* プレゼント *












部活が始まる前のこと。

「……おい」
「ん?」

呼ばれて振り返ると、
そこにいたのはこれまたまあ珍しい人で。

いや、存在自体は珍しくも何ともないんだけど。
話し掛けられるのは珍しいかなって。

「…んだよてめえか」
「文句あんのか……」

そう。そこにいたのは、俺と同じ2年レギュラー、海堂薫だった。
人は俺たちを天性のライバルと呼ぶ。
そう、ライバルだ。
俺はあいつの事どうも思ってない。
嫌いだ、あんな奴…。

いつでも喧嘩ばかりでよ。
喧嘩以外の普通の会話なんて記憶にない。
初体面で最初に交わした言葉も既に喧嘩腰だったな。


その海堂が、俺に話し掛ける!?
また喧嘩の予感?
でも、俺は何も恨まれるようなことした憶えはないぞ…。


「………」
「…なんだよ」
「……」

あいつから話し掛けてきたから何かを言い出すのを待ってたけど、
その間が余りに長いので俺のほうが痺れを切らして話し掛けた。
しかし、当の海堂は下を向いて黙り込んでいる。

「おい、なんだてめぇ。喧嘩売ってんのか!?」


言っちまった。
またこのパターン。

『てめぇに売る喧嘩なんてねえよ』
『あぁん?じゃあ何の用だよ』
『なんでもねぇよ…』
『じゃあ話し掛けんなよな』
『うっせー、やんのか!?』
『おう、やったろーじゃねーの』

という流れで。
いつもそうだった。でも…。

「……」
「あ、おい海堂」
「うるせぇ…」

海堂は、何も言わず背を向けて歩いていってしまった。
思わず声を掛けたけど、言い返す声も元気がない。
どうしたんだ?あいつ……。


海堂はおかしかったのは、その時だけではなかった。
部活中も何度か、話し掛けようと試みては
口を開いただけで何も言わず行ってしまう。

なんなんだ、あいつは…。


そんなことが5回近く続いた。
とうとう俺は頭にきて、部活終了と同時に海堂に突っかかった。

「おい、海堂!」
「……」
「お前今日なんなんだよ、言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
「…なんでもねぇよ」

いくら言っても、海堂は視線を横に泳がすだけだった。

「…けっ。勝手にしろ」

なんだよ。あいつは…。
俺もとうとう相手にする気がなくなって、
さっさと部室へ行くと、帰る準備をした。


わけわかんねぇよ、あいつの態度。
明らかにいつもと違うのに、なんでもないとか言い出しやがって。

……なんで俺がこんなにイラついてるんだ?



部室から出ると、海堂は部室のドアの横に立っていた。
俺は一瞬それを横目に見やると、さっさと通り過ぎようとした。
そうしたら、また声を掛けられた。

「…桃城」
「ぁん?」

また同じパターンかと思い、俺は半ば怒ったような視線を向けた。
そしたら驚いたことに、海堂の口からはこんなセリフが出た。


『オタンジョウビオメデトウゴザイマス』



「………へ?」

俺は思わず間抜けな声を出した。
かなり、不意をつかれた感じがした。


海堂が、俺に???


固まっていると、海堂は顔を赤くしてそそくさと部室へ入っていった。


「あっ…そういえば……」

俺は、今年の5月の事を思い出した。






――2ヶ月前


『おい海堂、お前今日誕生日なんだってな』
『…だからどうした』
『いや、お祝いの言葉の一つでも掛けてやろうと思ってね。…おめっとさん』
『……貴様には関係ない』
『可愛くねぇ〜』





そんな他愛もない会話だったけれど。
ああ…いろいろ思い出してきたぞ。
その後、こんなことを話したんだった。







『…てめぇは?』
『は?何が?』

『貴様の誕生日はいつかって訊いてんだよ!』

『俺?俺は…7月23日だけど、…それがなんだよ』
『いや、なんでもねぇ…』





…そうか。
そういえばそんなことあったな。

もしかして…それを覚えててくれて…?


「…ぷっ」
「何笑ってんスか?桃先輩」
「いや、なんでもねぇよ、帰ろうぜ」
「……痛いっス」


俺は思わず吹き出した。
海堂の意外な…というか、可愛い一面を見れた気がして。

朝の不機嫌さはどこへやら、
妙に上機嫌になって部室から出てきた越前の背中をバシバシ叩いた。



量より質?

質より気持ち?


今年の誕生日プレゼントは、
なかなか面白かったぜ。

来年は…どうなるだろな?


「さぁ〜帰るぞ〜!」
「だからなんでそんな上機嫌なんスか?」






















えと、桃海小説…デス。
あれ?海桃?海桃…?
桃海ですよね!!桃海だぁ〜!!(何)
何しろあれですからね。
“ケンカするほど両想い、仲が良いほど擦れ違い!”(ぇ?

嗚呼…桃海好きだ。
ちょっとエセくさいけどな。(苦笑)
薫さんが必要以上に乙女になっちゃって自分もびっくら。
…いいんだ!薫は乙女なんだ!(突然キレ)

ビバ桃海。
桃さん誕生日記念。


2002/07/23