* 月の終わり *

  -nightmare-












「……」

無言で歩く街中は、とても淋しく感じられて。
二人の間に包まれた静寂の中、思う。
人の命とは、こんなにも儚い物だったのかと。

…たまに通り過ぎる人々の視線も多少は気になったが、
それより今は…この握っている小さな手を放してしまったら、
何処か遠くへ行ってしまうのではないかと…何故か心配で。
お互い指を絡めたまま、しっかりと握り合い歩いた。

横にいる…不二は、一向に顔を上げる様子もなく、
ただただ下を向いて歩を進めていた。
二人の間に生まれる音は、たまに不二が肩を上げて鼻を啜る音だけだった。


「不二、着いたぞ」

家の前に着いて、初めて言葉を交わした。
初めて手を離した。
それでも、不二は動くことはなく。

「不二?」
「手塚…」

ようやく聞いた不二の声は、少し掠れていた。

「…どうした」

こちらの問い掛けにも答えず、無言で抱きついてきた。
その腕は細く、こもる力もまた弱かった。

「独りに…なりたくない……」

胸の中で聞こえた声は更に小さくて。
壊れそうなほど、弱くて。
それを突き放すことなど、出来るはずもなく。

「…うちに来るか?」

その問い掛けに対して、やはり無言で、でも確かに首は上下に揺すられた。
体をそっと離し、手を再び握り返す。
また静かに。
伸びていく自分の影を見つめながら。
沈む夕日に背を向け歩き出す。

静寂は、広く長く―――。







家には誰もいなかった。
静寂を破るのは、二人の時間。


服のボタンを手に掛けている間も、目の前にいるものは上の空。

「英二…」

涙の溜まった目でそう呟く。
それが、あまりに弱々しく見えて。

「なんで英二がっ…死ななきゃ…!」

呟きが叫びに変わっても、
何故か消えてしまいそうに聞こえて。
それが心配でならなかった。

「お前は…死ぬなよ」
「うん…手塚もね」

抱き付かれた腕が、細くて。

「俺は…お前のほうが心配だ」

抱き返した腰もまた、細くて。

「僕は…大丈夫」

そうは言われても、不安は取り消せない。
壊れてしまうのではないかと。
消えてしまうのではないかと。
いなくなってしまうのではないかと。
人とは…こんなにも脆いものだと、考えさせられる。


「ぁ……」

露わになった滑らかな肌に下を這わせる。
代償に、唇から零れる甘い声。

「はぁ…、てづ…か……」

白い肌に、赤い花が咲き乱れていく。
…こんなことをしながらも、不安が頭から離れない。

だからこそ、また更に、強く――。


「あっ!手塚…!!」
「不二…」


取り払えない不安。

離れてしまことが、怖い。

夜は続く。



静寂は、広く長く――――。







the daylight has changed to the darkness...
























塚不二っ!ぃよっっ!!(謎)
初です。普は不二塚派だったのに…。塚不二に方傾き気味。んが。
この話の不二さんは白い設定なので。白さを心がけた。
英二さんがいなくなって、さらにノスタルジー。
友達を真剣に想ってたんだよ。うっうっ。(しゃくり上げ)

…ハイ。
こんなのエロとは呼べませんけど。欠片。
せめてもの心に…。(謎)
気持ちエロ。なんだそりゃ。


2002/08/15