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  * ファーストキスは○○の味 *











「ねぇシュウ、アイス食べたい」
「…そりゃまた唐突だな」

それは、ある日の、いつもと同じ学校帰りに起きたこと。
二人で話をしながら、歩く。
でもね、たまに、気まぐれな思い付きをすることだって有るんだ。

シュウと一緒に居たいから。


「食べたい食べたい〜」
「……仕方ないな」
「やたっv」

そんな話をして、あたしたちはコンビニへ入った。
アイスコーナーに着くなり、ガラスにべったり張り付くあたし。

「おいおい、みっともないだろ」
「だいじょぶだいじょぶ♪どりにしよおっかな〜っと」
「…ったく」

みっともないのなんて、百も承知。
それでも思わず、そうしてしまう。
…あたしもまだまだ子供かね。

「チョコもいいけど〜やっぱりフルーツ系かな?
 あ、あれに決めた!パインアイス!!」
「決まったか?じゃ行くぞ」
「シュウは?食べないの?」
「俺はいいよ」
「あそ」

レジを通って、店を出る。
でも、まだ食べない。

だって、こういう日は限ってあそこに行くって決まってるから。

「シュウ、いつものとこ」
「わかってるよ」

いや、別にはっきり決めたわけじゃない。
でも、何かが有るとあたしたちは必ずとある公園へ行って
ブランコに乗って話をするのだ。

今日は…特に何かがあったってわけじゃないけど。
食べ歩きってのもなんだし?
シュウもそれはわかっててくれてるみたい。

風が涼しかった。
夕陽が綺麗だった。
…こんな帰り道が好きだ。


公園に着くと、サッカーで遊んでる少年たちがいた。
その子たちを横目に、あたしたちはブランコへ向かう。
先客はいなかった。
狭い公園だから、ブランコは丁度2つ。
あたしたち二人が座れば、それで終わり。

夕日の方向を向いて座る。
シュウはただ腰を掛ける。
あたしは、ゆっくりと足でこぎながらアイスの包みを開ける。

「じゃじゃ〜ん!パインアイス〜♪」

上機嫌なあたしに、シュウは微笑みを浮かべていた。

「……おいし♪」

一口かじると、シャキっとしたいい感触がして、
口の中に冷たくて甘くてちょっとすっぱい、
パインの香りが広がった。

「シュウほんとに食べないの?」

疑問符を飛ばしたけど、
「ああ、俺はいいよ」
だって。

「おいしいのに〜。…ま、いっか」

しゃきしゃきとアイスをかじるあたしを、
シュウはただただ嬉しそうに見ていた。

「……なに?」
「いや、幸せそうだなあって」
「だって美味しいんだもん♪」

なんてね。
そうはいったけど、
ホントはシュウと一緒に居られることが一番幸せなんだよ、
とか思ってたりして。

はむはむと食べ続けてるあたしの横顔をシュウはずっと見てきた。
ずっと黙ってそうしていたけど、シュウは暫くして口を開いた。

…やっぱり一口貰ってもいいか?」
「うん、いいよ。ハイ!」

そう言って包み後とアイスを差し出した。


でも。

その手は掴まれたけど、シュウがアイスをかじることはなくて。


ブランコの、キィ、と軋む音がした。

あたしの肩が掴まれて、引かれた。

反応する間もなく、口と口が付けられた。


一秒ぐらい経ってから、漸く事の重大さに気付いた。

でも、肩を掴まれてるから抵抗することも出来なかった。
…抵抗する気もなかったケド。



―ファーストキスはレモンの味?
リンゴをかじった時の味?

あたしのファーストキスは、甘くって、ちょっとすっぱい
パインの味。


「一口、いただきました」
「もう」

自分の顔が熱いのを感じた。
救いは、赤くなった頬は夕闇に紛れたこと。

……もしかしたら、
シュウの顔も今赤いのカナ?
なんて考えると少し面白かった。


ファーストキスは、パインの味。
背景には、人気の少ない公園。
沈みかけの太陽。
…結構ロマンチックじゃない?

「もう一口食べる気ないv?」
「…お前な///」


ある日の夕方起きたこと。
そんな優しい帰り道……。






















かなり昔に書いたの掘り出して書いてます。
えぇ、ジャスト3ヶ月前。ブラボー。

30%実話(微妙)
現実→医者の帰りにコンビニへ直行。
ジャンプを立ち読みしつつパインアイスを拾い上げると
レジを通過し店を飛び出す。
チャリに乗って両手離しで袋を開封し、
かじり付きつつ公園へ。
サッカーやってるやつらを横目にいい年こいて
一人でブランコに乗ってアイスを貪る。
夕日は既に沈んでた。(痛)
帰る頃には一番星が出ててそれはそれでよかったケド。

ブランコでアイスを食べながら、
“もしここにあの人がいたら〜”という妄想で
生まれた話。うわ。(危険)
あたしの頭の中いつもこんな感じでですた。痛。


2002/09/08