* 倒れて生まれた衝動 *
朝礼=ヒマなもの。
こんな方程式が、生徒達の中では自然とできてしまうものだ。
何もせずに立ちっぱなしの20分間は、
退屈以外の何物でもない。
あたしにとってもそうだった。
そうだったのだ。過去形。
今は違う。だって、
あたしの隣りにはあの人がいるから。
片想いの相手、桃こと桃城武君…。
入学した頃のあたしは、今より全然小さくて。
クラスの女子の中だけで見ても、せいぜい中の下。
でも、突然ぐんぐん伸びだして、今では後ろから2番目。
かなり大きくなりました!
もちろん桃よりは小さいけど、
背の順としては同じくらい。やったね!
実は、今はクラス違うんだけど、
7組女子と8組男子は隣同士なのです。
ちなみに反対側(つまり同じクラス)の男子はというと…
海堂薫君です。
第一印象が怖くて近付かない人もいるけど、
話してみると優しくて誠実な人です。
いつもぶっきらぼうな顔してるけど、
それはただ単に不器用で表情を表に出せないだけ…
とあたしは思ってる。うん。
そして何やらこの2人、同じテニス部なんだけど、
テニス部内では“天性のライバル”と呼ばれるほど
仲が悪いらしい。
ケンカするほど仲がいいとは言うけどね。
桃にそういったら、アイツとはホントに仲悪いんだ!って
怒られました。クスン。
さぁて、今週もお楽しみの朝礼の時間で〜す♪なんてね。
でも、桃が近くに来てから朝礼は何倍も楽しくなった。ほんとにね。
いっつも遅刻ギリギリで飛び込んでくる彼。
それを見るのも、また楽しみ。
今日も…ホラホラ。チャイム鳴り始めちゃったよ。
無論、まだ来ていない。
あ〜、鳴り終わるぞ〜…。
「おっしゃ!ギリチョンセーフっ!」
ほぅら。きたきた。
「おはよっ、今日もギリギリだね」
「間に合えばいいんだよ」
何気無い会話。この瞬間が、スキ。
生徒会の人の声で朝礼が始まる。
まずは生徒会長のお話だそうで。
こらこら。尊敬すべく部長の話だぞ。
アクビしてる場合じゃないでしょうが。
なんて思いながら、横顔を堪能。
ほんと楽しいわ。ふふっ。
…気付けば校長先生のありがた〜くてなっが〜いお話。
「やってらんねーな、やってらんねーよ」
「だよね」
ぽりぽりと頭を掻く桃。。
こんなちょっとした仕草でも、嬉しくなってしまうもの。
ああ…いいなぁ。
今日のあたしは機嫌がいいわ。
大人しく有難いお話でも聞いててやるか…。
…ちょっと待って、なんか、今日やけに長くない!?
立ちっぱなしって辛いんですけど…。
息苦しい…。
長時間立ってるもんだから
ちょっち気持ち悪くなってきたんですけど…校長さんよぅ。
ああ…そういえば聞いたことあるなぁ…。
成長期来た時とかって貧血起こしやすいって。
それですか?あ〜もうやだ。
終われ。終われ〜。終〜わ〜れ〜。
ハァ。思わず溜め息。
「今日なんか長くねぇ?」
「ね」
その通りっス桃城サン。
…ヤバイ。本気で辛い。
なんか大して暑くもないのに汗だくだし。
うわ…目の前が暗く……。
これは危険。たすけて。
「桃…あたし…」
「ん?」
世界が…ボヤーっと…。
『ダーン!』
「!?」
彼の呼ぶ声も、周りのざわつきも。
今では暗い夢の中。
****
「大丈夫か!?おい、!!!」
叫んでも、目を覚まさない。床に倒れこんだ、。
「…っくしょ!」
本当なら先生が来るのを待たなきゃいけないのかもしれないけど、
待っている時間が惜しかった。
俺は、辛そうに倒れているをそのまま抱き上げて保健室へ走った。
****
―――…ここはどこ?
消毒液の匂い。嫌われがちだけどあたしは結構好き。
ってことはここは……保健室?
…ああそうだ。
さっき朝礼中だったな。
んで、何か意識が遠くなって…そこまでだ。
倒れた、のか、多分。しくったな…。
……なんかお腹の上重い…。
「!?」
どういうこと?
あたしの上に、布団を隔てて、桃が…。
「スースー…」
寝てるよ。オイ。
今は…9:35。一時間目の終わりの頃だ。
もしかして…心配していてくれたのかな?
ここまで付き添ってくれた…の?
ウソ…。
すっごい嬉しいんだけど…。
でも、授業サボっちゃいかんだろう、武さん。
だけどやっぱり…。
「…ありがと」
起こさないように、こっそりと言った。
どうしよう…このままじゃ動けないよね。
…もっかい寝ちゃおっかな。
****
『キーンコーンカーンコーン…』
「ん?…ふわぁ〜よく寝た」
9:40?…一時間目サボっちまったな。まぁいいか。
「…可愛い寝顔も見れたしなv」
の前髪をそっと掻き分けてみる。
規則的なリズムの寝息が聞こえてくる。
「………」
『チュッ…』
整った形の額に、そっと軽くキスを落としてみた。
「……っと」
思わず、自分の口を自分で抑えた。
何やってんだろな、俺。
理由は、ない。
気付いたらしていたような感じ。
あえていうなら、したくなったから。
「体調には気を付けろよ」
そう一言残して、に背を向けて保健室を後にした。
『ドン』
「あっ、すんません」
保健室を出ると、丁度入ろうとした人にあたってしまった。
当たった肩を振り返ると…
「…んだよ。お前かよ」
「それはこっちのセリフだ」
マムシだった。
「オイ、てめぇ一時間目の体育サボっただろ」
もっともな一言。
そうか。
一時間目体育だったっけか。
合同だからバレちまったって訳か。ついてねーな。
「そういうお前はどうした?怪我でもしたってか?」
「…女子の保健委員が休みだから、代わりに…」
「あ、もしかして連れに来たのか?あいつ寝てるぞ」
「そんなに体調悪いのか!?熱があるとか…」
なんだ、こいつ…。
突然大声出しやがって。
「ただ単に寝てるだけだよ」
「そうか…ならいい」
…海堂の表情が一瞬緩んだ気がした。
ほんの少しだったけど。
こいつ、もしかして……。
「お前、もしかしてのこと…」
「ウルセェ!テメーには関係ねぇよ」
「っんだよ」
お…こりゃビンゴかな?
海堂の奴、ちょっと顔赤かったぞ。
そう思うと、せかせかと帰る背中が可愛く見えた。
「へへっ…弱味発見♪」
でも…。
「やっぱ俺はアイツとはライバルになる運命なのかね」
皮肉なこった。
気が合ってんだか合ってないんだか。
…合いたくもねーけどな。
「こればっかりは負けらんねぇよ。
…テニスでも負けねぇけどな」
****
……。
何?さっきの…。
…ゴメン、桃。
タヌキ寝入りしてました。
「……」
そっと、額に手を当ててみる。
思い出すだけで、また意識を失いそうになる。
「不意打ちだよ〜…」
でも、これって、ちょっとは期待してもいい…のかな?
何か、不思議な気分。
嬉しい…でも、心の奥がムズムズする。
だって、まだ直接は聞いてないから。
「よぉ〜し…待ってろよ!」
言わせてみせるから。
それとも…その前に自分が言っちゃうかな?
『…………!』
あれ?廊下から桃と海堂の声。
またケンカでもしてんのかな。
内容は聞こえないけど。
どんな話してんだろな。
ま、いっか。
……朝礼万歳。
桃BD祭第3弾!(誕生日既に関係ないけどな!)
ぷは〜。ちかれた〜!!
桃→主←海? 邪道;?
なんだかとある人物がこれを読んだら怒られそうです…。
ビビリつつもこっそりとアップ。
朝礼中倒れそうになった人を見て考えたネタ。(ぉ
お姫様抱っこが書きたかったvそんだけ。
文章にしちゃうとわかりにくいけどーー;
昔にルーズリーフに書いたのですが
修正加えつつパソに打ち込み。
こうしてみると昔のがヘぼく見える…。(汗)
でも、それってレベル上がったってこと?カナ?(不安げ)
2002/07/23