どこが好きなの?
って訊かれてもはっきりとはわからない。

いつから?
とかそういうのもわからないんだけど。


でも、気付いたら目で追ってた………。











  * はっぴぃ・すたぁと -前編- *












おはよ〜!」
「おはよ、

掲示板の前でたむろしてる人の中、後ろから親友のの声がした。
は無理に人を掻き分け、突っ込んできた。

「どうだった?クラス分け?」
「一緒だよ〜!初めてだよね?」
「マジ!?やったじゃん!!」

小学校が一緒という事で仲がいいだけれど、
中学では今年初めて同じクラスになった。
お陰であたしは上機嫌!

っていっても、
ホントの理由はそれだけじゃないんだけどね…。




「とりあえず朝は元の教室行くんだよね?」
「そだよ〜」

一緒に階段を上ったあたし達は、
お互いの元のクラスに行くため途中で別れた。


「………」


まずいまずい。
独りになったと思ったとたんニヤケが…。
いけないいけない。
冷静さを保たなくちゃ。

でも…そうは思っても、浮かれる気持ちを抑えることは出来なかった。
だって、今度のクラスには…。

「おっはよ〜!!」
「わぁっ!」

後ろから突然押されて、思わず声を上げてしまった。
この声は…!

「英二!!」
「ほいほ〜い♪」
「びっくりするなぁ、もう…」

いつでも元気ね、この人は。
人が感傷に浸ってるというときに…。

「今年はクラス別れちゃったね」
「そうだね〜」

あたしたちは、話しながらクラスへ入った。
英二とは、去年同じクラスだった。
話とかが合って、結構仲良かった。

でもゴメンね、英二。
あたし、ずっと英二のこと騙してるんだ…。
まだ、それを言えずにいる。

 

あれは、一ヶ月ぐらい前の事かな…。



 ***


「ねえ、日曜日テニス部さ、大会なんだけど見に来ない?」
「ん?なして?」
「いいからいいから〜、ね?」

そう言われたのは、HRが始まる数分前に英二と談話をした時。

「英二試合出るの?」
「あったり前じゃん!ね、だから見に来てよ!!」
「う〜ん…。いいよ、見に行く」
「やたっ!」

あたしは、頭の中で他に予定がなかったか思考を巡らせた。
特に用事はなかったし、全国区というテニス部がどんなものなのか、
見てみたかったから、OKした。
練習風景なら何度か見たことがあるけど、
他の学校と戦ってる様子は、一度も見たことがない。
だから興味が湧いた。

初めは、その程度だった。


「よ〜し!オレ張りきっちゃうもんね!見に来てよ、絶対だよ!」
「わかったわかった」

HRを終えた後大会の行われる場所と時刻を聞いて、帰った。
その日、何が起こるかとも知らずに…。



―――当日。


「ほぇ〜…」

いよいよ始まった青学の試合。
あたしは、度肝を抜かれていた。

「すごい…青学ってこんなに強いんだ」

あたしはテニスはやったことがなかったし、
ルールとかもよくはわからなかったんだけど。でも、
そんな無知なあたしが見てもはっきりわかるくらい、青学の強さは圧倒的だった。


「ゲーム青学、6−0!」

結局、青学のダブルス2は、相手に1ゲームも取らせることなく試合を終えた。
そしていよいよ…。

「ダブルス1、前へ」

その瞬間、ゴールデンペアだ!と知らない学校の人が思わず声を上げていた。
別の場所からも、黄金コンビやらゴールデンコンビやらいろいろと聞こえてくる。

「青学ゴールデンペアの大石・菊丸だぜ!」
あたしの隣に立っていた人の声が耳に入った。
へぇ…英二こんな有名人なんだ…。
なんか圧倒。


コートに出て行った英二は、フェンスの後ろにあたしを確認すると、手を大きく振ってきた。
あたしはそれに対し手を胸の前で小さく振った。

な、なんか視線…;


戸惑っているうちに、試合は始まった。
先ほどのように、青学ペースで試合は進められていた。
そして、英二はいつでもコート中でクルクルと走り回っていた。

「ほいほいっとね〜」
「出たっ!ダイビングボレー!!」

周りの人が叫ぶ。

ほんとすごい…。
英二カッコイイじゃん。
と、思ったよ。ホントにね。
派手な動きは目を引く。でも……。



どうしてあたしは、パートナーの大石君のほうを目で追っているのか。


自分でも、わからない。
特別目立つことをしているわけでもない。
今まで関わり合いがなかったから、注目する理由もない。

なのに、気付くとそっちを見ていた。
今思えば、あの時点であたしはヒトメボレしていたのかも知れない。


「ゲーム青学、6−0!」

その声で、はっと現実に引き戻された気がした。
それまでは、夢見心地でずっと一人を目で追っていた…。

英二がこっちにVサインを出してきたので、あたしもそれに応えた。
でも、思考は上の空。

思い出すと、鼓動が高鳴る。
どうして、こんなにも心が痛むのか……。

っ♪」
「わっ、英二!すごかったじゃん!」
「でしょでしょ!ちゃんとオレの事ずっと見てた??」
「見てた見てた〜」

なんて、言ってしまった自分。
罪悪感も感じたけど、それよりも、気になったのは心臓の脈動。
激しく、激しく、波を打つ――。

「ね、英二!」
「んにゃ?」
「普段の部活のときも、テニス部見に行っていいかな?」

気付くと、あたしはそう言っていた。
気になった。この心臓の高鳴りの正体が。確かめたかった。

「もっちろんだよ!毎日でも見に来てよ!でも突然どうして?」
「え…なんか、今日ので感動したから。うん。」

しどろもどろそう答えた。
ちょっと我ながらわざとらしさを感じたけど、英二は気付いていないようだった。

「あ、オレそろそろ行かなきゃ。次の試合が始まるから。じゃね!」
「うん。頑張ってね」

シングルス3も、終始青学ペースだった。
無論、6−0。
何やら3つ勝つと終わりらしく、そこで試合は全て終了した。
あたしはそれを見届けると、ぼーっとしたまま帰宅した。


家に帰ってからも、その時のことを思い出すと、ドキドキした。
頭の中は、そのことで一杯だった。

そして、あたしは毎日のように英二にウソを吐いてテニス部を見に行った。
別にウソなんて吐く必要ないのに。
でも、なんとなくこの気持ちを気付かれたくないような気がしたから。



それまで恋らしい恋なんてしたことがなくて。
あの人カッコイイな、とか。
優しくていい人だな、とか。
今までずっとその程度で。

だから、一人の人にのめり込んでしまう苦しさを、初めて感じた。



って好きな人とかいるの?」

ある日突然訊かれた、英二からの一言。
それはあたしも考察中。
…なんてね。気付いてたよ。
これは間違いなく“恋”だって。
でも…。

「う〜ん…いない、かな」

あたしはまた、咄嗟にウソを吐いた。
別に言えばいいんじゃない?
“あたしはあなたのパートナーの大石君が好きです。”
英二優しいし、仲取り持ってくれたりとかするかもよ?

でも、何故か言えなかった。
この気持ちは、心の奥にしまって置きたかった。



 ***



ホントに英二には申し訳ないと思ってる。
ゴメンね?なんて。
心の中では謝ることなんていくらでも出来る。
でも、それは卑怯だ。
わかってる…でもゴメン。


「おう!懐かしの教室!」
「懐かしって、まだ二週間しか経ってないじゃん」
「…昨日からはもう過去なんにゃ」
「意味不明。」

そんなどつき合いをしながらも、微かな罪悪感。
嫌だな、こんな自分。
英二とは、裏表もなく楽しく付き合いたい。
今までそうしてきたように。

「でも確かにさ、これからはもうここを使わない〜って思うと少し懐かしく感じるかも…」
「でしょ?でしょ??」

いつか、この罪悪感も消える日が来るのかな…。
なんて、柄にもなく悩んでみたりして。


とりあえずその後始業式が行われて、簡単なHRを終えると二年の教室に別れを告げた。
いよいよ、中学校最後の一年間への扉が開かれたのです。


「じゃね、
「うん。バイバイ」

教室は1組から並んでいるので、2組のあたしのほうが先についた。
英二とも別れて教室に入ろうとした時。

「あ!大石ぃ〜!」
「!」

瞬間、心臓は高鳴った。
そうです。何を隠そう。


今年は、大石君と同じクラスなのです。

「お、英二」
「結局うちら一回も同じクラスになんなかったね」
「そうだな。…確か6組には、不二もいたよな」
「そだよ〜」

そのやり取りを、あたしは固まってみていた。
これから一年間同じ教室で過ごす…なんて幸福!
しかし心臓が持つか…ちょっと心配だったりして。

「2組ってことは、大石はと同じクラスだね」
?」
「!?」

なんであたしの名前が話題に!?
なになになに〜!?
英二さん…心臓に悪いわよ。

は2年の時のオレの仲良しさんだにゃ」

英二は言った。
大石君はあたしの顔を見て一瞬固まると、さわやかな笑顔でよろしく、と言った。

「はい!よろしく頼みますです!」
「ははは。面白い子だね」

そうかな、なんて口で言っておきながら。
脳内葛藤。混乱状態。パニックワールドin青学。

ちょっとちょっとどうしよ!
初めて会話を交わしちゃったよ!
なんか…緊張して声が上擦った気がしたよ。
所詮同い年の男子に…くそぅ……。

こんなこと、初めてだよ…。


「それじゃね〜」
「ああ。また部活でな」

英二は6組へと向かった。
あたしはただ静かに手を振った。
英二の姿が人込みに紛れると、大石君はこっちを向いて話し掛けて来た。

「えっと…ちゃん?」
「ハイ!と申します!」
さんか。よろしく」
「こちらこそ!!」

ど、どどどどどうしようっ!!
同じクラスになったってだけでこんなにお近づきになっていいの!?
罰が当たらないかしら。嗚呼神様。


…そんなことを心配しつつ、
あたしの中学3年の生活は、蓋を開けるのでした。

























前編。出会い編。
英二さん出張ってます。
いやいや、これからも活躍して頂く予定。

大石と菊丸は同じクラスになってない設定で。
部活だけで、ゴールデンペアということで愛を深めていったと。
それほどまでに二人にとってこのコンビというのは思い入れが強いものだと。
それが主張したかった。
ってなんでドリーム小説で大菊語りしてんだ。(爆死)

なんか恋する乙女ですね。
気にしないで。あたしのワールドこんな感じ。(何)


2002/08/14