* 宣戦布告 *












『バキッ!バコッ!!』
「うわあ…」

後輩、それも入ってきたばかりの一年に試合で負けた。
それは今までにない屈辱だった。
海堂薫は、自分の不甲斐無さになんども膝をラケットを叩く。
その一部始終を、皆は肩を竦めて見守る。
その海堂が、血の滴る足を引きずりヨロヨロから出る。
そこにいたのは、次の対戦で当たる、同じブロックの先輩、乾だった。
海堂は、宣戦布告とも言うべき台詞を通り過ぎ際に言った。

「レギュラーの座は…諦めねぇ…! 絶対に…!」
「…………」

海堂の意気込みは相当だった。
それは言われた張本人、乾も分かっている。
でも、自分も負けるわけにはいかない…。
ふっと溜め息を落とす。
強いものが残る、そういう摂理なのだから。
それは元々承知の事。
そっと足元に視線を落とす。
そこには海堂の流した血液が垂れていた。

(そういえば、あいつ…)

海堂の足の事を思い出し、乾は後ろを振り向いた。
が、既に海堂の姿は見えなかった。

(………)

乾は少し考えて、歩き出そうとした。

「乾?」
「ちょっと、行ってくる」
「……ああ」

横に居た大石を軽く促し、乾は海堂が向かったであろう保健室へ足を早めた。


乾が保健室に着くと、海堂は電気も点けずに椅子に座っていた。
乾は電気を点け、海堂に近付く。

「かいど…」

しかし、海堂の傍まできて、海堂が震えているのに気付き息を呑んだ。

「………」

悔しさからだろう。
拳は両手ともぎゅっと握り、床の一点を見つめていた。
そんな海堂に、乾は1つ溜め息をつき話し掛けた。

「とりあえず消毒をしよう」



  **



そのまま乾は、海堂の手当てを軽くこなした。

「先輩…上手いんスね」
「ああ。こういうの得意なんだ」
「「………」」

2人の間に一瞬沈黙が走る。
先に口を開いたのは海堂。

「乾先輩…何で今わざわざ来てくれたんスか」
「それは、可愛い後輩を放って置けないだろう」

乾が半分冗談っぽく言うので、海堂は少し頭に来たようで強く言った。

「真面目に答えてくださいよ」
「いや、ごめんごめん。…まあ、さっきの言葉もウソではないけど」
「……」
「悔しいのもわかるが、あんまり無茶はするなよ。
 ひどければテニスが出来なくなるかもわからないんだぞ」
「……スンマセン」

今度は乾が真面目に言うと、海堂は素直に折れた。
そんな海堂を見て、乾はふっと笑った。

「それに、こっちも次の対戦は楽しみにしているんでね」
「―――」

海堂は、下に向けていた顔を上に上げた。
乾はニッと笑った。

「でも、レギュラーの座は渡さないよ」
「…上等っスよ。こっちだって負けませんから」

お互いに宣戦布告をし、そして、微かに笑い合った。
保健室での、一角での話…。
























またもやランキング戦の隠された部分を
勝手に妄想してみた。(何)
乾海っスよ〜。うん。
最終的に海堂がかつってのがなんとも。(爆死)

薫ちゃんのあれ、痛そうだったよねぇ…。
バキィ!ってやつ。アイタタ…。
…叩いて血って出るもんなんだね。(こら)
先に骨が行かれちまいそうですぜぃ。


2002/06/24〜2002/06/25