* 告白 *












「ねえ、そろそろ目星付けた?」
「ん?何が」

それは、第三学年一学期が始まって一週間ほどのこと。
部活が同じで、親友のちゃんに言われたのが事の始まり。

「男に決まってんじゃん男に!」
「……はぇ?」

いきなり何!?
ちゃんっていつも話すことが凄い…。

「な、なに、男って…」
「このクラスのだよ。レベル的にはそこそこかな〜と思うのよね」
「は、はぁ…」

青学は、クラスも多いから人も多い。
三年目ともなっても、まだ顔すら知らない人もたくさんいる。
実際、今年のクラスは七割ほどがそうだった。

だから…一年に一度のクラス替えだけでも、
運命的な出会いがある、と信じているわけ…ですね。
その気持ちも分かるけど…。

「そ、そういうちゃんは?」
「あたし?ん〜とね…大田とかどうかと思ってんのよね。
 結構話しやすい性格なんだよね。顔のレベルそれなりに高いし?
 背も高いし〜…あと、サッカー部だって!これ決め手」
「は、はぁ…」

さすがちゃん…。
自分から話ふっといて言うのもあれだけど、凄い勢い…;
リサーチが並じゃないね。

「あとあと、森平!同学年の男子に言うのもあれだけど、可愛いね!
 恋愛対象じゃないけど〜…でもこれから伸びるでしょ!
 とりあえず候補に入れとかないとね。それからそれから本田ってのは…」
「わかったわかった!!」

もう。話し出すと止まらないね、ちゃんは…。
目の色違うし。気迫に思わず圧倒。
その研究熱心なところには感心ですよ。

「もういいの?これからどんどん面白くなってくのに…」
「いや、遠慮しとく」
「ぶぅ〜…」

ちゃんは、ぷうと頬を膨らませた。
しかし、直後にまた元気な笑顔に変わった。

「で、お目当ての人いる??」
「え〜…誰も…」

かぁ〜!とちゃんは額に手を当てた。
すると、こっちを向き直してまた凄い勢いで言った。

!そんなんじゃいつまで経っても彼氏出来ないよ!」
「え〜…別に欲しいとも思ってないし…」
「そ・れ・が、駄目なんだって!!」

ほんとにちゃん凄い気迫…;

本当にあたし今恋愛とか興味ないんだけどネ。
部活とかでも楽しくやってるし?
友達関係充実してるし?
趣味も遊びもやりたいことやってるし?
…勉強はもうこの際気にしないことにして…。

「へへ〜ん。そこでね、恋愛不器用なちゃまの為にこの
 様が一肌脱ごうってわけ!!」
「ほぇ…?」

それはそれは…ご苦労様です。
…よくわからないけど。

「あんたのためにね、似合いそうな男、リサーチしてきちゃった!」

え?
それって、なんか余計な期待を投げかけてない;?
…無理。
あたしそんな期待には添えないよ;;

ちゃん、あたしほんとに…」
「まあまあせっかく調べてきたんだから聞いてよ。
 んっとね…大石なんかどうかと思うんだよね」
「オオイシ???」

えっと…誰だったかな。
まだクラスの人全員顔と名前一致してなくて…。
大石…秀一郎君だったかな。
名前はすぐ覚えるんだよね、あたし。
…顔が出てこない。

「ほら、学級委員だよ。昨日決めたじゃん?あと、テニス部の…」
「副部長やってる人か!あ、思い出した思い出した」

…そういえばそうだった。
ああ、大石君ね。うん、覚えた。
でもなんで?

「ところでなんであたしに合いそうだって思ったの?」
「ほら、って結構とぼけてるじゃん?
 それにいつでもクルクル動き回ってて危なっかしいし〜。
 …この前も部活の大会直前で捻挫はするし。怪我しすぎ」
「え、えへへ…」

あたしが笑ってごまかすと、ちゃんは一つ溜め息をついて話を再開した。

「だから、落ち着いてて支えてくれそうな人がいいと思ったんだけど。…どう?」

…さすがちゃん。洞察眼ある…。
あたしの性格よくわかってる。

あたし自分でも思うけど結構ぬけてる所あるから
そういう人と一緒にいると安心する…っていうのはあるけど。
でも…。


「あたしもともとそんなに男子と話さないし…。
 いきなりそんなこといわれても…なんとも……」
「何よそれ〜…絶対お似合いだと思ったのに〜……」

ちゃんは口を尖らせて残念そうな顔をした。
でも、ほんとにあたし男子と喋んないし。
喋るのが嫌とか、緊張するとかはないけど。
特に話す理由とかもなかったし…。

そうしたら、ちゃんは表情を変えて話を続けた。

「大石って結構気さくで話しやすいタイプだよ?さっきちょっと会話したけど。
 学級委員やるようなやつだから堅物かと思ったらそんなことないし。
 あと優しいし…守ってくれそうなタイプじゃない?」
「そうかなぁ…」
「そうそう!…ま、無理は言わないけど。その辺どうかな〜って思っただけ」

ちゃん、恋話になるとほんと元気だなあ…。
そういうの好きなんだね。
あたしは…ちょっと着いてけないかも…。

恋愛とか…まだよくわかんないかも。
恋人とかだって、いたらいいかな〜とは思うけど、
強いてほしいとも思わないし。

…やっぱり、好きな人ってまだよくわかんないや。





でも、間違いなくこの日あたしの頭の中に
大石秀一郎という人間は強くインプットされたのでした…。





そして、それから一週間後…。
事件は起こったのです。



「あ〜今日日直だ…めんどくさいな」

机の上に乗った日誌を見て、あたしは思わず溜め息をついた。
日直の仕事…結構多いんだよね。

「……日誌なんて6時間目に終わったら全部まとめて書いちゃえ」

ということに決定。
あとは、黒板消し、教室移動の際の消灯、放課後の窓閉めetc.
はぁ…憂鬱。


でも曜日的に意外と楽な日だったらしく。

一時間目は体育だった。
教室の電気を消すだけ。楽チン。

二時間目は理科だった。
理科室だったので、やはり何もなし。

三時間目は技術。
技術室でやったので何もなし。

四時間目は家庭科。
家庭科室です、例の如く。

給食食べて、五時間目。
英語の授業。
喋ってばっかで黒板を使わなかった。

そして六時間目の数学。
ここで、初めて黒板を使った。


うちのクラスのいつもの進め方としては、
六時間目が終わるとショートホームルームがあって、
掃除がある人は掃除へ、
他に何か仕事がある人はそれ、
帰る人は帰る…という流れ。

だから、とりあえずショートホームルーム開始までは日誌を書いた。
ちょっとうろ覚えの所は適当だけど、ま、いっか。


「起立、礼――」
「「さようなら〜」」

学級委員の大石君の号令で、みんなバラバラと散らばりだす。
あたしは黒板消しを…と思ったけどその前に日誌を終わらせちゃおっと。

と思った時。

「今日の日直誰だ?」
「あ、はい」
「ちょっとこの箱を職員室まで持っていってくれないか」
「はい、わかりました…」

先生にお使いを頼まれて、
なにやら箱を職員室まで持っていった。
そして行く途中に気付いたけど
日誌とか全部終わらせて帰り際に持ってけば良かったんじゃないの?
とほほ…。

とりあえず、お使いは終了。
…と思ったら突然国語の先生に文学の良さを語られてしまい。
教室に帰ったらもう掃除は終わっていた。

「もう、あの先生ったら…」

とりあえず、日誌を書く。
独りでいると、いつも賑わっている教室はとても静かだった。

時計がコツコツと時を刻む。

「終わった!と。あとは…」

黒板消しか。
黒板には今日の授業でやった方程式やら何やらがたくさん書き込まれていた。
まあ、すぐ消しちゃうから関係ないんだけど。

「よいしょっと」

とりあえず、消し始めた。
そして、10秒ほど経って固まった。

「…上のほう届かないし……」

なんで、なんでなんで!?
いくらなんでも酷くない…。
確かにあたしは背が低いけどさ、
あたしより背が低い人だってきっといるでしょう!?
そういう人のことを考えて設計して欲しいよね…。

「…もう」

仕方なく、あたしはピョンピョン飛び跳ねながら黒板を消した。
でも、上手く消すことは出来なかった。

「う〜…」

ちょっと苛付いてきた、その時。

「大丈夫?」
「はぇ!?」

廊下の方から投げ掛けられた声に、とても驚いた。

「お、大石君!!」
「ん?」
「ど、どうしてここに!?」
「いや、学級委員の仕事でね」

なんとそこにいたのは、大石君だったのです。
まさかまだ人が残ってたとは…。
すごく驚いた。

でも、本当に驚いただけ?
心臓がドキドキする他に、
どうして顔が熱くなるの――?


「貸して」
「あ、うん」

黒板消しを渡すと、
大石君は軽々と黒板を隅々まで消してくれた。

「…はい、終わり」
「あ…ありがとう…」

あたしは思わずポーっとしてしまった。
予定外の展開に、放心状態に陥っていた。

すると、大石君はくすくすと笑い出した。

「ど、どうしたの?」
「いや、実はさ…ずっと黙ってたけど」

大石君は黒板の下についてるレバーのようなものを下げた。
すると、黒板もそれにあわせてスライドした。

「!?」
「この黒板、高さ調節できるんだよね」
「ウソ〜!」

もう、恥ずかしさの頂点。
そ、そんなハイテクな黒板だったとわ…。
そういえば、2年生までの教室とは作りが違うと思ったら…。
黒板まで違ったんだ。
でもなんで今まで気付かなかったんだろう!?

「どうしてもっと早く言ってくれなかったの!?」

恥ずかしさの余り、あたしは大石君に突っ掛かってしまった。
顔が真っ赤なのはわかってた。
大石君は、少し笑いながら言った。

「いや、さんあんまりに可愛かったから……あ」
「あ」



今、なんと…?


動揺の余り、一緒に「あ」とか言っちゃうし。
でも、確かに今大石君は言った。


「今、なんて……?」
「いや……その…」

大石君の顔も、少し赤くなっていた。
そして、言われた。

「実は、さんのこと、前から可愛いなって…」
「………」

あたしは開いた口が塞がらなかった。
ほんとにポカンと口を開けたまま、
あたしはずるりと床に座り込んだ。

「あっ、ゴメン!!突然こんなこと…」

大石君は焦ってあたしの前にしゃがみ込んだ。
あたしは意識が一瞬遠退きそうになったのを必死に保った。

「ううん、ありがとう…。あたしも、きっと、大石君のこと…」

場の流れに任せた。
心臓がバクバクいって死にそうだったけど、
それを抑えて、ゆっくりと言った。

「スキです……!」

ついこの間まで、好きな人が出来たことすらなかったのに。
というか、今日まで本当に好きなのかもわかってなかったのに。

でも、間違いなくあたしは大石君に、恋をしました。
確信したのは、自分の口が動いたあと。


「…俺も好きだよ」

大石君は、そういうとあたしのこと抱き締めてくれた。

すごく、温かかった。
温かいのに、涙が出てきた。
温かいから、出てくるの…?


「…泣かないでくれよ」
「だ、だってぇ〜…」

どうしてかはわからないけど、涙がぽろぽろ零れた。
大石君は、胸を貸してくれた。

とても、幸せな瞬間だった。



そのまま、あたしたちは付き合うことになった。
なんだか信じられなかった、
昨日のあたしからじゃ。
でも、これが現実。

告白したら、終わりじゃない。
あたしの恋は、そこから始まった――。






















正直「やってろ(怒)」という感じですねv(ぉ
題名は保存する時どうでもいいから付けたのを、
そのまま面倒で採用。(笑)
少女漫画もいいところだぜ。HAHA。(何)

クラスの男子。
もと同じ学校の人をモデルにしてみた。
ちょっとウソ入ってるけど。あはは。
わかる人は3人ぐらいしかいないと思うんですけどね、
これ読んでる中には。
まあいいや。関係ないし。(いじけ気味)

読み返すたびに頭を掻き毟る我。(危)
だってなんだこの小説わ。。
甘い…甘すぎる…。(怯)


2002/09/08