* はっぴぃ・すたぁと -後編- *












大石君と同じクラスになって、
気付けば一週間。
いろいろなことがわかった。

テニス部では副部長をやってるみたいだし、
しっかり者なんだなって。
みんなが嫌がる学級委員を、
周りの男子に後押しされながら、立候補していた。

他にも、いろいろ。
足を組む時は左足が上とか。
考える時は顎に手が来る癖とか。
実はちょっとだけおっちょこちょいなところとか。

…誰にでも優しいとことか。

う〜ん。
なんか、それが悔しかったりする。
一緒に話したりすることがある。
優しい笑顔が、自分に向けられてるって考えると嬉しい。
でも、その笑顔は自分だけのものじゃないって。
独占したくなったんだよね。



「ねえ
「ん、何?」
「好きな人できた?」
「ぶっ!」

ある日、お弁当食べてる時のこと。
いきなり訊かれた一言に、あたしは素でお茶を吐いた。

「…キタナイ」
「ごめん、ごめん!!」
「ま、いいけど」

は腕にかかったお茶をハンカチで拭きながら言った。

「…で、どうなの?」
「何が?」

あくまでシラを切ろうとするあたしには言った。

「できたでしょ、好きな人」
「…どうしてそう思うの?」

…マズイ。
バレたかな?あはは。
隠しておくつもりだったのに…。
いや、負けちゃたまらねぇ。
あくまでも隠し通そう…。

そしたら、はあたしに近付いて、
他の人に聞こえぬよう小声で言った。

「…っていうかぶっちゃけた話、大石くんのこと好きでしょ」

…ゲームオーバー。
バレてます。
いや、負けちゃたまらねぇ。

「そんなことないよ!」
「ホント?」
「…ウソです」

…自ら割れました。
アホです、自分。
まあ、いつかはには話すと思ってたけど…。

「やっぱりね〜」
「…どうしてわかったの……」
「だっての態度バレバレ」
「…マジ?」

そうなんだよね。
あたしいっつも友達に言われる。
「あんたの態度わかりやすすぎ」
あっはっは。
隠し事してもすぐバレる。
…ま、いいけどさ。


「で、告白するつもりとかないの?」
「そ、そそそそんな滅相もない!!」

あたしは手を横にぶんぶん振って否定した。
こ、コクハク!?
そんなバナナ!アップル!って何言ってんだ自分!!

「だって大石くん誰にでも優しいじゃん?取られちゃうよ〜」
「〜〜〜」

そう。
それが実は悩みだったりするわけ。
悩める乙女。14歳。ああはらり。

「ま、何かあったら言ってね。相談乗るから」
「ん。ありがと」


なんていいつつ、自分は相談しないんだろうなぁとか思った。
ごめんね
あたしっておちゃらけた面があると同時に
この辺はナイーブなの。いや、真面目に。


たまに、休み時間に三人で話をすることがある。
あたしに、大石君に、英二。
英二は、廊下から頭だけを出して。
その英二は、次移動だから〜とか言いながら途中で抜けてくことがある。
そういう時は、二人で会話を続けるわけで。
必要以上に緊張しているあたしに、
が目で合図送ってきたりして。
…そういうのが嫌で話したくなかったんだよね、実は。
気恥ずかしいというか、なんというか。



話をする度に、思いは高まって。
横顔を見るたびに、想いは深まって。

3年生になってから3週間ほどたった
ある日、あたしは決断した。

…告白しよう!

授業中のことでした。
ノートもとらずに呼び出しの作戦を立て始める。
思いついたら即行動。
この辺が自分。



「大石君!」

休み時間になると同時に、あたしは駆け寄った。
いつもより、更に高鳴る心臓を必死に押さえて。

「今日、一緒に帰らない?家の方向同じだったよね」
「部活で遅くなるけど?」
「それでもいいから!」
「…じゃあ、どうすればいいかな」
「ん〜と…門の前でいい?」
「ああ、わかった」


…ぷふゅ〜。
会話が終わったあと、溜め息。
これからですぜ、本番は。
でも、とりあえず一山超えた感じ。

には、気付かれていない様子。
周りのみんなは気付いてたかな?
休み時間始まった瞬間でガヤガヤしてたから平気だと思うけど。
ま、どうでもいいさ。この際。



そして放課後。

「なんか、今日そわそわしてない?」
「そ、そうかな?」

さすが、鋭い…。
…あたしがわかりやすいのか。

「ま、いいや。それじゃあね〜」
「うん。バイバ〜イ♪」

とは家の方向が違うから、もともと一緒には帰っていない。
だから、怪しまれない。うん。
態度で少し悟られたくさいけど、まあ平気でしょ。


今日もいつも通りテニス部の見学に行くわけだ。
でも練習が終わると同時にあたしはもう既に門に待機しに行った。
というか逃げた。おい。
だって、なんか顔合わせ辛い…。

15分ぐらいすると、ガヤガヤと人がやって来始めた。
そろそろかな〜と思うけど、
副部長の仕事で遅くなるんだよね、確か。

はぁ…緊張…。


「わぁ!!」

溜め息をついた瞬間に後ろから掛けられた声に、
思わず飛び上がるほど驚く。
そこにいたのは、英二だった。

「英二!ビックリさせないでよ!!」
「別に声掛けただけにゃのに…」

英二はぶーたれた口をした。
こっちは心臓ばっくばく。
ああどうしましょ。

「誰か待ってるの?」
「あ、うん。ちょっとね…」
「ふ〜ん」

はぐらかそうとした。
でも、ダメなのね、やっぱ。

「誰?だれだれ!?テニス部の人!?」
「ヒミツ」
「あ〜!ケチ〜!!」

こういうことに興味津々だからね、英二は。
でも言えません。
…英二に言えないこと、増えてく。
いつかは言うのかもしれないけど。

「ま、いいや。それじゃあね」
「うん。また明日」

英二に手を振って、
また一人の時間がやってくる。
先のことを考えて、鼓動が早まる。

人は、歩いていく。
どんどん先へ進んでいく。
そんな人たちの横顔を、何度も見た。

そうして、15分ぐらいたった頃。

「お待たせ!」
「!」

後ろから聞こえてきた、大好きな声。
喜びと同時に、心臓が大きく波打つ。

「……」
「…行こうか」

下を向いて固まってるあたしに、大石君は言った。

…マズイ。まずいです。
ここまで来て、赤面。
いかん、いかん…。

とりあえず、二人肩を並べて歩く。
並べてといっても高低差20cm。
あはは。
笑えません。

「………」
「…で、話って?」

無言で歩くことに痺れを切らしたのか、
大石君のほうから、話題を吹っかけてきた。
しかし、もう突然その話かね!?
雰囲気ってもんがあるでしょうが…。
…それとも、大石君ってすっごいその手のことに
鈍感だったりする!?
…なんとなくわかるかも。

「う〜ん…そうだ!一緒に行きたいところがあるんだけど、いいかな?」
「…いいけど?」

そうして、あたしは大石君をうちの近くの公園まで連れてきた。
人気が少ない、小さな公園。
もうそろそろ夕日が沈む頃。
誰もいなかった。

あたしは大石君にブランコに乗るよう促し、
自分も乗った。


ここに来ると、真正面に夕日が見えるんだ。

「綺麗でしょ」
「…ああ」
「ここね、あたしが一番好きな場所なんだ」
「へぇ…いい所だな」

あたしが話すと、大石君も笑ってくれた。

…今だ。
言うなら今しかない!

『ここにつれてきたのは言いたいことがあるからで…』
『ああ、話があるって言ってたな』
『…ずっと好きでした!』
『実は、僕もだよ』
『えっ!?本当!?』
『愛してるぜ、
『私もよ!秀一郎!!』
 〜ハッピーエンド〜


………完璧。
涙が出るね。
何か違う気もするけど。
っていうか全然違うけど。
よし、今こそ作戦を実行する時…。

「 」
さん!」

…ほぇ?

口を開いた瞬間、
声を出す前に大石君から話し始めた。

なんか志気を削がれたぜ〜な気分。
なんでせう…。

「…なに?」

大石君は、心なしか真剣な表情だった。
何事ぞ…。

「実は、俺…さんのことが、好きだ」

『……ぷっ』

「な!?」
「あははははは!」

思わず、笑ってしまった。

本当に大石君鈍感だなぁ、っていうのが少し面白くって。
先越されちゃったなぁ、っていう苦笑いと。

そして何より…嬉しかったんだ。

「笑うことはないだろう…結構本気なのに」
「違う、違くって!!」

もう涙が出るほどに、笑った。
大石君の焦ってるような照れてるような表情が、
可愛いなんて思ってしまって。

「あたしもね…大石君のこと好きなんだ。
 今日は、それを伝えたくて呼んだの」
「そ、そうだったのか…」

…やっぱり気付いてなかったんだね。
まあいいや、これって、ハッピーエンドってことでしょ?いや、
始まり……かな?


「両想いだったなんてね」
「気付かなかった…」
「っていうか呼び出しの段階で気付かなかった?」
「ごめん、全然…」

ブランコに乗ったまま、あたしたちは笑い合った。

いつの間にか、一番星が出るころになっていた。


「もうこんな時間か」
「ありゃ、いつの間に」
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか、さん」

立ち上がったあと、あたしは大石君に抱きついた。

「…さん?」
「ね、そのってやめてさ、名前で呼んでよ。
 あたしもさ…シュウって呼ぶから」
「……わかった、

にこっと笑うと、
シュウはあたしのことをギュッと抱き締めてくれた。

少しずつ現れてきた星が、
あたしたちを歓迎してくれているような気がした。


歩きながら、また話した。

「…あ、でも学校では内緒にしようね」
「どうして?」
「…恥ずかしいじゃん」
「そうか…ま、いいけど」



―しかし、次の日の朝。


「おっはよ〜シュウ!」
「「!!!」」


あたしの何も考えない軽率な一言で
一瞬にしてクラス全員に知れ渡るのでした。合掌。

























…なにがしたいんだって感じですね。(苦笑)
とりあえずラブく。甘く。
題名調子乗りすぎだし。(苦)

なんつか大石めっちゃアホなんですけど…;(滝汗)
いいんだ、あたしの中のシュウは
鈍感だけどテクニシャン。(何がだよ/核爆死)

とりあえずこれからシリーズものがスタートするわけです。
アップする順番めちゃくちゃですが。


2002/09/08