今日のオレはいい気分!
今日は、いい日だから。
今日は、特別な日だから。

学校でも、なんかいいことがありそうな気がするんだっ!










  * ハッピーバースデー! *












「おっはよ〜不二!」
「うん」
「……?」

なに、その態度は。
“おはよう”に対して、“うん”?
…なんか変なの…。

「不二、何かあったの?」
「うるさい英二、今集中してるからあっち行って」
「う……」

ひ、ひどい。
ひどすぎるにゃっ!
いくらなんでもあっち行ってなんて…。

………ん?

「あー!数学の宿題!!」
「だから僕今やってるんだって」
「すっかり忘れてた!あ、一時間目じゃん!不二お願い、写させて〜」
「ダメ。自分の力でやらなきゃ力にならないよ」
「ぶ〜っ……」

にゃ、にゃんで!?
いつもは見せてくれるのに…。

……他のクラスの人で同じところ宿題の人いるかも!
よし、乾に聞きに行こう。
乾なら絶対全問正解だしっ!

「不二の意地悪!オレ乾に聞きに行くもんね!」
「そう……」
「…ベーっだ!!」

なんなんだよ、不二。
いつもと…全然違う。
なんであんなに意地悪なの!?
確かにさ、よく不二は俺にいじわるなことするけど、
こういういじわるの仕方したことないもん!

…オレ何かしたかな……。
覚えが無い…。




  **



お、11組発見。乾の席は…と。
あ、廊下側じゃん。窓から話せるね。

「いーぬい♪」
「ん?………なんだ、菊丸か」
「な、なんだってにゃんだよ!」

今日はみんなしてなんなワケ!?
…イジメ?新しい苛めの方法!?

「ねぇ乾、もしかしてオレ苛められてるの?」
「…普通苛めてるやつにそう聞かれて“はい、そうです”とは言わないだろ」
「じゃあ苛められてるんだ」
「…そういうわけじゃあないけど」

……じゃあなんなのさ。
オレのことからかって遊んでるの?
…オレ昔からよくからかわれるからにゃ…。

「もういいや。乾、バイバイ」
「ああ」

…ホントに引き止めてくれないし。
やっぱり、何かある?
……にゃんだよ〜。



随分と時間を食っちゃったにゃ。
ここから一番近いのは…タカさんのとこか。
タカさんはオレのことからかったりするようなやつじゃないし。

「……あ、居た!おーい、タカさ〜ん!!!」

オレは窓際に居るタカさんに手を振ったけど…

「…あれ?」

気付いてもらえない。
にゃんで!?

「タカさぁ〜ん!!!」

思いっきり大声で叫んで、
ぶんぶんと手を振り回した。
でも……にゃんで気付かないの!?


……あ。

横に居たやつが、
タカさんの肩を突付いてからオレの方を指差した。
これで気付いてくれる…。

「………」

目が合った。
逸らされた。
会話を始めた。

「にゃんでぇ〜!?」

がっくし…タカさんまで〜?
なんか作戦?
なんの…なんのだよ!

…泣くかも。


『キーンコーンカーンコーン…』

「げぇ…マジ?」

宿題は諦めか…トホホ。
折角…今日はいいことありそうな気がしてたのに。
今日は……。




  **




四時間授業を終えて、漸くお弁当の時間。
オレは、お弁当の準備をしながら言った。

「あ〜あ!今日の授業はろくなことが無いにゃ!」

だって、本当にそうなんだ。
数学は宿題やってこないから怒られるし、
英語は苦手なのに沢山当てられるし。
理科の小テストはわかんないし。
せめて体育があれば良いのに…今日はないし。

「いいこと無いにゃ〜…」
「普段の行いが悪いんじゃない?」
「そんなことにゃいもん!」
「ホントに?」
「う……」

ついでにも一つ、みんなが意地悪だし。

…そうだ!
大石なら、大石ならちゃんと優しくしてくれるかも!

「不二、オレ今日は大石と食べるから!」
「あ、そうなの…分かった」
「それじゃあね〜」

…やっぱり引き止めてくれない。
せめてさ、理由を訊くとか…。
……にゃんか切にゃい。


「…あ、居た居た!大石っ!」
「英二」

ああ、いつもの笑顔だ…。
良かった!
やっぱり、大石だけだにゃ!
オレにちゃんと優しくしてくれるのは!

「大石〜オレ大石のこと大好きだにゃ〜」
「こら英二、学校では止めろ」
「あぅっ」

抱きついたけど、べりんと剥がされた。
ま、これぐらいは仕方がないことなんだけど。

「ね、大石。一緒にお弁当食べよ!」
「え?お弁当…えっと、今日は…う〜んと…。そうだ、
 手塚と今日の練習メニュー決めなきゃいけないから!」
「え、そうなの〜?」
「ごめんな〜」

…行っちゃった。
仕方ないよね、大石は副部長の仕事で忙しいんだ…。
仕方にゃいよ……。

「…あ、手塚!」
「ん?」

手塚は廊下を呑気に歩いてる。
いや、呑気っていってもきびきび動いてはいるんだけど。
でも…大石は?

「手塚」
「……なんだ」
「大石とメニュー決めるんじゃないの?」
「メニュー?…知らん」
「えぇ?」

どういうことだよ…。
大石が、オレに嘘吐いた!?
そ、そんなこと絶対にゃいもん!
でも…今日はみんな可笑しいし……。う〜……。

「手塚が、忘れてたんじゃなくて?」
「…いや」
「え〜……ま、いいや。そうだ!
 ね、手塚。オレ一緒に弁当食べる人居ないから一緒に食べよ!」
「!」

にゃ、にゃに、その固い表情は…。
って元からだっけ?
それはいいんだけど…にゃんか嫌そう。

「…なに、嫌なの?」
「いや、その……用事があるんだ」
「……あっそ」

はっきりいって、オレはその言葉を信じていなかった。
用事があるとかいって、そんな抽象的な表現、
手塚は普段あんまりしないもん…。

やっぱり、何かある?
みんなで何かしてるの…?

「手塚、…嘘吐いてない?」
「…用事があるから、じゃあな」
「ちょっと、答えてけよ!」
「あんまりしつこいとグラウンド50周だぞ」
「あ、ずるい!酷いにゃ!横暴だにゃ!職権乱用だにゃ!!」

…ムシ。
ああそうですか。
妙なほどにきびきびとした動きでどっかいった。
…変なの。

……にゃんか今日のオレめちゃくちゃ淋しい人じゃない!?
うぅ〜…どうしてだよぉ〜…。

「…そうだ!1・2年の教室もいってみよう!」

そうだ、それがいい。

桃とか、オレ手塚とかより仲いい気もするし〜。
へぇ〜んだ。

……オレいじけてないからな。




  **




2年の教室へ向かう途中、
桃が購買部で大量にパンを抱えて歩いてるのが見えた。
隣には、越前もいる。

「桃、お〜チビ!」
「あ、エージ先輩!」

うん、いつも通りの桃だ。良かった良かった。

「相変わらず凄い量だね〜」
「へへっ、家の弁当だけじゃ足らなくって…あ、
 エージ先輩も一つ食べます?」
「桃先輩!」

普段はあんまり喋らない越前が
少し声を張り上げた。
にゃんか珍しい…。

「あ……やっぱり、あげないっス。
 自分の物はぁ〜自分で買う。うんうん」
「いや、オレ自分の弁当持ってるからいいんだけど…。
 で、一緒にどっかで食べない?」

今突然桃の態度が変わらなかった?
気のせい…?

「エージ先輩、これが残念ながらこれからオレと越前は
 二人で愛を深める予定なんで」
「別に深めないし」
「だぁ〜!いいから黙って話し合わせとけよ!!」

…話を合わせる?
ま、とにかくオレは仲間に入れてもらえないわけね…。

「それじゃあいいよ。二人とも仲良くね〜」
「はい、さよならっス!」

……にゃんだ、あの二人…。
らぶらぶにゃの?いつの間に???



「あ〜あ。もう昼休み半分終わっちゃったよ。
 教室戻って食べるか。ちぇっ……ん?」

あそこにいるのは、海堂じゃん!
海堂は、なんだかんだいって結構優しいから。

「か〜いどっ!」
「! ……っス」
「ね、ここでおべんと食べてもいい?」
「っス」
「…元気?」
「っス」
「話、聞いてる?」
「っス」
「……本当は聞いてないでしょ」
「っス」
「!!!」

にゃんだよ、みんなしてオレのこと馬鹿にしてんのか!?

「もういい、海堂の意地悪〜!!」
「っス」

…いじけてやる。
一体全体なんなんだぁ〜!!!


結局、オレは弁当を一人で教室で食べた。
今日は、いいことあると思ったのに…。

「…ちぇっ」





  **





午後の授業も終えて、もうすぐホームルーム。

「は〜ぁ」

この溜め息は、別に授業の意味がわかんなかったとか、そんなんじゃなくて。
…それもちょっとはあるケド。

なんか、部活行くの憂鬱。
みんながまだこの様子だったら…オレ本気で泣くし。

…そうだ、オレまだ理由を誰にも訊いてないじゃん!
部活に言ってもこの様子だったら、誰かに訊こう!そうしよう!
絶対…何かあるもん。


「きりーつ、きょーつけ、れい」
「「さようなら〜」」

ホームルーム終了!
今日は掃除もないし。

「よっしゃ〜!気合入れて部活だー!!」
「英二」
「はにゃ?」
「竜崎先生が、用事があるから職員室に来てくれって」
「分かった」

…にゃんだろ?
怒られるようなことした憶えは、ない。
だからといって特別褒められる憶えも、ない。
……ま、いっか。




  **




「失礼しまーす。竜崎センセー!」
「おや、菊丸じゃないか。どうしたんだい」
「え、えっと…先生に呼ばれたって聞いて来たんですケド…」
「……いや、私は呼んだ憶えは無いよ」
「えぇ〜!?」

もしかして…これも作戦のうち!?
なんだよなんだよなんだよ!?

「せんせ〜…」
「ん?」
「オレ、みんなに苛められてるかも…」
「ん?突然どうしたんだ、お前らしくも無い」

だって…これは絶対苛めだ!
テニス部全員でオレをはめて、退部に追いやるつもりだ!
くっそぉ〜、オレ絶対やめねーぞ!
大石と全国目指すんだ!

……大石にも嫌われてたら?


「うわ〜!!!」
「ちょ、ちょっと落ち着きな!
 …落ち着くために、あと15分ぐらいここにいるといい」
「は、はぁ…」

何故に15分?
ま、いいや。
なんか、部活行きたくないし…。

「せんせ〜」
「なんだい」
「オレ今日部活行きたくない」
「おやおや珍しいねえ、お前が部活嫌だなんて」
「だって……」

どうしよう、苛めとかいったらオレ生きてけない。
自殺したくなるって気持ちも分かるにゃ〜。

「う〜…」
「ま、いいから部活に出てごらんよ。
 何かいいことあるかもしれないだろう?」
「…無さそう」
「いいから、ほれ、そろそろ時間だ。
 帰るんじゃないよ!絶対部室へ行くんだよ」
「はぁ〜い…」

あ〜あ…やる気でない…。

とぼとぼ歩くと、廊下が取っても長く感じる。
…あれ?
あそこにいるのって一年生三人組?

「にゃにしてるの?」
「あ、菊丸先輩!」

見てみると、部活道具持ってないし、
帰る気満々って感じ…。

「部活…行かないの?」
「いや、おれも出たかったんスけど部室は狭いし
 レギュラーだけでやるって…」
「堀尾くん!!」
「しまった、そうだった!それじゃ、菊丸先輩
 部活頑張ってくださいね!それじゃ!」
「あ、ちょっと…」

一年生たちは、ドタバタ走っていった…。
…なに?
部室が狭い?レギュラーだけで…なにをやるの?
ん〜〜〜???


「もう一体なんなんだよ〜」

今日は一日中訳の分からないことばかり。
あ〜あ、やる気起きないな〜。
でも竜崎先生に絶対部活出ろって言われたし…ん?
絶対部活出ろなんて言われた?
絶対“部室に行け”って言われなかった……?

「どういうこと…」

『ガチャ…』


 
 「「ハッピーバースデー!!!」」



「……ほえ?」


頭の中真っ白。
ん?
ちょっと待って…。
冷静になろう。

今、竜崎先生に言われて部室へ来て。
ドア開けて。
その瞬間クラッカーと同時にみんなの声。

そして、辺りは豪華な飾り付け。


「え、えぇぇ、えぇ〜!?!?」
「あ、驚いてる驚いてる」
「作戦成功だな」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!!」

これは、どういうこと!?

「エージ先輩、誕生日おめでとうっス!」
「おめでとう、英二」
「みんな、覚えてて…くれたんだ」
「当然っスよ」

本当に…本当に?
……嬉しい。

「やれやれ、どうやら上手くいったみたいだね」
「竜崎先生!」
「何度か口を滑らせそうになったよ」
「先生もグルだったんですか〜!?」
「グルといえば、この部のやつら全員だな」
「そ、そうだったんだ…」

そんな訳があったのか。
にゃーんだ。悩んで損しちゃった。

「みんな、有り難う!
 今日は最高の誕生日だにゃ!」
「その笑顔が見れると、俺たちもここまで
 やったかいがあるってもんだな」
「えへへ♪」

やっぱ、こうでなくっちゃ。
青学テニス部は。
みんな仲良くて、楽しくて、温かい。


「オレ、幸せ者だ!」


やっぱり、思ったとおり、
今日はとってもいいこと、あった。
だって、特別な日だから。


「それじゃ、最後にもう一回」



 Happy birthday to you...!
























英二さんお誕生日記念小説!
いやぁ…どこかに絶対ありそうなネタだ。(禁句)
カップリングは基本的に無しで健全意識したけど、
さり気なく大菊くさかったり桃リョ?だったり。

ショートにするつもりが予想より長くなった。あいたた。
傾向としては心理描写増やしてみたつもり。(あくまでもつもり)

とりあえず、そんなわけで英二さんお誕生日おめでとう!
心の底からハッピーバースデーです!!


2002/11/15