* 夕日 *












…空を見ていると思うんだ。
遠く離れていても、同じ空にいるんだって。
空の大きさを感じた。
それと同時に自分の小ささを突き付けられた感じがした。



なんとなくぼーっとして、
いつもなら絶対そんなところに行かないのに、
河原で空を見上げていた。
何を考えるわけでもなく。

「お〜いしっ」
「…英二」

後ろから掛けられた声に振り返る。
英二は土手を駆け下りて来て横に座った。

「何してるのさ」
「いや、別に…」
「……」

曖昧な答えをすると、
英二は何か言いたげなとても不安な表情になった。
それが気になったので、俺は聞き返してみた。

「どうかしたのか」
「……今日オレと帰る約束忘れてたでしょ」
「あっ!」
「……」

しまった、すっかり忘れてた…。
ぼーっとしてて…。

「ごめん、英二」
「別にいいけどさぁ〜」

英二は下を向くと、暫く黙り込んでいた。
機嫌を悪くしてしまったのかと思い顔を覗き込もうとすると、
瞬間英二はこっちを向いた。

「大石!」
「ど、どうした?」

突然叫ばれて焦った俺を、
英二はじーっと睨んできた。
そして、こんな事を言った。

「今日さ、ってか最近ずっとぼーっとしてるの、
 がいないからでしょ」
「……」
「返事」
「…ハイ」

…そう。
俺の彼女であるが引っ越して、二週間。
たったの二週間、という気もするが、
いつも隣にいた人がいなくなってしまうと、
その隙間は想像以上に大きくて。

何だかんだいって、寂しいのか。
気付けば、ボーっとしている自分がいた。


地面に俯いてまた黙り込んでしまう俺に、
英二は言ってきた。

「…大石ぃ」
「ん?」

「オレさ…のこと好きだったんだ」
「へぇ…」


………ん?


「えぇ!?」
「やーっぱり気付いてなかった」
「……」

開いた口が塞がらないというのは、
まさにその状況のことだったかもしれない。

英二が、を…?
ぜ、全然気付かなかった…。

「え、英二……ゴメン;」
「なぁ〜んで大石が謝るのさ!」

英二は妙なほどに意気込んでいた。
なんで謝るってそりゃ…。

「だ、だって俺、と…」
「それはも大石のこと好きだったんでしょが」
「あ…」

もっともな答えだ。
そうだ、ちょっと冷静になれ。
俺はが好きで、も俺のこと好きでいてくれて…。
それで付き合ってて…。
そしたら実は英二はのことを…。

「………」

混乱している俺を見て、英二は溜め息をついた。
そして、こういった。

「大石は何も悪くないよ。オレはを好きだった、
 でも向こうはそうじゃなかった…それだけのこと」
「……」
「でもね!…楽しかったよ、と友達として純粋に、過ごしてさ…」

いつでも明るく元気な英二だけど、このときの横顔はとてつもなく淋しそうに見えた。
でも、それがまた眩しく見えた。

「英二…その……」
「だ〜か〜ら!大石は何も悪くないって!気にしないでよ」

そうは言われても…そんな悲しそうな顔されちゃあな…。
というか…なんで突然そんなこと言う気になったんだ?
猫は気紛れというけれど…。

「…あんな事突然言っといて気にしないでってほうが無理あるね。
 オレの方こそゴメンにゃ」

直後、またいつものようにおちゃらけた声でにゃはは〜と笑った。
すると、真っ直ぐな瞳でこっちを見据えてきた。

「だからさ…」
「?」

・・・。

『バチン!』

「!?」

なっ…?
なんなんだ、いきなり!?

英二は、俺の頬を押さえる様に
両側から強く叩いてきたんだ。

そして、その手を離さないまま言った。


「俺の好きなが選んだ男だぞ!もっとしゃきっとしろ!!!」


英二は思いっきり叫んでいた。
俺は一瞬混乱してしまったけど、
直後に冷静になった。


…そうだ。
が俺のことを思っていてくれるなら。
こんな弱くて小さな俺だけど。
それでも信じてくれるなら。


「…そうだな」

俺は、英二に笑い掛けた。
すると、英二も笑い返して手を離した。
しかし直後に、そっぽを向いた。

「は〜あ。なんだだかんだいってラブラブにゃんだもんな。
 オレ泣いちゃう〜…」
「あ…、えーと……」

何も言えずに戸惑っていると、
英二はジョウダンジョウダン、とはにかんだ笑いを見せた。

そして、空を見ていた。
俺も空に向きなおす。


――綺麗な夕日が出ていた。

燃えるように真っ赤で、
昼間の太陽とは比べ物にならないくらい大きくて。


も…同じ太陽の下にいるんだね」
「ああ…」
「でも、向こうでは黄色く光ってるんでしょ?
 なんか不思議。同じ太陽なのに」
「そうだな」

二人肩を並べて夕日を見た。
夕日は見る見る沈んでいき、
そのまま地平との境目に消えていった。

英二が太陽が消えた彼方を見ながら言った。

「…オレたちのところから消えた太陽が、
 たちの方に向かったんだね。
 太陽は休む間もなくて大変だにゃ」
「…ぷっ」
「にゃんで笑うの!」
「ゴメン、ゴメン」

英二の言葉がなんとなく面白くって、笑ってしまった。
でも、確かにその通りだな。

今日も明日も、止まることなく回り続けて。
こっちが夜の間は、向こうの昼を照らして。
向こうが夜の頃は、こっちの朝を迎えて。

「忙しいな、太陽は」
「…その言い方オレのことバカにしてにゃい?」
「してないよ」
「いんや、絶対してる!」

笑い合いながら、もう一度太陽が落ちた方向を見た。
オレンジに霞んだ空が、綺麗だった。

も同じ空を見てるのだろうか。
向こうでは青い空が広がっているのだろうか。


大きな空の下にいると、思うんだ。
同じ空の下なのに、どうして違う風に見えるのか。
同じ瞬間なのに、違う時を過ごしているかのように。
それでも、同じ空の下。
遠い距離も、一つに繋げてくれてるんだ、この空が。


「英二、そろそろ帰ろうか」
「ほいほい」


オレンジ色が少しずつ抜けていく空の下、
何故か、幸せを感じていた…。






















…ねぇ。
これなんなのさ!?(笑)
ドリームとかいって、本人でてこないし!
つか正直な話大菊だし!!(核爆死)
…異色だ。
こんなの初めて見た。自分の中で。
あはは。まあいいや。

とりあえず主人公はとても愛されてる設定でv
美味しいなあ。(死)

っていうかこのシリーズの大石ホントに天然だ!?
つかアホだ。(笑)
微妙に乙女だ死。(ぇ
まあいいや。可愛いし。(ぉぃ


2002/09/09