* 記念日 *












4月30日。今日は私の好きな人、大石君の誕生日です。
私の友達が大石君と仲良しの菊丸君に聞いてくれたの。
う〜…どうしよう。今からキンチョーしてるよ。

、中学3年の大決意!
今日、大石君に告白します!!
実は、プレゼントも用意してあるんだ。
手作りクッキーだけど、食べてくれるかなぁ…。
あ〜、キンチョーしちゃうよぉ!
どーしよーどーしよーどーしよー…。

ー、まだ時間平気なのー?」
「え?あ、大変!もうこんな時間!」

タイヘンタイヘン;おっと、プレゼントも忘れずにっと。

「行って来まーす!」

いつもと同じはずの朝。
でも、今日は何だか何もかもが嬉しく感じちゃう♪
少し上機嫌な私は、軽い足取りで学校へと足を進めるのだった。


『キーンコーンカーンコーン』
「ふう。ギリギリセーフ」

「はよっ、
「あっ、おはよーちゃん」

このこは親友のちゃん。
さっぱりしてて、すごくいい子なの。
大石君の誕生日を聞いてくれたのもこのこ。
ちゃんにはいろいろとお世話になってるんだ。

「今日は珍しく来るの遅いじゃん」
「えへへ;いろいろと考えてたら来るの遅くなっちゃって」
「いろいろと考えてたぁ?あ、そっか!今日だもんね、
  あんたの好きな大石のたんじょ…むぐぐ」
「シーッ!声が大きいよちゃん!」
「ゲホッ;ゴメンゴメン。つい…」
「もう!」

幸い、周りのみんなは喋ったりしてて私たちの話は
聞こえてなかったみたいだけど。とりあえず一安心。

「でもなんであんたも大石なのさ?
 手塚部長とかのほうがカッコ良くない?あたしファンなんだv」
「…ちゃん菊丸君のこと好きなんじゃないの?」
「バカッ!英二はただの友達だよ。
 …それに、あいつ大石にゾッコンだよ〜。
 とられちゃうかもよ?」
「やめてよ〜そういうこというの」
「あはは、冗談冗談」
「イジワル…」

でも、ちゃんはすごいな。男の子と友達なんて。
私なんか、普通に喋るだけで緊張しちゃうのに。
男嫌いってわけでもないと思うんだけど、何かダメなんだよね…。

「それにしても、あんたホントにおおい…;あの人のコト好きだよね」
「うん…」


私が始めて大石君を見たのは、2年の2学期。
青学は人も多いしクラスも多い。
同じクラスとか委員会とか部活に入らなきゃ、
顔すら知らない人も結構いる。
でも当然同じクラスになる確率も低いし、
部活は男子と女子が別れているものが多い。
やっぱり、係わり合いになる人は限られてるわけ。
私と大石君は、そういう関係だった。

でも、2年のとき。何故だか突然学級委員をやる事になって。
学級委員なんて初めてで、どうしたらいいのか全然わかんなくて。
そんなとき、大石君を見た。
学級委員なんて何度もやったことあるって感じで、
何事もてきぱきと進めてて。
それから、なんとな〜く気になって。

初めての学級委員会から数日後ぐらいに
ちゃんに誘われて男子テニス部を見に行って。

一目惚れ…ってことにはならないけど、ホントそんな感じで。



見た瞬間心臓がドキッてした。
本当に、他の誰よりもかっこよく見えた。
というか、私の目には大石君しか映ってなかった。

「ホラホラ、席着け!」
「あ、先生来ちった。そんじゃ」
「うん。また後でね」

ふう〜。ところでプレゼント、いつ渡そう?
体育館裏とか屋上とかに呼び出すわけ?
そ、そんな大それた事出来ないわ!!
靴箱とか机の中もな〜…入れるとき人に見られたら嫌だし。
ゔ〜ん。どうしよ〜…。

「…っ!」
「は、ハイ!」
「何ボケっとしてんの。次移動だよ」
「あ、うん」

……どうしましょ。



数学の授業中、あたしとちゃんは手紙交換をした。

『実は今日プレゼント持ってきたんだけど、いつ渡せばいいかな?』
『放課後に屋上とかじゃない?』
『そんなところに呼び出すなんて出来ないよ!』
『何ならそういうシチュエーション作りしてあげようか?
英二も協力してもらって。』
『うん、ありがとう。…でも、これは自分の事だからやっぱ自分で何とかするよ。』
『そう?そんじゃ、頑張ってね。応援してるからさ。』

う〜ん。どうしようかなぁ。
やっぱり協力してもらえばよかったかな…。
でも、そうすると断られた時淋しいし;なんか悪いよね。
…よし!昼休みの時独りのところを見つけて逃げよう!
内気な私にはそれが精一杯だわ;


――昼休み。

「3年2組ーっと。」

大石君のクラスは、10組のうちのクラスからは結構離れている。
何個もの教室の前を越して、やっとついた。

「…アレ?」

教室の中を見回したけど大石君の姿は見当たらない。

「う〜ん…図書室とか?」

…いません。

「え〜?委員会の仕事でもあるのかなぁ?」

……。あ。

「そうだ、テニス部昼休みにも練習あるんだった…」


よし。決めた。放課後にしよう。
掃除が終わって部活に向かう最中が狙い目ね。


――放課後。

今日は私は掃除はないし、後は大石君がここをとおるのを待つだけ…。
あ、友達と一緒だったらどうしよう…;

『ピンポンパンポーン♪ 連絡します。体育祭委員の生徒は、
 至急多目的室へ集まってください。 繰り返します、体育祭委員会の生徒は…』

「えっ!?うそ〜!!」

そう。実は私体育祭委員なの。
本当はまた学級委員をやりたかったんだけど(大石君はまたやるだろうから)、
他にも立候補者がいたから、体育祭委員に入る事に決めたの。

「こんなときにあるなんて〜」

学級委員はって放送でいってないから、ないだろうし。
でも、仕方ないよね。う〜…早く終わってくれますよ〜に!


――願いは通じなかった。
話し合いが予想以上に長引いてしまったのだ。
窓からはもう部活が終わって帰っていく生徒も見える。

…ん?あれは、テニス部の人じゃない!あ、たくさん帰ってくよ;
大変、もう部活終わっちゃったみたい。
大石君帰っちゃうよ〜。
早く〜早く〜;;


「それでは、これにて第1回体育祭実行委員会を終わります。――礼」

あ〜んもう!こんな日に限って委員会があるなんて。

私は、校舎の中を駆け抜け、急いで靴を履いて走りにくいローファーで
出来る限り速く走った。でも…。

「誰もいないよね…」

思わず独りで呟いてしまった。

もう日は半分沈みかけ、空はオレンジ色に染まっている。
テニスコートの中には当然誰もいない。
ネットやボールも片付けられていて、どこにも見当たらない。
そこは、ガランとしていて人なんてどこにも…。

『ガチャッ』
「!?」

不審な物音に振り向くと、部室の前に1つの人影。
コート内と部室内の最終チェックのために遅くなっていた人。
点検を終えて、部室に鍵をかけていた。


―――大石君だった。


「おおいしく…?」
「…誰だい?」

大石君の顔を見たら、驚きと安心と嬉しさと緊張と、
全てが混じって押し寄せてきて、
さっきまで堪えていたものが出てきてしまった。

「おおい…っ…うぅ〜」
「お、おい。どうしたんだ?」
「あ、あの…ヒック…ふ…ぅっ」
「…落ち着いていってごらん」

そういうと、大石君は150cmちょっとしかない私の身長に合わせて屈んでくれた。

「あの、コレ…」

ポケットから出した、小さな包み。
昨日の夜、3回失敗してやっと出来た完成作。

「…くれるのかい?」
「〜〜〜」

私は首を立てに大きく2回振った。
とても声なんて出せる状態じゃなかったから。
きっと、私今すごい顔だろうなぁ…。

「…ありがとう」

このとき、今日始めて大石君の顔を身近で見た。
といっても、涙で霞んじゃって表情まではよく見えなかったけど、
でも、いつものあの優しい笑顔だった気がした。
…なんて、和んでる場合じゃないわ!
今、ここではっきりと言わないと!

「大石君!」
「ん?」
「えとっ、ヒック…あの、おたんじょっック…ぅび、おめで…う〜」

だ、だめだぁ;声が詰まっちゃって上手く喋れないよぅ〜;

「誕生日、知っててくれたんだな。ありがとう」
「そえで、…ぅぐっ。あぁあのねっ私…ヒック ずっと…ふぅ〜
 おおいしくんの…コトっ!…ぅっく。…うぐぅ〜〜あぁ〜ん」

…ヤバイ。ホント喋れないよ、胸が一杯で。
一言“スキ”って言っちゃえば終わりなのに。
そのたった2文字が出てこない。

「うぇ〜〜〜〜」
「…ありがとう」

そういうと、大石君は私の頭にポンと手を乗せて、
ハンカチを渡してくれた。
…やさし。
私は、首を縦にブンブン振るしかできなかった。

「えっと、今日一緒に帰ろうか、ちゃん」
「!」


あの時は、本当に本っ当に幸せでした。
同い年の男子に“ちゃん”付けされるなんて変な感じだったけど、
私が小さいからカナ。ま、いっか!
名前で呼んでくれるなんて嬉しい…ってあれ?
私大石君に名前教えたっけ?


家につく頃、私はようやく落ち着いてきていた。
大石君は、私の家まで送ってくれた。

「わざわざありがとうございました」
「いや、こちらこそプレゼントありがとう」
「…ハンカチ、洗って返すね」

今、言っちゃおうかな?そうよ!今日しかないんだから。言うしか…。

「…実はさ」
「え?」
「オレも、前からちゃんの事――」


今日は、好きな人の誕生日の他にもう1つ、
とっても大事な記念日になりそうです―――。






















大石の誕生日に向けて、焦って書きました。
一日にて完成。気合です。
菊ドリとか先書いてたんですが。
誕生日ですからね。
こっち優先で先にアップ。

ホント好きさ、フクブッチョ。大好きだぁー!(爆)

…あとがきになってない?(苦笑)
とりあえず、
Happy birthday to you!
I'll give you my only love...
ですかね。(ハズっ!)
…意味がわからない方、
気にしなくていいです。
…意味わかっちゃった方、
突っ込まないで下さい。(汗)
あたしの深層心理です。(え?)

そうそう。お友達いるじゃないですか、ちゃんね。
その時はまたさんが主人公になるわけですが。
あのこを主人公にした話書きたいな〜と。
…予定は未定ですが。


2002/04/30