかったけど、とりあえず首を横に大きく振った。
だって、不二がいなくなることなんて考えられなかったから…。
でも、数秒後には肩に乗せられた手が下ろされた。
それで、不二の口から一言聞こえた。


『サヨナラ』


涙も振り切って、大きく目を開けた。
でも、不二は濃い霧の中、もう二度とこっちに振り返ることのないまま、
そのまま走って行ってしまった。

「……っ…不二ぃぃぃぃぃ!!!」

走っていった方向に、思いっきり大きな声で叫んだ。
でも、やっぱり不二は帰ってこなかった。
さっきより、もっと涙が溢れた。
くしゃくしゃになった顔のまま、オレは思わずそこに座り込んだ。

「どう…してっ…!」

辛かった。
どうして、こんなことになってしまったのか。
わからない。
考えることさえも出来ない。
この霧のように、オレの頭も心も霞んでしまっていた気がして――。
その時、さっき不二が走っていったほうから、人の気配がした。
そして、声が聞こえた。

「英二っ!」
「―――」


大石だった。

「英二!大丈夫か!?」

大石は、オレの肩を両側からつかんだ。
頭の中がグルグルしてて何も考えられなかった。

「おおいし…。ふじ…ふじが……」

物凄い涙声だった。
それは自分でもわかってた。
でも、溢れてくる涙を止めることなんて、不可能だった。

「英二…!」

大石に、ぎゅっと強く抱き締められた。
大石も、泣いてた気がした。

「大石……」

オレも、大石の背中を強く抱いた。
でも、そうしたところでどうなるわけでもなく。
ただただ2人で、居なくなってしまった者の事を悔やむだけだった。




全員が、幸せになるなんて不可能で。
出来ることは、残ったものの中で幸せを紡ぐこと。
結果的には誰もが不幸になってしまったなんて、
そんな結末にはならないように――――――。






















いろいろとあって夢を見た。
もったいないので小説にしてみた。(何)
不二が何処に消えたのかと、大石が何処からきたのかは謎。
不二が行かなかったら、大石も来なかったのか?
冷静に考えると摩訶不思議な夢だ。なんか怖いね。
題名は英語で気に入ったフレーズがあったので使用。
意味は、“帰らぬ旅に出る”。
私的に気に入ってたり。結構あってません?


2002/06/18