* オレンジ *
先生に言われて組み始めたコンビ。
でも全然上手くいかなくて…。
「英二」
「大石…」
「どうした?」
「ん…今日もさ、ダブルスの練習やったけど…上手くいかなかったじゃん?
なんか…悔しくってさ……」
部活が終わったあと、部室でボーっとしていると、
鍵閉め当番の大石が来た。
大石は、3年生が引退して副部長になった。
色々忙しいみたいだけど、いつも笑顔だ。
そんなオレたちは、ダブルスのコンビを組むことになった。
竜崎先生に指名されて決定した。
ダブルスは、シングルスとはまた違う楽しさがあるのかなって、
すっごいドキドキした。
でも、実際やってみると、すっごく難しくって。
なかなか上手くいかないもどかしさでいっぱいだった。
「初めだけだよ。そのうち慣れてくるさ」
「ん…でもさ……」
大石は優しく声を掛けてくれた。
でも、それすらも痛く感じる。
「だって…大石は前まで先輩と組んでてさ、ちゃんと形になってて…。
オレが入ったら、めちゃくちゃになっちゃって……」
「英二…」
「悔しいよ…」
オレは下を向いてギュッと目を瞑った。
涙が出そうになったのを、必死に堪えた。
そんなオレを見て、大石はゆっくりと喋りだした。
「…英二」
「なに?」
「これから時間あるか?」
「え…どうして?」
「ちょっと行きたい所があるんだ……」
大石に連れてこられたのは、
町外れの一角。
何もわからぬまま、ただ大石の背中だけを見て、歩いてきた。
そこにつくと、大石は振り返って言った。
「着いたよ」
「……」
初め、何も無いじゃん、って思った。
そしたら、大石はコンテナの上に登った。
そしてオレも登るように促した。
「登っておいでよ」
「…うん」
上に登ると、
見えたのは橙(オレンジ)。
「……」
「綺麗だろ?」
「うん…」
空一面が、オレンジ色に輝いていた。
今までは大石の背中しか見てなくて気付かなかったけど、
少し小高いコンテナの上。
世界が開けた感じで、
大きな大きな夕日が見えた。
「よいしょっと」
「……」
座り込む大石の隣にオレも座り込んだ。
二人肩を並べて、夕日を見た。
大きな大きな夕陽だった。
「ここ、俺が一番好きな場所なんだ」
「うん…素敵な場所だね」
「今までさ、悩み事とか…辛いことがあったときは、よくここに来てたんだ」
「……」
夕日を見たまま、大石は話を続けた。
オレは夕日がまぶしくなって、視線を下に下ろした。
「ここに来てさ、こうやって夕日を見てると…なんか、
自分の悩みってなんてちっぽけなんだろうって思うんだ」
「…」
「前もさ、先輩とダブルス組んでたとき…やっぱ初めは失敗ばかりで、
よくここに来たもんだよ」
大石の顔を見た。
夕日が照りつけて、綺麗なオレンジ色だった。
オレの顔も、同じ色に光ってる?
「初めは、誰だって失敗するんだよ。初めから出来る人なんていないさ。
俺もそうだった。いや、今でもそうだ。失敗ばかりだよ」
「えっ、そんなこと無いよ。失敗してるのは…オレばっか…」
「だから」
大石はオレの額に指をこつんと当てた。
「俺たちコンビだろ?失敗は一人の責任じゃない。
カバーできなかった、俺の責任だってあるんだよ」
「……」
「二人で、頑張っていこう?そりゃ、失敗だってたくさんあるよ。
でも、一つ一つ改善していけば…きっと、上手くいくさ!」
「大石……」
「な?」
「うん!」
微笑みかけてきた大石に、オレは笑い返した。
そうだね。
誰だって失敗はあるよね。
それを乗り越えて、人は強くなるんだから。
二人力を合わせれば、
きっと、大丈夫だね……。
大石・菊丸ペアから黄金ペアになるまで、
って感じですね。
嫌がらせかのように友人のメールに執筆。
黄金誕生秘話について語ってたら
いつの間にか小説になってた。(笑)
激しく妄想。
でも黄金誕生秘話は許斐先生がやってくれると信じてますので。(勝手に)
まあ、自分の考えたのとギャップに驚くのも有りです。きっと。
コンテナが学校から歩いていける位置ににあるのか謎。
まあこの際気にしない!(ぉ
大石のお気に入りスポットだったのを
英二さんと二人で行くようになった〜という設定。そんだけ。
2002/08/29