ねぇ、大石?

 俺のこと、見てる?

 たまに、不安になるんだ。

 大石って、優しいから。

 本当に、オレのことだけ思ってくれてるのかなって。


 オレのことだけ、見て?

 オレのことだけ、愛して?

 オレの為だけに、生きて―――。











  * 独占欲 *












「お〜いし♪」
「英二」

学校の授業が終わって、これから部活。
その前に、オレは3年2組の教室へ行った。

それもこれも、大石に会うため。
オレの、大好きな、大好きな、大石。

「ね、今日さ、部活終わったらうち来ない?」
「どうして?」
「ん〜…いいからさ。ねっ、いいでしょ?」

オレは少し上目遣いに大石を見た。
そしたら、大石は絶対断れない。
オレは知ってる。
大石のことなら、何でも。

「ああ、分かった。鍵閉めとかあるから遅くなるけど…」
「そんなの毎度のことじゃん!」
「それもそうだな」

そう言うと、大石は机に顔を戻した。
何か書いてる。
大石は学級委員もやってるし、
副部長もやってるから忙しいんだ。
特に、今は忙しい時期なんだって。
だから、最近オレは大石といる時間が減った。

そうすると、少しだけ不安になる。
オレはこんなにも大石のことが大好きで。
でも本当に大石もオレのことが好きなの?
前言ってくれた時から気持ちは変わってない?
他のところに好きな人出来てない?

「ねぇ大石ぃ…」
「ん?」

大石は紙に何かを書きながら返事をした。
オレは机の横から前に回りこんで訊いた。

「オレのこと、スキ?」
「ああ、好きだよ」

顔を上げて、大石は笑った。
オレは大石の笑顔が大好きだ。
曇りのない、心からの笑顔。
この笑顔を見せてくれるときは、
本当にオレのこと好きでいてくれてるんだって、安心できる。
今大石は、オレだけのために笑ってくれてるって。

オレダケノ、モノ。




今日の部活はいつも通りに進んだ。
でも、気持ちが全然違う。

これが終わったら、大石がうちに来る。
一緒に喋りながら帰って、
オレの部屋でまた喋って。

二人だけの、時間。
それだけで、オレは満足する。
周りに人なんていない、二人だけの世界が欲しい――。





「それでは、今日の部活はここまで。解散!」
「「お疲れ様っした!」」

一日の最後の部活も遂に終わった。
いや、今日はまだ最後じゃないや。
これから、もっと楽しいことがある。
オレは浮かれた気分で、いつもより早く着替え終えた。
いくら早く着替えたって、
大石は鍵閉めがあるから遅くなるって分かってるのに。
それでも、何故か早く着替えてしまった。

部誌を書いてる大石に、オレは声を掛けた。

「それじゃあ大石、オレ教室で待ってるから」
「ああ。それじゃあ終わったら迎えにいくよ」
「ラジャ!」

半ばスキップのような軽い足取りで、
オレは教室へと走った。



教室へ行って、電気も点けないで。
オレは自分の机に座って、先のことを考えた。
まだ日は沈んでないから、そこまで暗くなかったんだけど。
青とオレンジが混じって、
紫色みたいな不思議な色になってた。

大石と一緒に歩く。
大石と一緒に喋る。
手を繋ぐぐらい許してくれるよね?
キスだって、たまにはいいよね?

そんなことを考えるだけで、
オレの顔には自然と笑みが浮かんだ。
大石と、二人っきりの世界――。


オレが教室に来て、10分も経っただろうか。
もしかすると、経っていないかもしれない。
ガラリとドアが開く音に、オレは反射的に振り返った。

そこに居たのは、他でもない待ち望んでいた愛する人で。

「…大石!随分早かったじゃん!!」

オレは大石に駆け寄った。
でも…。

「…おおいし?」

大石の顔はなんだか暗かった。
オレは疑問に思って、
少し伏せ気味になっている大石の顔を下から覗き込んだ。

「どうした、の?」
「英二」
「……なに」

すっと上げた大石の顔が固かったので、
オレの顔も無意識に固くなってしまった。
だって、大石がこういう表情をしたときは……。

「ごめん。今日一緒に帰れなくなった」

ほらね。
やっぱり、そうだと思った。
悪いことを伝えなきゃいけないとき、大石の表情は自然と固くなる。
オレは、大石のことなら何でも知ってるんだから。

……なんて、頭の中では冷静なこと考えてるけど。
本当は、憎くって憎くって仕方がない。

「……どうして」
「仕事、増えちゃった。明日の練習メニュー」

大石はオレから目を逸らしていった。
これも、大石の癖。
罪悪感があるとき、大石はオレの目を見ようとしない。

「…竜崎先生に頼まれたの」
「いや、手塚が頼まれたんだけど、手伝ってくれって…」

その言葉に、オレの眉は無意識にピクッと動いた。
自分でも分かってる、癖。
怒りが溜まってきて、押し止められないときの。

「大石は頼まれてないんだろ」

口から出た言葉は、自然と強い口調になった。
少し、震えてたような気もする。

もう、限界かも。
もし、次に、大石の、口から、出た、言葉が………。

「でも、手塚が手伝ってくれって…」
「!!!」
「エイ…っ!…んんっ……!」


――もう我慢できなかった。

オレは大石の胸倉を思いっきり掴むと、
壁にダンと押し付けた。
動揺している大石に、そのまま唇を思いっきり押し当てた。
体ごと壁に押し付けられて、大石は逃げ場がない。
オレの肩を押して離そうとしてきたけど、
オレは口内に舌を滑らせると思いっきり吸い上げるだけだった。

「んぅっ!」

そうしたら、大石の腕からは次第に力が抜けていった。
足からも力が抜けているのか。
大石のことを押さえ付けている手に重みが加わった気がした。
オレは大石から口を離すと、手も体から離した。

「はぁっ……!」

大石は崩れ落ちるように座り込んで、
オレが掴んでいた服の部分を自分で握り締めていた。
乱れた息を必死に整える大石を、
上から見下げてやった。鋭い眼光で。

荒れた息遣いが落ち着いてくると、
大石は半分泣きそうな顔で見上げてきた。

「えい…じ……どうして…」
「大石が悪いんだぞ」

オレは大石の前にしゃがみ込むと
顎に手を当ててクイと上げた。

「大石が、約束破るから」
「だって、仕事頼まれて…!」

パン。

他には誰もいない教室だと、
音は嫌味なほどに響いた。
オレは、大石の頬を叩いた。
その頬に、大石は手を当てて理解できないというような顔で固まっていた。
だから、オレは言ってやった。

「オレの方が約束先だったじゃん。
 何で…後から頼んできた手塚の言うことなんか聞いちゃうわけ?」
「だって、明日までに終わらせないといけないから…」
「オレより手塚のほうが大事なのかよ!!」

オレはもうほとんど大石の言ってることなんて聞いてなかった。

憎い憎い憎い。
オレと大石が約束してるのに横取りしようとした手塚。
それに乗ってしまいそうだった大石。
許せない……。

「大石は…オレのことだけ見てればいいの」
「エイジ…」
「オレのことだけ愛してくれればいいの」

そんな言葉を呪文のように唱えながら、
オレは大石の服のボタンに手を掛けた。
それと同時に、床に押し倒して。
ボタンを外しながら、言葉を続けた。

「英二、何を…」
「大石は、優しすぎるんだよ。頼まれたら嫌って言えなくて。
 オレは大石以外のことはどうでもいい。
 でも大石はオレもみんなも同じなんだろ!?」
「ちがっ……ぁ…」

露になった大石の肌。
そこに、オレは齧り付くように口を押し当てた。
そして、強く吸っては赤い花を咲かせていった。

「英…二……」
「………」

掠れてて縋りつくような大石の声も無視して。
オレはひたすらに痕を残した。
自分のものだと、誇示するように。
大石の身体中。
大石の綺麗な肌に。
綺麗だから、他の人には渡さない。
オレだけのものでいればいい。

「……あっ!」

大石から、普段より少し高めの声が上がった。
オレが、大石のズボンのチャックを開けてモノに触ったのだ。
既に熱くなっていたソコは、
愛撫を続けると見る見る形を変え、
大きく硬化していった。

「大石、ヤラシイ身体してんじゃん」
「えい、じ……んっ」
「…ねぇ大石、もちろんこんなことするの初めて…だよね?」
「当たり前…だろ……ぅっ!」

大石の身体がビクンと震えた。
勃ち上がっているモノも、同じくして。
イキかけているのだ、ということが分かった。

「良かった。絶対に…他のやつなんかと、ヤるなよ?」

オレはそう言って、
硬く勃っているモノの先に、
チュっと音をたててキスをした。

「!」

すると、ソコからは透明な液が垂れてきた。
でも、あえてそのままで。
ズボンを一番下まで下げると、
足を曲げさせた。
そして、既に先走り汁で濡れていたソコに、
指を捻じ込んだ。

「あぁっ!あっ…うぅ…!!」
「少し…慣らしておかないとまずいから」

…そんなこと言って、
本当はオレも早く大石のことが欲しくって仕方がないけど。
大石をオレだけのものにしたい。

身体だけ繋がってたんじゃ意味がない。
大石の心も、身体も、全てを手に入れなくちゃ。

「大石…」
「っぁ…くっ……」
「ねぇ大石、…オレのこと、好き?」
「英二……あぁ!?」

入れる指を一本ずつ増やして。
メチャクチャに掻き回しながら、オレは耳元で囁いた。

「ス、キ?」
「お…俺は、英二のこと…ぁっ、好き…だ!!」

その言葉を確認して、
オレは大石の中から指を全て引き抜いた。

「はぁんっ!」

身悶えする大石に、
鳥肌が立ちそうになった。
先はイキたそうに痙攣させて。
穴も物足りなそうにヒクヒクさせて。

そんなものを目の当たりにして、
正気でいられる筈がない。
オレは大きくそそり立った自分の物を取り出し、
大石の入り口に当てた。
そして、焦らすように周りを擦った。

「ぁあっ…エージ…!早く…」
「早く…どうしたの?大石。言ってくれなきゃ分かんないよ」
「早く…挿れ、て…!」
「オレのこと、欲しい?」
「英二のことっ…早く……欲しい!」
「―――」

その瞬間、オレはもう幸せの絶頂だった。
オレは、大石のことが大好きで。
欲しくって欲しくって仕方がない。
大石も、同じように、オレのこと欲しがって、くれてる…。

オレは、迷わず大石の中に身体を押し込んだ。

「っ…!はぁん、んっ!英二…!」
「大石…中、すごい気持ちいいよ…」
「エイジ…!!」

オレは腰を揺らしながら、
また呪文のように言葉を紡ぎ始めた。

「大石は、オレのことだけ見てればいいんだよ?」
「はぁ、あっ!ン……!」
「オレのことだけ愛してくれればいいんだよ?」
「えー…じ………ゃっ!」

オレは大石の腰を強く掴むと、
モノを一度引き抜いた。
そして。

「オレのためだけに、生きて―…!」
「ああああぁっ!」

一度引き抜いたものを、一気に奥まで差し込んだ。
その瞬間、大石の放ったものがオレの服を汚した。
オレも、そのまま大石の中に全てを吐き出した――。



 **



「大石…大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ…」

そうは言ったけどなかなか起き上がれずにいる大石に、
オレは手を貸して引っ張った。
ありがとう、と大石は小さく言った。
オレは鞄の中からタオルを出して、
体を拭いてやった。

「ごめんにゃ、大石。突然……。
 オレ、何かちょっとおかしかったみたい…」
「いや、オレの方こそ…ゴメン」
「?」

オレが謝るはずなのに、何故か大石に逆に謝られてしまった。
オレが?マークを浮かべると、
大石ははにかんだ笑いで言った。

「英二が…そんなに不安に思ってたなんて、
 知らなかったから…その……」
「ん、もういいよ。それは」

そう言うと、大石は安心した笑いを見せた。
オレの大好きな、笑顔だ。

「ところで…手塚はどうしただろな…」
「…まだ手塚のことなんか気にしてるわけ?」
「あ、ごめっ…」

不機嫌になったオレの声に、
大石ははっとして口を手で塞いでいた。
オレは、ふっと笑って言った。

「…なんてね。冗談だよ。
 だって、大石のいいところは、誰にでも優しいことじゃん?」
「英二…」
「だから、気にしないことにする。
 でも…絶対他のやつの事なんか、好きになるなよ?」
「…了解」

大石は笑った。
オレも笑い返した。
そして、コツンとおでこを合わせて、また笑った。


大石が他のやつと居て、
全く悔しくない、憎くないって言ったら嘘だけど。
でも、もう大丈夫なんだ


だって、


   オオイシハモウオレノモノダカラ―――。






















うふふ。菊大v(何)
菊さんを黒風味にして見ました。
表向きは無邪気なにゃんこ、心の中はカラスより黒い…。(ぇ
そして攻。今までにないパターンです。(正反対)
っていうか、菊が攻っていうのは黒くしちゃったら
そんなに抵抗なかったんですけど、
大石が受っていうのにめちゃくちゃ抵抗あった…;
普段白いくせに攻だから?それともただ単に攻固定者なの!?(何それ)
分からないけど。でもすっごい楽しかったです!

途中で“大きく”と書こうとしたら“大菊”と変換が出た。
そして、「違うよ、菊大だよ!!」と思いっきり画面に叫んだ我。(笑)
ツッコミどころが違うってのね。

いや〜…でも楽しかったですわv ハマりそう…。

思ったこと、大石受はもうやりたくない。(上と書いてること違)(結局書きそう)


2002/10/27