* ハジメテノヨル *












『ピンポーン』


家にチャイムが鳴り響いた。
土曜の夕方のことだった―――。



俺が部活から帰ると、親戚の家に行くとかで家族みんなは出掛けていた。
俺は家に残ったので、一日限定一人暮らしとなった。
一人っきりというのは意外と珍しいもので、
独り物思いにふけっていたところだった。


「(…誰だろう、新聞の集金か何かかな)」

そんな事を考えながらドアを開けると、そこにいたのは…。

「…英二」
「えっへへ…」


なんと、うちにきたのは英二だった。
まさか来るとは思わなかったので結構驚いた。
しかも、何故だか大きなカバン。

「珍しいな、連絡なしに来るなんて。ま、とりあえず上がって」
「…ね、大石ぃ」
「……どうした?」

心なしか、甘い声。
甘えているような声は、何か言いたいことがある時とかお願いごとがある時だ。
また何か問題でも持ちかけてきたのか?

「うん…今日さ、えぇ〜っと…」

しかし英二は口をモゴモゴさせてはっきりと用件をいおうとしない。
指同士を合わせて、視線を泳がせている。

「どうした?何かあるのか?」
「あのね…大石の家に、泊めてもらいたいな、って。へへへ…」
「…はぁ!?」

照れ笑いをして頭の後ろを掻く英二に、思わずマヌケな声を出してしまう。

「どうしたんだ、突然?」

俺は戸惑った。
だって、そんな事を言ってくるとは思わなかったから。

そうか、大きな荷物はそういうことだったのか。

「うん…兄ちゃんとケンカして、出てきちゃった;」
「………」

思わず脱力。
英二のところの兄弟は仲良いと思ってたが、
ケンカすることもあるんだな。
ま、当たり前だろうけど。

「まあ、とりあえず上がれよ。話はゆっくり聴くよ」
「うんにゃ。おっ邪魔しまぁ〜すっ」




その後、俺は英二にここまでのいきさつを全て聴いた。

「…そんなことで家出してきたのか?」
「そんなことって!大石ひっどぉ〜い!
 俺にしてみればすっごい重要なことなんだから!!!」
「悪い悪い;」

話を聴いてみれば、簡単にいうとつまりは
テレビの取り合いらしい。
その理由に、日頃のことを色々といわれたので怒っているらしい。

「この前朝食当番だったのに寝坊しちゃった時のことまだ言ってるんだよ?
 オレちゃんと謝ったのにぃ〜」

そのことは一生懸命で話している英二が可愛くて、思わず笑ってしまった。
愚痴は続いている。
取り合えず落ち着くまで聞いてやるしかないだろう。

「確かにこの前英語の点数悪かったけどさ〜関係ないじゃんね〜。
 勉強しろしろって何なのさ!あ〜もう!!」

英二は突然叫びながら立ち上がると、またゆっくりと座り直した。

「とりあえず、オレは今日絶っ対帰んないかんね!」

オレの決心は絶対だ!と英二は言った。

「でも英二、家の人は心配してないのか?」
「大丈夫だよ、たぶん…」
「……そうか」

一瞬沈黙しかけた時。

『…グゥ』

「あ…/// お腹鳴っちゃった;」
「そろそろ夕食にするか?」
「えへへ、ごめん」

今日の夕食は、カレーだった。
もともと鍋に作ってあったのを、温めるだけだ。
ご飯は炊けている。


「ほい。お待たせ」
「わ〜い♪カレーだv いっただっきまぁ〜す!」

英二は、美味しそうにカレーにパクついた。
…これも良かったのかもな、俺としても。
本当なら一人で食べているはずだったのだから。

二人食べる食事は、楽しかった。



「ごちそう様でしたっ!あ〜美味しかった♪」

英二は満足そうな顔でお腹を一回叩いた。
マンプクマンプク、という呟きが聞こえた。
俺も、さっさと洗い物を済ませてしまう。
時刻は、8時を過ぎようとしているところだった。

「英二、ホントにいいのか?連絡ぐらいしたほうが良いんじゃないのか?」
「ゔぅ〜〜…」

その時、電話が鳴った。

「ちょっとゴメンな」

俺は英二に軽く声を掛けて立ち上がった。
電話に出た。相手は…。

「もしもし」

・・・。

「あ、こんばんは。……いえいえこちらこそ!
 はい、そうですね。はい」

英二、わかったかな?
電話の相手が誰かってことに。

「はい、そうです。…はい。…ちょっとお待ちください」

保留のボタンを押す。
英二はダレ?という顔でこっちを見てきた
わかってないのか…。

不思議そうな顔をする英字に、答えてやった。

「お母さんだよ、英二の」
「にゃっ!?ウソ!!!」
「ほんと。」
「えぇ〜どうしよ、大石何とかしてぇ〜!オレ今帰りたくないよ〜」
「………」

俺は、英二のこの顔に弱い。
自覚はある。けど、どうしても負けてしまう。
軽く溜め息をついて、保留のボタンをもう一度押す。

「もしもし。はい、あの〜英二君なんですけど、いやいや!大丈夫です。
 はい。もう夜も遅いですし、このまま泊っていっても…。
 ……いや、そんなことないです。
 はい、本当に大丈夫ですので。はい。…はいわかりました。
 それじゃ、失礼します。……」

カチャンと受話器を戻す。

「いいのか、これで」
「大OK〜♪」

英二は両手で頭の上に大きな丸を作って見せた。

「ありがとっ、大石♪」
「………」

よりすがるような目にも弱いけど、
でも、俺はやっぱり英二のこの笑顔に一番弱かった。
何だか、何もかも許せてしまうのだ。

…甘いな、俺も。


「ところでさぁ、今思ったんだけど、大石のお母さん達は?」

・・・。

「今、気付いたのか?」
「うん」
「……;」
「にゃんだよその目はぁ!!!」

英二らしいといえば英二らしいかな、と思いながら言った。

「うちの家族は俺除いて全員、親戚の家に行ったよ」
「…えっ?」
「うん」
「じゃあさ…オレたち今家に2人っきりって、こと…?」
「あ」

……。
俺もそんなこと考えてなかった。
そうか、それもそうだよな。
確かに、二人きりだ。
しかも、明日は休みだし…って何考えてんだ俺は///!

「…ね、大石、オレさ、お風呂入りたいんだけど、いい?」
「え?ああ、うん。じゃ、先入りなよ」
「ありがと」
「……」

英二がいなくなった後も、俺は冷静さを保つのに大変だった。
だって、二人っきりって…色々と問題あるんじゃないのか?
…男同士だから問題ないか。

………男同士だから問題あるのか?



「おっ先〜」
「お、上がったか」
「大石んちのお風呂広いね!びっくりしちゃった」
「そうかな?」

そんなことを言って、英二は隣に座ってきた。
風呂上がりの、石けんのいい香り。
お湯の温度で微かに赤らんでいる頬。

隣に座っているだけで、自分の鼓動が伝わりそうなほどに脈打っている。


…ヤバイ。


「それじゃ、俺も入ってきて良いかな?」
「うんにゃ。わかった。そんじゃ、オレ大石の部屋にいてもいい?」

背を向けたまま頷いた。
だって、今自分の顔がすごく赤いのがわかったから。
そっちを向けなかった。



「ふぅーっ」

思わず溜め息をつく。
そして、お湯で顔を洗った。
天井を見上げる。
湯気が上に上っていった。


どうしちゃったんだ…。なんだか、
二人きりってわかったときから突然意識し出しちゃって…。

「いけないいけない。平常心、平常心!」

自分に言い聞かせて、風呂から上がった。




「おぅ大石!結構長風呂だったね♪いつもこんな感じ?」
「いや、ちょっと考えごと」

部屋に戻ってみると、英二はいつもの無邪気な笑顔だった。
そうだよな、何も起こりはしないさ。
英二もいつも通りだし、俺もいつも通りにしていればいいんだ。
それだけのこと…。

「にゃに?なんか悩み事でもあるの?
 あんまり考え込むと体に悪いよ〜。オレだったら相談に乗るけど?」
「ありがとう。でも、大丈夫だ」
「あそ。」

だって、悩みの種に相談に乗ってもらうわけにはいかないだろう?
…全く、胃の痛くなるような話だ。

「えと…オレどこで寝ればいいの?」
「あ、英二は俺のベットで寝て良いよ。俺は床で布団で寝るから」
「ありがと。…わ〜い♪大石のベットだ!」
「コラコラ」

ちょっと、状況が状況なだけに笑えない。
…とりあえず作り笑い。平常心、平常心。


「よっと」
母さんの部屋から、布団を一枚拝借してくる。
そして、ベットの横の床に並べる。
布団を敷いていると、英二が言った。

「にゃんか…修学旅行みたいで楽しいね♪」
「そうかもな」

こっちは神経擦り切れそうだけど…とは言えなかった。

「それじゃ、電気消すぞ」
「えぇ!?もう寝るの!?もっとお話しようよ〜」
「…寝ながらでも話せるだろ」
「あ、そっか」

英二も納得したようなので、蛍光灯のランプを落とす。
カーテンの隙間から入り込んでくる月明かりがキレイだった。

「…んで?何のお話するの?」
「別に、決まってはないけど…」
「んじゃ、修学旅行の定番、好きな人の話から♪」

英二は、妙なほどに乗り気だった。
もう既に何でうちにきたのか忘れてるな、こりゃ。

「なんじゃそりゃ。別に修学旅行じゃないだろ」
「いいじゃんいいじゃん♪大石はさ、好きな女の子とかいないの?」
「好きな女の子〜?…今のところは特にはいないなぁ」
「そっかぁ。実はオレもいないんだよね。
 可愛いと思う子とかはいるけどさ、好きな人って感じじゃないんだよね〜」

今はテニス一筋だし?と英二は付け加えた。
俺もそうかな、と言っておいた。
でもまさか、テニスをすることで好きな人とは繋がってます、
とは流石に言えなかった。

…言える筈もない。


そんな時、英二がこんなことを言った。


「あんさ…オレの好きな人って、大石かもな」
「えっ?」

ドキン、と心臓が高鳴るのを感じた。
まさかそんなことを言われるとは心にも思っていなかったから。

「だって、一緒にいると楽しいし♪」
「おいおい、それは好きな人とは全然違うだろう?」

もう、俺は冷静さを保つので必死である。
英二に言った言葉だが、半分は自分を落ち着かせるためだった。


でも、ま、そんなもんだろ。
英二だって、そういう気持ちだ。
楽しいとか、その程度。
どうって事はない…。


「…でもね」
「え?」
「それだけじゃないんだ。なんていうか…」

英二が一瞬言葉をためらった。
なんだか、その喋り口調が妙に色っぽくて、思わず聞き入ってしまった。
鼓動は、普段より確かに早く、テンポ良く波打っている。

「……」
「大石と一緒にいるとさ、」
「?」
「ドキドキする…」

『――ドクン』

「エイ…ジ……」

強かな心臓の高鳴りを感じた。
薄闇のなか、英二がベットから身を乗り出して
こっちを見てきているのがわかる。

「ねぇ、オレっておかしいのかな…?」
「……」

俺は、何も答えることが出来なかった。
ただ、ぼんやりと映る英二の瞳だけを見ていた。

「……」

俺が何も答えないでいると、英二もまた寝直したようだった。
沈黙が辺りを包む。

 ・・・・・・。

どうして、こんなことになっているんだろう。
頭中考えを張り巡らすが、錯乱状態に陥っていて全く何もわからなかった。

カチカチと時計の時を刻む音が、部屋に響く。
それよりも速いペースで、刻まれていく心音。
この音は、英二には届いていないのだろうか。
少なくとも、俺の頭は“ドクドクドクドク”と、心臓が力強く血液を
送り出している音で一杯だった。
気が狂いそうだった。
それでも、とりあえず黙ってじっとしていた。


…黙り込んでからどれ位経っただろう。
数秒しか経っていない気もすれば、何十分も前にも感じられる。
実際は、数分前なのだと思う、きっと。
でも、時間の感覚が全く掴めなかった。何しろ、
今、自分が、いつ、どこで、いかなる理由で、何をしているのか、
さえわからなくなっている状況なのだから…。

とりあえず、気持ちを落ち着かせて寝ようとしたとき、英二の声がした。

「…大石?……寝ちゃった?」
「いや、…起きてる」
「あのさ…」
「ん?」
「そっち行っても、いい?」
「ああ」

気付いたら、ためらう事無くそう答えていた。
何も考えていやしなかった。
でも、それで良かった、のだと思う。多分。きっと。
英二がベットから降りてきて、俺の隣りに来て、布団の中に潜った。

「あったかい…」
「……」

俺も、背中に人の体温を感じながら、固まっていた。
というよりか、動けなかった。

「おおいし?」
「ん?」

英二の方を振り向くと、20cmと離れていない位置に顔があった。
唯一の救いは、顔が赤くなっているのも、
暗い中なので向こうは気付かないだろう、ということだ。

でも、この距離。
さすがに、ヤバイ…。

「大石はさ」
「なに?」

英二は、顔だけを立てた状態で言ってきた。

「オレのこと、好き?」
「え…!?」
「スキ?」

喋るたびに、吐息が鼻にかかった。
もうダメだった。
自分に正直になるしかなかった。
表向きの顔なんて、作っている余裕がなかった。

「俺は…英二の事が……スキだ。誰よりも…」
「良かった…」

すると英二は起き上がって、
正座のちょっと崩したような座り方の状態で、言った。

「だったらさ、オレ…大石と一緒に…なりたいヨ……」
「英……」

俺も起き上がって、英二と視線の高さを合わす。
はっきりとは見えなかったが、
英二の目には涙が溜まっているようにも見えた。

「一つに…なろ?」
「英二…」


英二は、静かに眼を閉じた。

もう、どうなろうと、知らない。
今はただ、目の前にいる英二の事しか頭にはない。


そっと顔を近づけて、唇同士を合わせる。
触れるだけの、軽い、優しいキス。
顔を離すと、英二の頬には涙が伝っていることに気付いた。

…ゴメン。
俺、自分のことばかりで、気付いてやれなかったんだな。
そうだ。
英二だって、苦しかったんだよな。


「後悔…しないな?」

コクンと頷くのを確認して、俺は英二のパジャマのボタンに手を掛けた。



  **



「んっ……」

英二の肌に痕を付けていく。
始めは、首筋。
自分のモノだと示すかのような赤い痕を、順々に。

唇が肌に吸い付くたびに、英二は甘い声を漏らしていた。

「ひゃぁっ……!」

鎖骨を舌でなぞると、可愛らしい声が唇から零れる。
それでまた、俺の気分も高まる。

「おぉぃ…し…」

英二は、俺の首に腕を回してきた。
直に伝わる、英二の体温。

「英二…」

俺は痕をつけるのを止め、英二の唇に自分の唇を合わせた。

さっきとは、明らかに違うキス。
もっと長くて、強くて、深くて。
俺が舌を侵入させると、英二はそれに本能的に自分のものを絡めてきた。
お互いの口内で、唾液が混ざり合い、くちゃくちゃと淫猥な音をたてる。

「んっ…ふ……」

口内に含みきれなくなった唾液は、頬を伝う。
それと同時に、甘い吐息も零れる。

「……はぁっ…」

口を離すと、銀色の糸がお互いの口から口へ伝った。
我ながら卑猥な光景に、少々身震いさえした。

でも自分の前にいるのは、ダブルスのパートナーで。
男同士で、本当は恋愛感情なんて持ってはいけない。
それでも…。


「おおい、し……」
「どうした?」
「……ダイスキ」
「…俺もだ」

それでも、自分の気持ちに嘘は吐けなかった。

英二が首に回してきた腕により一層力が入った。
その状態のまま、俺は英二の背中に腕を回して抱え上げた。
その軽さに一瞬驚きさえした。
でも確かに、英二の全身は俺の腕の中にいる…。
そう思うと、なんともこそばゆい様な感情が芽生えた。

俺は英二をベットにそのまま寝かすと、また続きを始めた…。




首筋から、鎖骨、そして胸元へと痕を付ける。
その位置は段々と下がっていって、そしてついに胸の突起を口に咥える。

「はぁんっ………!」

そして、そのままそれを舌でコロコロと弄んだ。
そうしているうちにも、それは熱く硬くなっていく。

「あぁ!ふ…ぅうん」

空いている方の手では、もう片方の突起を摘み上げた。
軽く抓ると、英二は身体を鞭の様にしならせた。

「やぁぁっ!…あっ…ダメ……!」

舌先だけでなく全体を絡めれば、大きな声を漏らしていた。

英二の体中はもう既に完全に熱くなっているのがわかった。
胸の突起物もそれを示すかのように赤く、そして隆起していた。

今度は反対側のものを加えると、
カリ、と歯を立てて軽く噛んでみせた。

「! ああああぁっ……っ…」

英二の声が部屋中に響く。
いつもより高くて、泣きそうな声。
それを聞くと、なんともやりきれない感情がこみ上げてきた。


 ヒトハコレヲヨクボウトヨブ


「あっ……ぉおいし……」

英二の頬には、幾筋もの涙が流れていたことに気付いた。

「英二…大丈夫か?」
「へい、き……。一緒に、いこうね…」

英二は、目に涙を浮かべて息切れしながらもにこっと笑った。
俺もそれに対して微笑んだ、
そして、「脱がすぞ?」と一言確認を添えて、ズボンも脱がしにかかった。



ズボンを脱がすと、英二のソコは既にかなり膨らんでいた。
ソレに軽く触れた。

「すごいな、英二」
「やだ…ハズカシイ……」

英二は、恥ずかしさからか、体を少し背け、腕を顔の前に持ってきていた。

「恥ずかしいとか…そんなこと今に考えられなくなるから」
「え?……やんっ!」

英二は一瞬不思議そうな顔をしたけど、
瞬間的に大きな快楽に飲まれたようで、思わず声を上げていた。

膨れ上がったモノを手で軽く握ると、前後に動かしてみせた。
その速度を速くしていくのと比例して、英二の声も大きくなっていった。

「やぁっ!おおい……あぁっ!そんなことされたら…オレ、イっちゃ……ぁっ」
「いいよ、イっても」
「ふぁ…ダメ………ぁん!」

英二は一瞬身体を小さく震わすと、辺りに白い液体を撒き散らして果てた。


「ぅ……」

英二は、快楽に飲み込まれると同時に妙な脱力感を覚え、力なく萎えていた。
俺は、そんな英二をうつ伏せの状態に寝かせた。
そして、耳元で囁いた。

「指、挿れるぞ」
「え?ちょっと待っ…んぐぅ!」

英二のソコはもう十分すぎるほどに濡れていた。
それでも、慣らしておかないと後から辛いだろうと思った。
もうすでに了承を得る前に指を入れていた。

そろそろ、自分も辛くなってきたからな…。


「大石!い、痛っ…」
「痛いか?我慢してくれ。
 もうすぐ、痛みも感じないほどになってくるから…」

英二の中に入れる指を一本ずつ増やしていく。
その度に、英二から零れる苦しそうな、でも消えそうな声。

暫くすると、3本の指の第一間接から根元までが穴の中を往復している状態になっていた。

「おおいし!もぉ、これ以上は、だ、ダメェェェ!」

英二が叫ぶのを聞いて、俺は指を全て同時に引き抜いた。


「はんっ……」

その瞬間、英二は一瞬仰け反った。
顔は、既に涙でぐしゃぐしゃだった。
少し心配になって、全身をビクビクと震わせている英二に声を掛けた。

「大丈夫か?英二、痛かったか?」

すると、英二はふるふると首を横に振った。

「平気、だよ。……気持ち、良かった…」


英二は少し笑った。
その笑顔を見ると、とてつもなく落ち着いた。

俺は今度は自分のモノを取り出した。
もう既にソレはパンパンに膨らみ、痛いほどだった。
それを見ると、英二はベットから降りて俺の前に膝をついて座った。

「英二?」

俺は英二の行動が一瞬理解できなかった。
何故ベッドから降りてくるのか。
そして何故俺の前に座っているのか。

頭の中を整理しようとしているうちに、英二は露になった俺自身に、おもむろにしゃぶり付いた。
そして、柔らかな手で包まれる。

「エイ…ジ……んっ…」


驚いた。
まさか、英二がそんなことをするとは思わなくて…。

すると、英二は一瞬口を離して、でも手は止めずに、言った。

「今度は、オレが大石を気持ち良くさせてあげる…」
「エイジ…」

少し、熱っぽい眼をしていた。
熱く、強い眼差し。

英二は俺を咥えなおすと、そっと顔を前後させた。
手も同じくして動く。
英二の柔らかな手と口に包まれ、俺の気分は絶頂に達していた。

「っ…エイ、ジ……!気持ち、良いよ…」

英二は、手を動かすスピードを変えてみたり、
深く咥え直しては先端を舌で弄んだりと、
色々な方法で楽しませてくれた。
俺も、その一つ一つに感じてしまう。

「んっ…エイ、ジ……ぁっ」

その快楽の中、俺の頭の中は真っ白だった。

「エイ、ジ…!……っゴメン!」
「!!」

俺は英二に全てを抛った。
それは英二の口内には含みきれず、口の周りに溢れるようにして飛び散った。

「…っゴホ、ゲホッ」
「ごめん、大丈夫か?英二」

突然のことで驚いてむせ込みそうになった英二だったが、
全てをゴクンと音を立てて飲み干すと、
口の周りについたソレもぺろりと舐めてみせた。

「…ゴチソウサマ」

英二はまた熱っぽい眼でこっちを見上げてきた。
これでやる気を起こさないはずがない。

俺は英二を抱え上げベットに座らせると、目を閉じて額に一つキスをした。
一瞬顔を離して眼を合わせると、にこっと笑ってコツンと額同士を当てる。

そして、もう一度。

―優しいキスだった。

そして最後の一つのキスは、とてつもなく深いものだった。

脳までおかしくなりそうな位、熱くて。
相手の舌を、貪り合って。
含みきれなくなった唾液が、頬を伝う。
お互いの息が熱くて、溶けそうになる。

自分が淫らなことをしていると解かっていながらも、止められなくて。
ただ、お互いを強く、強く求める。

口で繋がったまま、俺は英二をベットにそっと押し倒した。



「……挿れるぞ」

英二はコクンと頷いたが、眼には沢山の涙を浮かべており、
身体も小刻みに震えていた。

「……コワイのか?」

それもそうだろうな。
挿れられる方としては、激痛が走ると聞くし。
場合によっては出血を伴なうとかどうとか…。

でも、英二はにっこりと微笑んでみせた。

「大丈夫…コワくないよ。大石と一緒だったら…」

俺もそれに合わせて微笑むと、英二の目尻に溜まった雫を舌で掬った。

そして、さっきイったばかりだというのにもう既に反りきっている己自身を、英二へと運んだ。




先端を入り口に当て、少しずつ、奥に入れる。
少しずつ、少しずつ。
できるだけ痛みを感じないように。

それでも、やはり―――。


「ああっ!おおいし…っ!あぁん」
「大丈夫か、英二?」
「だい、じょぶ……くっ…」

英二は、大石に心配させまいと必死に歯を食い縛って痛みと闘っているみたいだった、
それでも眼からは涙がポロポロと溢れていた。

「ふ……ぅう…んっ……」
「英二、無理は、するなよ、…辛かったら、言えよ…?」
「うぅぅぅぅん!ああぁっ…」

英二は、既に返事をする余裕すらなかいみたいだった。
そういう俺も、英二のキツイ締め上げでかなりきていた。
本当は相手を気遣っている余裕など俺にはなかったのだが。
でも逆に、そうすることで必死に自分の意識を保っていた。

「ぁぁっおおいし、オオイシぃ!」
「どう、した、エイジ…」

お互い、息が上がっていた。
全身が熱くて、壊れそうだった。

「気持ち、良いよ……はぁん!」

だんだん痛みの和らいできた英二は、少しでも多く快楽を得ようと、更にキツく俺を締め上げていた。
それにより、俺の感度も上がる。

でも、俺はそれ以上奥には入れずに、逆に一気に引き抜いた。

「きゃふっ!?」

思いがけないことに、英二の声が裏返る。
それを聞いて、俺は英二の腰を固定したまま、また元の位置まで差し込んだ。

「あぁん…ぃぃ、いいよぉ!!!」

英二は、身体全体で感じようと、足を俺の腰の周りに絡めた。
俺もそれに合わせてさらに奥に進める。
とうとう一番奥まで差し込まれて、先端で最奥をコツコツと突付いた。

「やぁっ!…あ、ふっ、はん…」

その快楽に耐える余りか、英二は爪で俺の背中を引っ掻いていた。
でも、その痛みすら、俺は喜びとして感じでいた。

一つになって。
二人で、同じものを感じて。

この上ない至福だった。


「エイジ……動かすぞ?」
「動かし…て!はや…くっ!!!」

俺は、英二の細い腰に手を掛け押さえつけると、
自分の腰をいったん引いて、そして直後に奥まで一気に差し込んだ。

「! やぁぁぁぁぁっ!」

それを何度か繰り返しているうちに、
段々と限界が近付いてくるのがわかった。
それは、英二も同じようだった。

「はんっ、おおい…ん、ぉいし!オレ、もう、げんか…ひぁっ!」
「英二…俺も、そろそろ……くっ…」


お互いの荒い息遣いか、全身の肌で感じられた。
脈が大きく、速く、高く波打っている。

最後が来るまでに、そこからそう時間はかからなかった。

「も、ダメ…い、イクっおおいしぃ!!…ふわっ、ぁ……やっっ!」
「えいじ……ぁっ…、くっ…!」


俺たちはお互いの名前を高々と呼び上げた。

英二は俺のことをキツく締め上げた。

その刺激に耐え切れず俺は英二の中に白い欲望を吐き出し、
英二もまた同じモノを撒き散らして俺たちはほぼ同時に達した―――。




 ***




「う〜腰痛ぇ〜」
「仕方ないだろ?文句言っても」
「文句ってわけじゃにゃいけどさぁ…」

英二はソファに伏せた状態で寝てボソボソと呟いた。


俺たちは、その後そのまま裸で一つのベットで寝ていたらしい。
朝、目が覚めるととりあえずシャワーを浴びることにした。
英二はというと腰が痛くてほとんど動けない状態だったので、
俺が体中に付いていたものを流してあげたのだが。
……それを付けたのはほとんど俺なんだが。
その後すぐに、汚してしまったシーツなどの洗濯を始めた。
…みんなが帰ってくる前に何とかしないとえらいことになるからな。


「でもさぁ…これは兄ちゃんに感謝かな」

英二が言った。俺は素直に聞き返した。

「どうして?」
「だってさ、ケンカしなかったらオレここに来ること無かったじゃん?
 あ、それとも運命だったのかね〜」
「……;」

英二のペースには付いていけないな、と思った。
それでも、お互いの気持ちがはっきりとわかってよかったの知れないな、とも思った。
なんにしろ、昨日起こった出来事は、お互い忘れられないものになりそうだ。


「ねぇ大石?」
「ん?」
「もう一日泊めてくんない?」
「!?」
「だってこんなんじゃオレ家に帰れないよぅ〜」

出た、英二の必殺“すがり付く眼攻撃”!
でも、今回ばかりはそれを受け入れられなかった。

「ダメだ。今日はちゃんと家に帰りなさい」
「えぇ〜?ケチ〜」

それでも、今まで通りちゃんと話が出来て良かった、と思った。
これでギクシャクしたら、何か嫌だもんな。
そりゃ、少しは気恥ずかしさとかもあったけど。
でも、そんな関係も、いいんじゃないかな、
なぁ〜んて、思ってしまうのであった。


もう、後には戻れない。
でも、後悔はしていない。
一つの幸せを、二人で感じ合うのだって、いいだろう?
…な、英二……。






















書き直した。
全体的に修正して、
エロシーン(爆)をナレーター式から一人称に…直したともさ!(大泣)
当時は…まだエロ初挑戦ということもあり
一人称で書くのを拒否りましたが…。
全部修正。ひゅ〜;
途中泣きそうになった。
車付きの椅子で部屋中をガラガラ走り回って
苦悩しながら書いてた。(本気)
…大菊 for ever。(謎)

*プロト版はこちら


2002/08/24