* 預かり物 *












「ね〜!さっき大石に聞いたけど引っ越しってマジ!?」
「あっ、英二!……ほんとだけど」

休み時間廊下を歩いてるあたしに、英二がどこからか走って来た。
その英二は、マジかよ〜というと、額に手を当てて悲しそうな顔した。

「それっていつ?いつ出発??」
「来週の金曜…」
「ゲッ!それってもうすぐじゃん!!」

相変らずテンション高いな、英二は。
そういう自分は最近静かかも。

っていうか昨日から。


シュウに引っ越すってこと伝えた時から…。


こんなあたし、らしくないね。
せめて英二の前くらい、明るく振舞おう。
いつでもあたしたち、大騒ぎしたね。
そんな間柄だったから…。

「そうなんだよね〜。もうほんとみんなと別れんの淋しいよ〜!」
「んにゃ〜オレも淋し〜!!」

ほら、できるじゃん。
今まで通り振舞うくらい。
それが、空元気だったとしても。

がいない学校生活なんて考えらんないよ!」
「そんなこと言ったってあたしにはどうにもできましぇ〜ん」
「ぐ〜…」


英二は気付いてないかも知んないけど、
おちゃらけた喋り方だってね、いつもとは違うんだよ。


いつもは、それが素だった。
話すと、自然とそうなった。


今日はね、作ってるんだよ。
自分を誤魔化す為に。

淋しさを押し込める為に。


そんなこと、気付かれたくなんてないけど。


いなくなると淋しいよ〜」
「あたしもだ〜。でも一生会えないわけじゃないし?」


そうそう。今生の別れじゃないんだよ。
なんて、人に言ってる振りして自分に言い聞かせてみる。


「じゃさ、いつ帰ってくるの?」
「はっきりとはしてないけど…3年後ぐらい?」
「げっ!そんな!?」
「一時帰国とかは来るけど〜…」

英二の表情がクルクルと変わる。
自然と固まってくるあたし。
いけない、いけない。

「ま、帰ってきたら会おうよ」
「絶対だよ!」
「さぁ〜ねぇ〜」
「にゃ〜!!絶対だよ〜」

必死な表情をする英二。
いつも通り茶化してみる。

英二は、おもしろいな。
友達になれてよかったよ、ほんとに。
男子の中では、二番目に仲良かったかな?
一番目はシュウだけどさ。そりゃね。

「ん〜…オレのこと忘れないでよ〜」
「うん。忘れないって」
「絶対ぜっったいだよ!」
「約束するって」

あたしはそういったけど、英二はどうも納得いかないみたい。
なんかいろいろ考えてる。
あ〜でもないこ〜でもないとか呟いてる。なんのこっちゃ。

「あっ!そうだ!!」
「何考えてたの?」
「あのさ、さっきの約束の事だけどさ」

約束?ああ。

「絶対忘れないでってこと?」
「ん〜それもそうだけどさ、帰ってきたらまた会おうってこと!!」
「ああ…うん」

何やら英二はポケットからテニスボール一個とマジックペンを取り出した。
どこからそんなものが…。
それで、ボールに何かを書きだした。

「キュキュっとね…これでよし!」
「何、これ…」

半ば無理矢理にそのボールを渡された。
豪快な字で、『絶対忘れんな! 菊丸英二』と書いてあった。

「これ、くれるの?これ見て思い出せってか?」
「ちょっと待って、よく聞いてね〜
 へへん。これはオレのナイスアイディアのたまものなのだ!!」

なんだよそれは。
と突っ込もうと思ったけど、素直に話を聞くことしにした。

「それね、貸してあげる。あげるんじゃないよ、貸してあげる」
「この…ボールを?」
「そゆこと!」

どういうことだ?
意図が読めない…。

「それをね、貸してあげるから、また日本に帰ってきたらオレに返してよ!」
「え…でも帰ってくるのいつになるか…」
「だ〜か〜ら!それを貸すんじゃん。が返しに来る、
 そうしたら絶対会える、でしょ?」

そうか。そういう事か…。
英二にしてはいい考えかも…なんて失礼だよね。
こういう不思議な思いつき、英二は得意だもんね。

「いいか!絶対返しに来いよ!」
「ん。わかった。んじゃ、お借りします」
「たまには…それ見て思い出してね」
「わかった。約束する」

そういうと、英二は嬉しそうな顔をした。

そうだね。
別れるのは淋しいけど、また会えるじゃん。
忘れずにいれば、いつかきっと……。


いつになるかわからないけど、
それまで待っててくれるなら。


今とは変わっちゃってるかもしれないけど、
それでも待っててくれるなら。





また、いつか……。






















ぷひゃ〜。
続編っス。
思ったより長くなってしまった;;
大×主←菊ってだめ?アウト;?
とりあえずそんな流れで;


2002/07/20